クオリティは変わらない──新型レクサスNX250試乗記

フルモデルチェンジしたレクサスのSUV「NX」のエントリーモデルである「NX250」に小川フミオが試乗した。
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Hiromitsu Yasui

走りの良いSUV

レクサスが2021年10月7日に発売した新型「NX」は、運転が好きなひとも満足できる出来だ。今回はプラグインハイブリッドもラインナップされたなかで、まずここで紹介したいのは、もっともベーシックなモデルといえる「NX250」だ。よく走り、よく曲がる。

「ここからレクサス(車)の新時代」

メーカーが謳う新型NX。乗った印象をもとに、ひとことで表現すると“SUVではない”と、私は思った。スタイルはSUVだけれど、運転した感覚はスポーツセダンのように、操縦性が高い。ジャンルを超越した出来だ。

【主要諸元(NX250 AWD バージョンL)】全長×全幅×全高:4660×1865×1660mm、ホイールベース2690mm、車両重量1710kg、乗車定員5名、エンジン2487cc直列4気筒DOHCガソリン(201ps/6600rpm、241Nm/4400rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ235/50R20。

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NX250のホイールは標準が18インチで、バージョンLが20インチ。タイヤはブリヂストン製だ。

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理由は、NXの開発陣のがんばり、というしかないだろう。「ドライバーの意図に忠実でリニアな応答」というのが開発の主目的のひとつ、と、レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、加藤武明氏の言葉がある。いちばんに走ったのは、八ヶ岳連峰の一部をなす山岳路。NX250の印象は、楽しい。

楽しさの理由は、ハンドリングだ。ステアリング・ホイール(ハンドル)を切ったときのクルマの動きが、とてもキモチよい。運転している私の意図どおりにすっと曲がり、車体はあまり傾かないので、カーブが連続する道を速いペースで走っていける。

ドアのラッチ/アンラッチ機構をスイッチによる電気制御とした「e-ラッチシステム」を採用。無駄な動きのないスムーズなドア操作と滑らかな操作フィーリングを実現したという。

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室内のドア開閉用スウィッチ。新型は「安心降車アシスト」も装備。降車時、後方から接近するクルマや自転車と衝突する危険性があるとシステムが判断した場合、アウターミラー内のインジケーターが点灯し、注意を促す。それでも、ドアを開けようとした場合、ドアが開かないようにする機能を世界で初めて採用した。

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冬を迎えた蓼科は、交通量も少ない。「ビーナスライン」という山々を見下ろす屈曲路を走ったとき、対向車にすれちがわなかった。幸い、私がドライブしたときは、路面が凍結するほど寒くもなく、NX250のいいところをしっかり味わえた。

乗り込んだ瞬間からわかる贅沢さ

NX250は、2487ccの直列4気筒ガソリン自然吸気エンジンを搭載する。ターボチャージャーはついていない。使用燃料はレギュラー・ガソリンだから経済的である。試乗したのは、AWD(全輪駆動)で、快適仕様の「バージョンL」だった。

先進安全パッケージ「Lexus Safety System+」も進化した。ミリ波レーダーおよび単眼カメラの検知範囲拡大により、各機能が向上したとされる。衝突被害軽減ブレーキは、交差点での支援を拡大し、交差する車両や、右折時に前方からくる対向直進車、右左折時に接近する横断歩行者/自転車運転者との衝突回避も支援出来るようになった。自動二輪車や夜間の自転車運転者などもふくまれる。

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搭載するエンジンは2487cc直列4気筒DOHCガソリン(201ps/6600rpm、241Nm/4400rpm)。

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「ヘーゼル」なる新規設定カラーのシートが、いわゆる“もてなし感”、英語だと“インバイティング”な雰囲気をかもしだしている。乗った瞬間から上質さがわかる仕立てだ。

14インチとかなり大型のタッチディスプレイがダッシュボード中央に据え付けられていて、周囲が光沢ある黒色で塗装されているのも、新しさを演出してくれている。

ダイレクト感あふれる走りと低燃費を両立した、2.5リッターエンジン用8速オートマチックトランスミッション「Direct Shift-8AT」を採用。NX250に合わせたファイナルギア比を新設し、キビキビとした走りを実現したという。また、道路状況やドライバーの意思をその操作から先読みした変速制御により定常走行では燃費が良く、静かに走行し、アクティブに走りたい時は、走りの楽しさを提供する。

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ダイアル式のドライブモードセレクトスウィッチ。複数のシステムを統合的に制御し、Sportモード、Ecoモードなど、ドライバーの好みやさまざまな走行シーンに応じてドライブモードを切り替えられる。

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さらに、光沢あるブラックで塗装されたグリルや、メタリック塗装に切削光輝なる仕上げの20インチ・ホイールが、スポーティかつエレガント。

もちろん、見た目の印象だけでなく、じっさいに軽快で、ワインディングロードを走るのが楽しめる。

プラットフォームは、TNGA(Toyota New Global Architecture)思想に基づき開発された「GA-K」だ。すでに「カムリ」や「ハリアー」などに使われているものだが、新型NXでは各所に補強ブレースを追加するなど、必要な最適化の方策をとったという。

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バージョンLのステアリング・ホイールはヒーター機構付き。

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アクセルペダルはオルガン式。

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前輪駆動車もまた、NX250のよさをしっかり味わえた。ターボを備えた2.5リッター・エンジンの「NX350」(エンジンは別もの)も、加速のいいモデルであったが、それ以外ではNX250も負けていない。足まわりやステアリングなど、全体のバランスが絶妙にいいのだ。

秘密は、「スムーズな操舵フィール」(レクサス)のための新技術の数かず。ボディ剛性を高めて操縦性を上げ、かつサスペンション・システムは新開発という。さらに、正確な操舵のためにと、ステアリングシステムも新設計。くわえて、BMWなどスポーティさを追求した欧州車が採用するホイールのハブボルト締結も採用という具合だ。

電動パーキングブレーキを採用。急な下り坂を一定の速度で走るようブレーキを制御する「ダウンヒルアシストコントロール」は、ガソリンモデルのAWDに標準だ。

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パノラミックビューモニターは床下透過表示機能付き。ボディやシートを透かして見たようなシースルービューや、車両を後ろ上方から見たような映像を表示し車両側方の安全確認ができるサイドクリアランスビュー、狭い道での接触回避を確認できるコーナリングビューも表示する。さらに、音声操作への対応や、パノラミックビュー/サイドクリアランスビュー/コーナリングビュー表示中に床下透過表示機能がONになっていれば車両直下およびタイヤ付近のアンダーフロア映像を表示して駐車やすり抜けをサポートする。また、クリアな視界を保つため、バックカメラにはカメラ洗浄機能が付きだ。

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メーカーオプションのデジタルインナーミラーは、車両後方カメラの映像をミラーのディスプレイに表示し、後席の乗員やヘッドレストに遮られることなく、後方の安全確認が出来る。

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待つのも楽しみ

快適性の分野でも、かなり凝っている。ひとつは、「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」だ。ドアのアンラッチを電子制御でおこなうe-ラッチシステムとブラインドスポットモニターを組み合わせたものだ。

降車時、後方から接近するクルマや自転車と衝突する危険性があるとシステムが判断した場合、アウターミラー内のインジケーターが点灯し、注意を促す。それでも、ドアを開けようとした場合、ドアが開かないようにする。

内外装は、「躍動感と先進技術が融合した、次世代レクサスを切り開くデザイン」(メディア向け資料)と主張する。インテリアは、2019年に発表したコンセプトカー「LF-30 Electrified」で発表した「Tazuna Concept」に基づき設計された。

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メーターはフルデジタル。

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インパネ上部には14インチのタッチディスプレイを設置。多くの機能をディスプレイ内で操作出来るようになったため、物理的なスウィッチが少なくなった。また、ステアリング・ホイールのホーンパッドが小型化され、スポークデザインも変わった。

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「停車時のドア操作に起因する事故防止に貢献する世界初」の技術とレクサスは謳う。たかがドアの開閉で……と思うかもしれない。でも、じっさいに慣れると、アクションが少なくなるぶん、楽チンと思うはず。とくに車内からのドアの開閉がかなり快適になる。

スマートフォンとクルマの操作を積極的に結びつけたのも、新型NXの特徴といえる。スマートフォンでドアのロックとアンロック、エンジンスタートなどの車両操作ができる。

おくだけ充電は1万3200円のオプション。

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オプションの“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムは、、歪みのないピュアな音を実現するため「Mark Levinson PurePlayコンセプト」を採用し、7つのUnityスピーカーの高さを合わせ、キャビンを囲むように配置し、前後左右に広がるステージ感とクリアで統一された中高音域の再生を実現したという。さらに、サウンドテクノロジー「Quantum Logic Surround(QLS)」や、圧縮音源復元テクノロジー「Clari-Fi(クラリファイ)」によって、可能な限りオリジナルに近い音を再現する。

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ムーンルーフはオプション。

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不慣れな場所や狭い場所での駐車を支援する、レクサス初のリモート機能付き「Lexus Teammate Advanced Park」は車外からスマートフォンでクルマを操作するシステムである。

これもじっさいに使うと、便利と思うひとは意外に多そうだ。

試乗車のインテリアカラーは「ヘーゼル」。オートエアコンと連動して、シートヒーター、シートベンチレーション、ステアリングヒーターを緻密に自動制御し、一人ひとりに最適な心地良さを提供する「レクサス クライメイト コンシェルジュ」をバージョンLは搭載する。

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リアシートはリクライニング機構付き。

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後席起こし時は容量520リッター、後席倒し時は容量1411Lリッターのラゲッジルーム。後席を倒さなくても、9.5インチゴルフバッグなら3個、スーツケースなら約140リッターと約90リッターを1個ずつ積める。

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トノーカバーは未使用時、折りたたんでラゲッジルームフロア下の小物入れに収納出来る。

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バージョンLのリアシート・バックレストは、電動格納式。

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走りの質、内外装のクオリティ、安全装備など全方位で進化したNXの完成度は相当高い。それは、ベーシックなNX250に乗っても十分わかる。

価格は「NX250」標準モデルがFWDで455万円、AWDで482万円。快適装備が充実したバージョンLが、FWDで543万円、AWDで570万円。納期は、COVIDの影響があり、やや時間がかかっているもよう。「6カ月以上の場合も」とレクサス・インターナショナルの広報は言う。楽しみに待つ価値はある。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)