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気持ちのいいコンパクトカーを求めるなら──新型日産ノート試乗記

フルモデルチェンジした日産のコンパクトカー「ノート」に小川フミオが試乗した。進化したシリーズハイブリッド・システム「e-POWER」の印象は?
NISSAN 日産自動車ノート NOTE ePOWER シリーズハイブリッド HV 電気自動車 EV
Hiromitsu Yasui

スムーズな加速感

“コンパクトカーの常識を超えるコンパクトカー”と、うたうのが日産の新型ノートだ。「ちいさなクルマに興味はない」なんていう層にも、いちど体験してもらいたい、あたらしい乗り味を持っているクルマだった。

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ノートは、日産自動車が「e-POWER(イーパワー)」と名づけたシリーズハイブリッド・システムを搭載する。前輪を駆動するのは電気モーターで、そのモーターのための駆動用バッテリーは、1.2リッターガソリンエンジンによって充電される。

今回ようやく公道で乗れたのは、2020年12月23日に販売開始された前輪駆動の「ノートX」。X(エックス)は3つあるグレードのうち最上級車種に位置づけられている。

【主要諸元(X・2WD)】全長×全幅×全高=4045×1695×1520mm、ホイールベース2580mm、車両重量1220kg、乗車定員5名、発電用エンジン1198cc直列4気筒ガソリン(82ps/000rpm、103Nm/4800rpm)、駆動用モーター85kW/280Nm、電気式無段変速機、駆動方式FWD、タイヤサイズ185/60R16、価格218万6800円(OP含まず)。

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16インチアルミホイールはLEDヘッドランプなどとのセットオプション(33万5500円)。

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“爽快な走り”と、日産がうたうとおり、新型ノートはほんとうに力強く走る。先代ノートのe-POWERシステムに対し、新型は、モーターとインバーターを刷新していて、トルクが10%、出力は6%向上したという。

ドライブすると、先代とはあきらかに違う印象を受けた。それどころか、アウディ「e-tron」やポルシェ「タイカン」などといった海外のパワフルなピュアEV(電気自動車)を彷彿とするほど、スムーズな加速感が持ち味だ。価格は10分の1なのに。

9インチのワイドディスプレイを採用したインフォテインメントシステムはパッケージオプション。通常はオーディオレスになる。

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本革シートはパッケージオプション(33万5500円)。前席シートヒーターは「ホットプラスパッケージ」(7万3700円)に含まれる。

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リアシートのアームレストは、パッケージオプション(33万5500円)に含まれる。

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通常時のラゲッジルームには550mm×400mm×250mmサイズのスーツケースが4個積める。

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リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。

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トノカバーは2万4200円のディーラーオプション。

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上質さの追求

私が思うに、現時点で好燃費のクルマを買おうと思ったら、e-POWERを搭載するノートが、もっとも現実的な選択なように思う。最大の理由は充電の心配がないからだ。燃費はリッター28.4km/L(現実的な数値がでるWLTC)だから、充分ではないだろうか。くわえて、上記のとおり、力強いドライブフィールを持っている。

原子力や火力、それに最近では海の生物におおきな騒音被害をもたらしているともいわれる水上風力発電など、電源にはいろいろ悩ましい問題があるだけに、ピュアEVに二の足を踏んでいるひとなら、ノートは現実的な選択肢といってもいい。

SPORT、ECO、NORMALの3種類のドライブモードを設定。SPORTモードでは、より加速感を高めたという。また、SPORTとECOの両モードにクリープの機能を設け、駐車時などの速度調整をしやすくしたとのこと。

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フロントに搭載する発電用エンジンは1198cc直列4気筒ガソリン(82ps/000rpm、103Nm/4800rpm)。

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フロントに発電用の4気筒エンジンを搭載しているとはいえ、エンジンじたいはかなりコンパクトで、エンジンルームを開けてみると、“スカスカ”だからびっくりする。1960年代のクルマが、エアコンとか排ガス浄化装置とかがなくて、同じような作りだったのを思い出したほど。

ハンドリングはエンジンの重さを感じさせない。操舵に対してきもちよくボディが反応する動きには、日産の開発陣はかなりこだわったという。その狙いどおりの出来のよさであると思う。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に280Nmの最大トルクを出す設定のモーターだから、きびきび感はたっぷり味わえる。

駆動用モーターは85kW/280Nm。

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7インチのカラーディスプレイ付きのメーター。

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カラーディスプレイには、発電用エンジンの状況などを表示する。

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おもしろいのは、たんにパワフルさを追究するのでなく、日産の技術陣は、日常的な走行におけるスムーズさにも心を砕いたというのだ。「力強いだけでは扱いにくく上質とはいえません」と、日産の渡邊明規雄チーフビークルエンジニアは語っている。

アクセルペダルを踏みこみ、つぎにゆるめて、また踏み込むなどという場面でも、ギクシャクとボディが動かないような制御が入る。

XのWLTCモード燃費は28.4km/L。

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デジタルカメラの映像をルームミラーに表示する「インテリジェント・ルームミラー」は、44万2200円のパッケージオプションに含まれる。

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スウィッチタイプのパーキングブレーキは全車標準。

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プロパイロットも選べます

新型ノートについて、いろいろ書きたくなったのは、乗っていると、たいへんリラックスできて気持ちよく、すぐ好きになれるクルマだからである。

日常の足として使われることを前提に開発されたそうで、たとえば新型の回転半径は、先代より0.3m小さい4.9mになったそうだ。取り回し性がさらによくなっているのも、私が感心した点である。

本革巻ステアリング・ホイールは33万5500円のパッケージオプションに含まれる。

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オートエアコンは全車標準。

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前席サンバイザーはバニティミラー付き。

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試乗車にはオプションの先進運転支援システム「プロパイロット」が搭載されていた。ステアリング・ホイールのスポーク部のボタンをひと押しすると、先行車追従のクルーズコントロールが作動。くわえて、車線中央をキープするようステアリング操作が支援される。カーブ手前では自動で減速し、ドライバーをサポートする。日産が自信をもっている技術だけあって、たしかに、たいへん使いやすい。

価格はベーシックが「F」(202万9500円)。その上に「S」(205万4800円)と、トップモデル「X」(218万6800円)が設定されている。先述のプロパイロットは、カーナビゲーション・システムなどとセットで44万2200円のエクストラだ。

緊急時のSOSコール用スウィッチはルームミラー近くにある。スウィッチを押すと緊急通報センターに音声接続し、必要に応じて警察・救急に連絡して緊急車両がかけつけるという。

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360°カメラはオプション。

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スマートフォンのワイヤレス充電器もオプション。

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メーター横には大型のカップホルダーを標準装備。

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ノートの価値をどこに置くか? で、この40万円超のオプションのとらえかたが変わる。このパッケージは「X」にしか用意されないのだ。日常的な足グルマだったら、「S」で、十分かもしれない。そういえば2021年2月には、前後輪をモーターで駆動する4WD版も販売がはじまる。選択肢が多くなるのだ。

新型ノートの購入を検討するのであれば、じっくり考えるのを楽しもうではないか。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)