走りの良いSUV
レクサスが2021年10月7日に発売した新型「NX」は、運転が好きなひとも満足できる出来だ。今回はプラグインハイブリッドもラインナップされたなかで、まずここで紹介したいのは、もっともベーシックなモデルといえる「NX250」だ。よく走り、よく曲がる。
「ここからレクサス(車)の新時代」
メーカーが謳う新型NX。乗った印象をもとに、ひとことで表現すると“SUVではない”と、私は思った。スタイルはSUVだけれど、運転した感覚はスポーツセダンのように、操縦性が高い。ジャンルを超越した出来だ。
理由は、NXの開発陣のがんばり、というしかないだろう。「ドライバーの意図に忠実でリニアな応答」というのが開発の主目的のひとつ、と、レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、加藤武明氏の言葉がある。いちばんに走ったのは、八ヶ岳連峰の一部をなす山岳路。NX250の印象は、楽しい。
楽しさの理由は、ハンドリングだ。ステアリング・ホイール(ハンドル)を切ったときのクルマの動きが、とてもキモチよい。運転している私の意図どおりにすっと曲がり、車体はあまり傾かないので、カーブが連続する道を速いペースで走っていける。
冬を迎えた蓼科は、交通量も少ない。「ビーナスライン」という山々を見下ろす屈曲路を走ったとき、対向車にすれちがわなかった。幸い、私がドライブしたときは、路面が凍結するほど寒くもなく、NX250のいいところをしっかり味わえた。
乗り込んだ瞬間からわかる贅沢さ
NX250は、2487ccの直列4気筒ガソリン自然吸気エンジンを搭載する。ターボチャージャーはついていない。使用燃料はレギュラー・ガソリンだから経済的である。試乗したのは、AWD(全輪駆動)で、快適仕様の「バージョンL」だった。
「ヘーゼル」なる新規設定カラーのシートが、いわゆる“もてなし感”、英語だと“インバイティング”な雰囲気をかもしだしている。乗った瞬間から上質さがわかる仕立てだ。
14インチとかなり大型のタッチディスプレイがダッシュボード中央に据え付けられていて、周囲が光沢ある黒色で塗装されているのも、新しさを演出してくれている。
さらに、光沢あるブラックで塗装されたグリルや、メタリック塗装に切削光輝なる仕上げの20インチ・ホイールが、スポーティかつエレガント。
もちろん、見た目の印象だけでなく、じっさいに軽快で、ワインディングロードを走るのが楽しめる。
前輪駆動車もまた、NX250のよさをしっかり味わえた。ターボを備えた2.5リッター・エンジンの「NX350」(エンジンは別もの)も、加速のいいモデルであったが、それ以外ではNX250も負けていない。足まわりやステアリングなど、全体のバランスが絶妙にいいのだ。
秘密は、「スムーズな操舵フィール」(レクサス)のための新技術の数かず。ボディ剛性を高めて操縦性を上げ、かつサスペンション・システムは新開発という。さらに、正確な操舵のためにと、ステアリングシステムも新設計。くわえて、BMWなどスポーティさを追求した欧州車が採用するホイールのハブボルト締結も採用という具合だ。
待つのも楽しみ
快適性の分野でも、かなり凝っている。ひとつは、「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」だ。ドアのアンラッチを電子制御でおこなうe-ラッチシステムとブラインドスポットモニターを組み合わせたものだ。
降車時、後方から接近するクルマや自転車と衝突する危険性があるとシステムが判断した場合、アウターミラー内のインジケーターが点灯し、注意を促す。それでも、ドアを開けようとした場合、ドアが開かないようにする。
「停車時のドア操作に起因する事故防止に貢献する世界初」の技術とレクサスは謳う。たかがドアの開閉で……と思うかもしれない。でも、じっさいに慣れると、アクションが少なくなるぶん、楽チンと思うはず。とくに車内からのドアの開閉がかなり快適になる。
これもじっさいに使うと、便利と思うひとは意外に多そうだ。