永く続くものこそ、おいしくて楽しい──連載「なくせ! フード・ロス、フード・ウェイスト!」第3回

各国でフードロスが深刻化している。空腹を抱える人がいる一方で、世界で生産される食糧のおよそ3分の1が廃棄されているのが現実だ。2019年からキッチンカーを通じて、サステイナブルなフードライフについて発信しているモデルの森星さんにインタビューした。

【はじめに】

フード・ロス(food loss)/フード・ウェイスト(food waste)とは、食べることができるのに廃棄されてしまう食品、あるいは食品化される過程で発生する廃棄物や食品化後に発生する売れ残りや食べ残しなどによって廃棄される食品のことを指すことばです。どんな理由によるにせよ、可食部分を「ロス」や「ウェイスト」にすることなく、できるだけそれを減らす/なくす、という取り組みは、持続可能な社会を目指す私たちにとって、ますます重要な課題になっています。こうした問題意識のもとに、この連載では、わが国での、このためのいろいろな取り組みを取材し、紹介していきます。


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農業従事者たちの高齢化

──森星さんがキッチンカーをはじめたきっかけをおしえてください

「2019年7月から、”発酵人”として活動する田上彩さんと一緒にはじめました。はじめたきっかけは「美」というものの追求でした。

わたしは、ファッションモデルとして常に新しいものを世の中に発信し、自分自身でもたくさんのモノに囲まれて生活してきました。毎日が目まぐるしくスピーディに過ぎていき、仕事を通じて知ったものについて、そうしたものがどんな背景で生まれたのか、そして、どうやって役目を終えていくのかについて、自分自身のきちんとした理解が及ばないままでいました。

でも、モデルとして活動してさまざまな人に出会い、いろいろな考えにふれる中で、モデルという仕事も好きだし、モデルとしての美しさをもっと掘り下げていきたいと考えるようになり、そのためには、自分の暮らしときちんと向き合う必要があると思ったのです。ちょうどその頃にパーマカルチャーデザイナーの方と出会いました。

彼は家族と自給自足の生活をして、持続可能なライフスタイルを発信しています。循環ということについて、そのかたちを学び、わたしなりにできることがないかなと考え、それから自宅でコンポスト(生ゴミなどの有機物を微生物の働きを活用して発酵・分解し、堆肥にかえる容器)を使ったり、アクアポニックス(水耕栽培と魚の養殖をかけ合わせたシステム)による有機栽培に取り組んだりしながら、徐々に理解を深めていっています。

そんな中で、発酵食品の可能性や魅力を知り、持続可能な社会の実現に向けてキッチンカーでポップに発信していければ、と思ってスタートしました」

──キッチンカー「edain」はどんな活動をしていますか?

「コンセプトはファーム・トゥ・テーブルです。農家さんの思いをみなさんに伝えるというスタンスで、国際女性デーに開催している「ミモザフェスタ」など、自分たちが共感できるイベントに出店してきました。メニュー開発はもちろん、仕入れや仕込み、調理もすべて自分たちでやっています。シグネチャーディッシュなどはなく、市場で余った食材を活用しています。たとえば、収穫量が過剰に増え、食べられるのに廃棄されるものや、出荷先がなくなってしまった食材など、です。田上彩さんとの活動を通じて、日本国内の農業従事者のみなさんが高齢化していることも実感しました。いまや70歳以上の方が全体の8割を占めており、そういったことについても考えさせられます。この活動を通じて、いまのわたしは生きるためのモチベーションを得ている、といっても過言ではないです。楽しみながらやっていることがちょっとずつ広がっている感じですね」

後編に続く

聞き手の山田早輝子(左)、森星(右)

【聞き手】
山田早輝子(やまだ・さきこ)
フードロスバンク代表

聖心女子大学卒業後、住友商事に入社。退社後、アメリカ、イギリス、シンガポールで18年過ごす。ミールズオンウィールズ(食支援活動協会)の最年少取締役、南カリフォルニア日米協会最年少取締役を務める。その後、国際ガストロノミー学会より日本ガストロノミー学会の設立代表に任命される。2020年にフードロスバンクを発足。https://www.foodlossbank.com

FOOD LOSS BANKとは

FOOD LOSS BANK は、今まで繋がらなかった人同士、または規格外品を海外企業含め繋げることにより食品ロス削減から始まる環境改善を目指し「循環性があり」「多様性を尊重し」「持続可能である事」を軸に活動をする。サーキュラーチェインの中で誰も取り残される事なく、人や食物、生物、物の見方の多様性を活かしながら、社会課題の解決と同時に地球を支える企業も経済成長できるスキーム、また個々も1人の力を信じて参加できるモデルを目指す。

聞き手・山田早輝子 写真・SASU TEI スタイリング・仙波レナ ヘア・KENSHIN メイク・Kie Kiyohara まとめ・岩田桂視(GQ)