Tech Team Journal(TTJ)での連載を続けていると自分の中のノウハウが枯渇してきて、脳がカッサカサになっている染谷です。ジューシーな缶チューハイで、カッサカサになった灰色の脳細胞を潤すのも仕方がないことですよね。

「脳を潤す→記事としてアウトプットする→実質アルコール度数0%」というサスティナブルなサイクルが回るので、無限に飲んでも大丈夫なはずなのですが、このままのテンションで文章を書いているとTTJから追放されそうな気がしてきたので、もっと有益な脳の潤し方を紹介します。

それは「新しい知識」のインプットです、知の潤いですね(キリッ

インプットの方法はセミナーに参加するでも、有識者に意見を聞くでもいいのですが、やっぱり一番コストパフォーマンスがよいのは読書です。

読書で得た知識を自分の中で噛み砕いて、そして誰かに伝えることによって自分の血肉となります。例えば僕の場合は一つのセミナーを開催するにあたって、関連する書籍を3~5冊読むのですが、せっかく読んだのであればスライドだけじゃなくてブログなどで書評としてアウトプットすることもオススメします。

というわけで、今回のテーマは書評です。

そして単なる書評じゃなくて、著者が喜んでくれるような書き方を、現役著者である僕が紹介します。この記事のように書評を書くと著者は大概喜びます。少なくとも僕は狂喜乱舞します。

とはいえ、書評や読書感想文に決まったルールがあるわけでもないので、あくまでも参考意見として取り入れていただいて、自分にあった書き方をぜひ見つけてください。

概念として説明するよりも、サンプルがあった方がわかりやすいと思うので、僕のブログ内で特徴的な3つの書評記事を使って解説します。

自分の考えメイン型

まず一つ目が本の内容というよりも、本を読んで得た自分の考えを前面に押し出すスタイルです。

【参考記事】行動させる気にさせる書籍こそ良書!ミニサイト職人を目指して、既存サイトのリニューアル作業をしました

TTJでも寄稿されている和田さんの著書です。

この記事では書籍の内容にはほとんど触れていません。その代わり、僕の考えるよい本の特徴(行動に移したくなる)を述べ、書籍の教えをベースに自分のサイトをメンテナンスしたという流れにしています。

最後に想定読者層を述べて、購入してもらうように促しています。

あらすじ解説メイン型

二つ目が書籍の内容をガッツリ紹介するスタイルです。

ガッツリ紹介すると言っても、本文を大量にそのまま載せたら著作権の侵害になりますので、必要な部分だけ「引用」してブログに掲載していきます。

【参考記事】天才と凡人を分ける要素

この書評記事では書籍の内容に沿った形で内容を解説しています。

あらすじ(引用)→自分の意見→あらすじ(引用)→自分の意見

と繰り返していく流れで、最後に「もっとたくさんの情報詰まっているので、手に取ってみては?」と紹介しています。

引用のルールについてはこちらの記事にてわかりやすく解説されています。素敵なライターさんですね!

バランス型

三つ目はバランスの名の通り、あらすじも自分の考えも載せていくスタイルです。

【参考記事】オズの魔法使いから読み解く、自分探しの旅と人間の認識能力

オズの魔法使いは有名なお話なので、そこまであらすじに文字数を使っていませんが、物語の世界と現実社会の共通点をメインに記事化しています。

なお、毎年8月30日~31日にかけて一番読まれる記事です(夏休みの宿題)。

読書感想文の課題図書になりそうな書籍の感想を書いておくことで、毎年同じタイミングでアクセス数を伸ばすことも可能です。夏目漱石とか太宰治とかいいんじゃないですかね。

本題

書評には多くのメリットがあって、著者の目に留まることによってあなたの記事を拡散してくれるだけでなく、御礼のメッセージをもらえることもあります。

そのためには著者が喜んでくれる内容を書くことが大切ですが、べた褒めだとサクラっぽくなってしまいます。

というわけで、ここからは著者が喜ぶ書評の書き方について解説します。なお、調査サンプル数は1(僕)です。

著者が喜ぶこと

とにかく前向きな感想、これに尽きます。そして読んでくれた後に、行動意欲が高まり、実践に移してくれているような描写があるとなお喜びます。結局人間はチョロいです。

おぬしやるな!と思う感想

「ここをもう少し深掘りして解説して欲しかった」、「著者の考えも理解できるが、自分の考えはこうだ」という感想は著者としても参考になります。

べた褒めにならないコツってここにあって、100%同意なことって人間なのであるわけないんですよ。自分の意見を述べてくれることで、次回作のフィードバックにもなります。

あと、著者って文面の端々にこだわりポイントを仕込んでいる場合があるんですね。私にとっても、そこに気付いてくれたときは「よく気付いた!」と心の中で思っています。

【参考記事】今更ながら「ブログ飯」で使ってるライティングテクニックを解説するよ

僕は時折、種明かしをするのですが、種明かし前に気付いて、仮説でもいいので書評に加えてもらうと印象に残ります。

あとあと、誤字脱字の指摘はありがたいです。これはホントすみません。

避けた方がいいこと

好意的な意見は好きに書けばいいと思うのですが、気づかずに著者の気分を害することを書いてしまっている場合がありますので、注意しましょう。

実際のところ書籍の内容に同意できない比率が51%以上であれば、そもそも書評なんて書いて公開しないのが一番です。

公開したって誰も得しないんですよ。批評家になりたいのであれば話は別ですが、別にそういうわけではないですよね。「自分には合わなかった」と思って、次の本を読む方が生産的です。

それを踏まえた上で、避けたほうがよいポイントを解説します。

べた褒め

さっきも書きましたが、べた褒めされるとなんかむず痒いんですよ。褒められるのは嬉しいのですが、褒められすぎると違和感を持つ面倒くさい人種(サンプル数1)です。

中古で買ったとか言わない

正直に書きたい気持ちはわかりますが、入手ルートまで書く必要はありません。

ケチくさい話ですが中古は印税につながらないので、微妙な気持ちになります。読んでくれて、書評まで書いてくれて感謝カンゲキ雨嵐なわけですから、わざわざ中古と書いて微妙な気持ちにさせる必要はありません。

あと「読んだらメルカリで売れる」とかもわざわざ書かなくていいですよ。

著者の名前、書籍のタイトルを間違わない

これは記事を書き終えたあとに必ずチェックしましょう。

僕の場合、染谷晶利と書かれることがよくあります。僕はネタとしておいしく料理するので構わないのですが、すごく気にする人もいるので注意しましょう。

内容や目次の羅列だけ

本文8割、感想2割、場合によってはほぼ目次だけというブログもあります。それだと(僕は気にしないですが)著作権侵害の恐れもありますし、そもそも書評じゃないので控えましょう。

内容はいいけど電子版読みづらいので☆2←つらい

さらに余談ですが電子書籍の形態は著者側でなんともできないので、内容はいいけどKindle読みづらいから☆2とか言われると結構凹みます、はい。

出版社様、何卒宜しくお願い申し上げます。

それでも書評は嬉しい

つらつらと面倒なことを書きましたが、そうは言っても作品を読んでくれただけで嬉しいものです。

余談です!!

ここから先は完全なる余談なので、これまでの文章に物足りなさを感じている人だけ読んでもらえば大丈夫です。

書籍の概念を現実世界に照らし合わせる

書籍にはいろいろなジャンルがありますが、本って基本的には抽象概念なんですよ。なにかしらの成功事例からエッセンスを抽出して200ページ程度にまとめていくわけです。すっげぇ小さい文字で700ページ建てでお値段1万円とかいう、読む前から心が折れる類の書物もありますが(褒めてる)。

自我の源泉

ちなみに僕が書籍のジャンルを、抽象的/具体的バランスを踏まえて区分けしたイメージは以下のようになります。

スピリチュアル系/精神世界(引き寄せの法則とか)
|
哲学書(アリストテレスの類とか)
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成功哲学・自己啓発書(『ナポレオン・ヒル』とか)
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歴史書(『興亡の世界史』とか)
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ビジネス書・一般書(『影響力の武器』とか)
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実用書・技術書(『できる Excel』とか)

上の方が抽象度が高くて、下の方が具体度が高いという並びです。どちらが優れているという比較ではなくて、位置付けのお話です。

なお現実社会は実用書よりもさらに下の位置付けです。現実社会は起こることすべてが個別具体的ですからね。ちなみに文学は基本的にフィクションであり、そもそもあまり僕が読まないのでこの表からは外れています。

で、この一覧から何が言いたいかというと、抽象度が高い類の書籍ほど、現実社会に照らし合わせるのが大変だということです。はっきり言って、アリストテレスなんか読んでも普通の生活にほとんど役立たないんですよ。でも、自分の中で具体事例と組み合わせることで、理解度が大きく変わってきます。

『影響力の武器』とか、『ファスト&スロー』とか、『神話の法則』とかでさえ抽象度は高めです。ですから、本を読んだだけではぼんやりとした理解しかできていないはずなんです(僕の読解力が弱いという可能性も否定できませんが)。
ただ、『影響力の武器』や『ファスト&スロー』を読んだ上で、現実社会のオンラインショップの販売ページを比較してみると、抽象的だった表現が具体的事例として理解できるようになります。例えばライザップのランディングページは、影響力の武器に照らし合わせるといろいろと気づく点が多いです。

『神話の法則』なんて『ハリーポッター』や『マトリックス』の大作映画はもちろん、アニメーション作品の『君の名は』や『ドラえもん』でも使われてるんですよ。
このように原理や抽象概念を知った上で、具体的事象をつぶさに見ると「あれっ?」と思う頻度が増えることに気付くはずです。自分の目や知識の解像度が上がると、今まで見過ごしていた現象が見えてくるんです。

おかげさまで、映画が素直に楽しめない体質になる、という副作用が出てしまいましたが。

理解できない文章を読む訓練をする必要性

僕はさっき挙げた一覧の類の書籍(スピから技術書まで)はひと通り読むようにしています。

抽象度が高い本や難易度が高い本を意識的に読むことによって、具体的な本や平易な言葉で書かれている本の見え方が変わってくるんです。さっき「解像度」のことに触れましたが、自分よりも1段階レベルが高い(と感じる)本を読むことで、それまで読んでいた本に書かれている内容がより深く理解できるようになります。

これって自分と同じレベルの、読みやすい本ばかり読んでいても気付かないんです。

そもそも哲学書は日本語なのに書いてあることがほとんど理解できない類の書物なのですが、それをできるだけ理解しようとがんばって読むことで自分の読解レベルが上がります。その後にビジネス本とか実用書を読むと、あら不思議、こんなこと書いてあったっけ?という印象を受けるはずです。自分の解像度が上がったから起きる現象ですね。

個人的にこの難易度を上下させる読み方はかなりオススメです。

これは僕の偏見ですが、30分程度で読めてしまう本は、30分程度の人生しか変わらないと思っています。何ヶ月も、何年も読み続けられる書籍が、その人の人生に多大な影響を与えられるんだろうなと噛み締めながら原稿を書き続ける日々です。

(文:染谷 昌利

presented by paiza

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