12年後の原発ごみ 農業系指定廃棄物の暫定集約へ那須町で工事中

小野智美
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 2011年の東日本大震災から12年余。東京電力福島第一原発事故で県内には1万3533トンの指定廃棄物が発生した。このうち農家が保管していた2993トン分の現状をまとめた。

 指定廃棄物は放射能濃度が1キロあたり8千ベクレルを超える原発ごみ。環境省によると、県内では15年6月末時点で1万3533トンに達した。内訳は焼却灰(2447トン)▽浄水発生土(728トン)▽下水汚泥(2200トン)▽農林業系副産物(8137トン)▽その他(21トン)。

 最も多い農林業系のうち稲わらなど2993トンは、農家123人が保管した。自治体別では那須町(53人)、那須塩原市(53人)、大田原市(9人)、矢板市(6人)、那珂川町(1人)、日光市(1人)だった。特に多かったのは、那須町の53農家分1680トン、那須塩原市の53農家分1216トン。

 那須町は22年3月、農家分の暫定集約先に民有地を選んだ。現在、環境省が工事中で、発注済みの整備費は約5億7千万円。全体整備費はさらに膨らむ。来年度中の整備をめざす。53農家分1680トンのうち、19年の再測定で8千ベクレル超だった272トンは、全面コンクリートのボックス式倉庫6棟(床面積は1棟396平方メートル)を建設し、保管する。ポリエステル製の屋根で覆うテント式倉庫も建設し、再測定で8千ベクレル以下の1408トンを保管する。

 那須塩原市は、暫定集約先に原発ごみの焼却灰を保管中の市営クリーンセンターを選び、21年10月に農家から搬出を始め、今年3月までに終えた。再測定で8千ベクレル以下の954トンは指定を解除し、一般ごみと混ぜて焼却した。焼却後は市営最終処分場へ。市は焼却で生じた飛灰の放射能濃度を定期的に測り、測定値は最高で7430ベクレルだった。収集運搬に約2億円、焼却に約3700万円かかった。

 大田原市の暫定集約先は原発ごみの下水汚泥を保管中の市内の県営下水処理場で、先月6日、9農家分の搬出を始めた。環境省は来年1月10日の終了を見込む。矢板市の6農家分と那珂川町の1農家分の暫定集約先はまだ決まっていない。

 日光市の1農家分は22年9月、原発ごみの焼却灰を保管中の市営クリーンセンターに搬入された。(小野智美)

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