Cars

29歳、フェラーリを買う──Vol.85 新型ポルトフィーノMも良いではないか!

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(29歳)が、ひょんなことから中古のフェラーリを購入した! 勢いで買ってしまったフェラーリのある生活とは? 今回は、新型「ポルトフィーノM」を見て、かつそれに触れたお話。
フェラーリ Ferrari 360モデナ 360modena ボルボC70 VOLVO DS3 カブリオ  オープンカー ポルトフィーノM カリフォルニア ローマ
Hiromitsu Yasui

4人乗りオープンも気になります

1月13日、フェラーリの新型「ポルトフィーノM」の国内発表会が開かれた。Mはmodificata(改良された)を意味する。フロントとリア・エンドがフェイスリフトされ、3.9リッターのV8ターボの最高出力が20ps増しの620psとなった。美しいデザインに新しいエンジンを組み合わせたポルトフィーノMは、間近で見れば見るほどカッコよかったし、エレガントだった。新車のフェラーリをいずれ購入したいと考えているボクとしは、ローマに次いで見逃せないモデルだ。

前話:Vol.84 ローマに乗る

昨年、フェラーリの認定中古車の購入を検討したとき、候補になったのは2015年型の「カリフォルニアT」だった。少し青みの入ったシルバーのボディカラー「グリジオ・アロイ」がシックだった。

かつて購入を検討した認定中古車、2015年型の「カリフォルニアT」。走行距離は約1万4000kmで、価格は1898万円だった。

各所にレッドのレザーを使ったインテリアは魅力的だった。

価格は“アンダー2000万円”の1898万円で、走行距離は約1万4000kmだった。悩んだものの、ボディカラーが希望のイエロー系ではなかったことにくわえ、「フェラーリ・クラシケ」の取得を勧められていたので見送った。

とはいえ、せっかくの縁だっただけに、その後も4人乗りのフェラーリのオープン・モデルが気になっていた。今、いちばん欲しいフェラーリは「ローマ」であるものの、価格や納期を考えると現実的なのはカリフォリルアTやポルトフィーノの認定中古車だ。
Vol.83 2020年を振り返る
Vol.82 人生初のツーリングに参加

筆者が購入した360モデナは2000年製。

Hiromitsu Yasui

現在、ミドシップ・レイアウトの360モデナを所有するので、多くの読者は「458」や「488」が気になるのでは? と、思うかもしれない。もちろん、これら新世代ミドシップ・フェラーリも気にならないわけではない。が、かつて3台のオープン・カーを所有したボクは、久しぶりにあの爽快感を味わいたいなぁ〜と、思ったのだ。

オープンカー遍歴

はじめて買ったオープン・カーは2代目「スマート・フォーツー」のカブリオだった。「オープン・カーに乗ってみたい!」という気持ちが強くなり、勢いで中古車を購入した。

コンパクトなボディは街乗りに最適だった。ただし、電動開閉式ソフトトップを開けただけでは、爽快感はイマイチだった。ルーフフレームを取り外し、フルオープンにすれば、それなりに気持ちよかったものの、開けるたびに脱着するのは面倒だった。「気軽にフルオープンを楽しめるクルマが欲しいなぁ〜」と、思うようになったのだ。
Vol.81 あるべき“穴”がない!
Vol.80 クラシケ取得費用に納得
Vol.79 スーパーカーとソーシャルメデ

初めて買ったオープンカーは「スマート・フォーツー」のカブリオだった。

そこで、次に中古のボルボ「C70」を買った。フルオープンになるし、3分割の電動格納式ルーフは金属製だから耐候性もバッチリ。流麗なデザインも素敵だった。おなじ電動格納式ハードトップを持つフォルクスワーゲン「イオス」やプジョー「308CC」も考えたが、デザインが気に入っていたのでC70を選んだ。

購入してからは雨さえ降っていなければ、1年中、屋根をあけて乗った。ワンタッチでフルオープンにできるので、スマートのときの不満は解消された。

アイボリーのレザーシートと明るいウッドパネルによる、温かみのあるインテリアも大好きで、ほかに欲しいクルマはしばらくあらわれなかった。

フルオープンのクルマが欲しい! と、思い、購入したボルボ「C70」。

明治神宮でのお祓い時。

購入から1年半後、自動車雑誌の編集部に転職した。その直後、フランスのプレミアムブランドである「DS」の試乗会に参加する機会があった。そこで、「DS 3 カブリオ」に興味を持った。

試乗会のときは運転しなかったものの、所有経験のないフランス車、しかもオープン。モデルだから、いったいどんなクルマなのか興味津々。フィアット「500C」などとおなじくルーフレームが残るタイプなので、開放感はC70より劣る。劣るけれども、ドイツ車やスウェーデン車にはない洒落っ気に惹かれた。「いちどくらいフランス車に乗ってみたいなぁ」というあこがれもあったので、C70を下取りに出し、新車のDS 3カブリオに乗り換えた。

初めてのフランス車は、あらゆる部分が新鮮だった。乗り心地、エンジン・フィール、インテリア・デザイン……細かな面では、独特のウインカー音もお気に入りだった。

所有したDS 3カブリオは後期モデル。ホワイトのボディカラーに、パープルの幌という組み合わせだった。

屋根をあけた状態。

けれども、DS 3カブリオはたった半年乗っただけで売却した。理由はMT車が欲しくなったから、だ。あるレーシング・ドライバーに「ガッキーもMT車に乗りなよ!」と、言われた。それまでMT車を所有しようと思ったことなど1度もなかったが、日本を代表するレーシング・ドライバーに言われたのでその気になり、新車のアバルト「500」のMT仕様に乗り換えたのだ。

そのあとはオープンカーとはご無沙汰している。が、「機会があればまた乗りたいなぁ〜」と、最近また考えるようになっていた。そんなタイミングでポルトフィーノMを見たのだ。
Vol.75 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その5
Vol.74 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その4

新エンジンを搭載

電動格納式メタルトップが特徴のポルトフィーノMは、2017年に登場したポルトフィーノの進化版である。もとを辿れば「カリフォルニアT」や「カリフォルニア」に行き着く。

エクステリアは前後バンパー、フロントグリル、マフラー、鍛造アルミホイールのデザインが一新された。とくにフロントまわりはよりスポーティかつシャープになったと思う。

とはいえ、よくよく見なければ違いに気がつかないかもしれない。筆者もパッと見はわからなかった。「新しいポルトフィーノMは納車まで相当の時間がかかるだろうから、見た目がそれほど変わらない認定中古車のポルトフィーノという選択もアリかもしれない……」と、ふと思ったほどだ。

フロントまわりはバンパーやグリルデザインが変わった。

Hiromitsu Yasui

電動格納式のリトラクタブル・ハードトップを持つ。

Hiromitsu Yasui

ルーフの開閉時間は約14秒。

Hiromitsu Yasui

折りたたまれたルーフは、リアに格納される。

Hiromitsu Yasui

ルーフの開閉スウィッチはセンターコンソールにある。

Hiromitsu Yasui

鍛造製アルミホイールのデザインも変更された。

Hiromitsu Yasui

新しいパワートレインは、4人乗りクーペモデルの「ローマ」ゆずりだ。3855ccのV型8気筒ガソリンツインターボで、最高出力は620ps/7500rpm、最大トルクは760Nm/3000〜5750rpmを発揮する。従来のポルトフィーノより最高出力は20ps向上した。
Vol.81 あるべき“穴”がない!

組み合わされるデュアルクラッチタイプのトランスミッションは、従来の7ATから8ATに進化。SF90ストラダーレ用とおなじ8ATであるものの、ポルトフィーノM用はギアリングがより高めだ。

エグゾースト・システムも刷新され、2基あったサイレンサーなどを廃止。よりスポーティな音を楽しめるようになったという。

マフラーは左右2本ずつの計4本出し。

Hiromitsu Yasui

搭載するエンジンは3855ccのV型8気筒ガソリンツインターボで、最高出力は620ps/7500rpm、最大トルクは760Nm/3000〜5750rpmを発揮する。

Hiromitsu Yasui

展示車はエンジンを掛けらなかったので、はたしてどのようなサウンドかはわからない。が、発表会場で流されたムービー内の走行シーンでは、官能的なサウンドを轟かせていた。

走行モードを選べる「マネッティーノ」には、「WET」と「RACE」が新設された。いずれもコンピュータ制御だから、「今までどうしてなかったんだろう?」と、疑問に思ったので、フェラーリ・ジャパンに訊くと「相当細かく各所を制御しなくてはいけないので、簡単には設定出来なかったようです」とのこと。

ちなみに、フェラーリのソフトウェアは内製だ。フェラーリらしいハンドリングを実現するためには、アウトソーシングできないのである。
Vol.78 愛車をイベントに展示しました(後編)
Vol.77 愛車をイベントに展示しました(中編)
Vol.76 愛車をイベントに展示しました(前編)

ステアリング・ホイールは、一部カーボンを使ったオプション品。

Hiromitsu Yasui

走行モードを選ぶ「マネッティーノ」のスウィッチは、ステアリング・ホイールにある。

Hiromitsu Yasui

「365日、あらゆる場面で楽しめるフェラーリです」と、話すのはフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表取締役社長。

Hiromitsu Yasui

運転支援システムの拡充

個人的には運転支援システムの拡充が嬉しい。ハイビームアシストや衝突被害軽減ブレーキ、ブラインドスポットモニター、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、そして360°カメラも選べるようになった。

採用される先進運転支援システムの一覧。

Hiromitsu Yasui

ACCはローマで体験したが、想像以上に便利だった。「フェラーリにACCなんているの?」と、思う人は多いかもしれない。が、あるにこしたことはない。とくに、渋滞時は便利で、疲労が軽減されたように思う。

東名高速道路上りの海老名〜町田の渋滞時にローマでACCを試しときは、ブレーキやアクセル制御が緻密だったことを覚えている。急発進や急ブレーキが頻発するクルマもあるなかで、ローマではそうした振る舞いはまったくなかった。スムーズに発進と減速、そして停止を繰り返しながら渋滞をしのぐことができた。ポルトフィーノMもローマとおなじシステムを搭載するから、スムーズな制御が予想される。

Vol.41 トラブル発生! ドアが開かない!?

さらに嬉しいのは、ACC用のレーダーが目立たない点だ。ローマではフロントバンパー下部にレーダーが装着される。これが、ローマの美しいデザインに若干マッチしない。センターから少しズレているのにくわえ、結構な存在感があるためだ。

ポルトフィーノMでは、フロントグリル内に設置されていて、しかもその位置が奥まっているので、目立たないのが嬉しい。

フロントグリル内に設置されたACC用のレーダー。

Hiromitsu Yasui

ACCの操作スウィッチは、メーター横にある。

Hiromitsu Yasui

360°カメラも、ローマに次いでの装備だ。たとえば、駐車場に入るとき、気になるのは歩道の縁石だ。とくに入口が狭い駐車場では、ホイールを擦ってしまわいないかどうかヒヤヒヤする。そんなとき360°カメラがあれば縁石との境界がわかりやすいので安心だ。

Vol.44 フェラーリでスキーに連れてって!

360°カメラはもとよりバックカメラやパーキングセンサーのない360モデナに普段乗っている身としては、ヒヤリとする場面が多々ある。前述の駐車場入り口などのときだ。後方視界は良くないし、ボディの見切りもそれほどいいとは言えない。だから360°カメラが羨ましい。

展示車は助手席用モニターを搭載するなどオプション品が多数装着されていた。

Hiromitsu Yasui

メーターはアナログのエンジン回転計と、ふたつの液晶パネルを組み合わせている。

Hiromitsu Yasui

上質なレザーをたっぷり使ったインテリアはゴージャスかつ快適だ。インフォテインメントシステム用のモニターは、ローマで採用された縦型ではなくオーソドックスな横型であるが、操作性は悪くない。メーターは、ローマで採用されたフルデジタルタイプではなく、従来モデルとおなじくアナログ+デジタルの複合タイプになる。

電動調整式のシートは、ヒーター機構にくわえ、ヘッドレスト付近からも温風が出るようになった。寒い季節のオープン・エア・ドライブがより快適になるはずだ。

シートは電動調整式。ヘッドレストの跳ね馬の刺繍はオプション。

Hiromitsu Yasui

リアシートはふたりがけ。

Hiromitsu Yasui

ルーフが格納されていない状態のラゲッジルームはかなり広い。

Hiromitsu Yasui

ヘッドレスト下部から温風が出る。

Hiromitsu Yasui

新型ポルトフィーノMの価格は2737万円。これはベースモデルの価格だから、ACCなどのオプションを装着すれば価格は変わってくる。ちなみにローマの価格は2676万円だから、価格差は61万円だ。

流麗なボディを持つローマは魅力的であるものの、フルオープンの開放感を味わえるポルトフィーノMも捨てがたい。いずれも納車までに、“年単位”の時間がかかるのはおなじだ。

そういえば筆者の360モデナは今年車検だ。はたしていくらかかるのか未知数なだけに、維持費を抑えられる新車のポルトフィーノMは気になる。ローマとポルトフィーノMのどっちがいい? と悩むなんて、なんとも贅沢な話だ。

29歳、フェラーリを買う』直近記事
Vol.84 ローマに乗る
Vol.83 2020年を振り返る
Vol.82 人生初のツーリングに参加
Vol.81 あるべき“穴”がない!
Vol.80 クラシケ取得費用に納得
Vol.79 スーパーカーとソーシャルメディア
Vol.78 愛車をイベントに展示しました(後編)
Vol.77 愛車をイベントに展示しました(中編)
Vol.76 愛車をイベントに展示しました(前編)
Vol.75 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その5
Vol.74 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その4
Vol.73 この夏、愛車に乗れませんでした
Vol.72 オウナーとの交流
Vol.71 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その3
Vol.70 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その2
Vol.69 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その1
Vol.68 トラブル発生!
Vol.67 ドライブレコーダーの装着
Vol.66 自動車保険の現実(後編)
Vol.65 自動車保険の現実(前編)
Vol.64 フェラーリのオフィス・チェア
Vol.63  F8トリブートのオウナーに会う
Vol.62  トラブル発生!?
Vol.61  純正サスペンションを紛失!?
Vol.60  612スカリエッティのオウナーに会う
Vol.59  認定中古車で迷う(後編)
Vol.58  認定中古車で迷う(前編)
Vol.57 フェラーリ・オウナー専用のスマホ・アプリとは?
Vol.56 新車フェラーリの購入はいかに
Vol.55 いざ、新車フェラーリの商談へ!
Vol.54 ローマの購入を真剣に考える
Vol.53 1カ月半ぶりのドライブへ(後編)
Vol.52  1カ月半ぶりのドライブへ(前編)
Vol.51  月々2万円でフェラーリに乗れる!?
Vol.50 気になる車両価格と連載50回目
Vol.49  カスタマイズ費用の総額
Vol.48 ちょっと古いフェラーリのランニングコスト
Vol.47 愛車にしばらく乗りません!
Vol.46 外出自粛の今、愛車を楽しむ方法とは?
Vol.45 新型コロナウイルス問題でフェラーリの新車販売はどうなる!?
Vol.44 フェラーリでスキーに連れてって!
Vol.43 ドアがロックされない!後編
Vol.42 ドアがロックされない!前編
Vol.41 トラブル発生! ドアが開かない!?
Vol.40 超有名漫画家が360モデナを描き下ろす!
Vol.39 新車フェラーリを購入!?

文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)