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時計ジャーナリストの広田雅将が直撃! 吉祥寺「江口時計店」の強盗事件の真相!

吉祥寺の江口時計店と言えば、知る人ぞ知るアンティークウォッチの名店だ。1950年代から70年代に作られた良質な実用時計を中心としたセレクションには、店主である江口大介氏の審美眼が反映されている。そんな江口時計店が全国的なニュースになったのは5月24日のこと。店に強盗が入ったというのだ。
江口時計店

ショーケースは修理が終わり、以前と変わらない店内風景が戻っていた。

カルティエ時計20本、持ち去られる

江口さん、そもそもいつ強盗が入ったとわかったんですか?

「5月18日の午前0時30分に、警備会社のALSOKから連絡が入ったんです。そこで店に駆けつけたら、時計が20本ぐらいなくなっている。ALSOKって、異常があったら10分で駆けつけるんです。だから、犯人たちは数分で店を出たのでしょうね。盗まれたのはカルティエばかり。犯罪のプロではあるけど、時計は素人だと思いましたね」。人的被害がなくてよかった、と語る江口大介氏。しかし、丁寧に仕入れた時計を盗まれたのは、かなりショックだったようだ。

「気分はネガティブでしたよ。僕らの警戒が足りなかったからと反省もしたし、スタッフのみんなにも、どう伝えようかと悩みましたね。黙ってガラスを片付けていました」。そして、翌19日を迎える。

TVニュースにされてしまうが

「翌日、19日に、泥棒が入ったことがニュースに取り上げられたので、お客さんからメールやメッセージが山ほどきたんです。励まされましたね。そこで19日からまた仕事をはじめて、30日に店を再開しました」。この一件で、江口氏は大きく変わったという。

「僕は、こういう時計があればハッピーになると思って時計を仕入れてきました。でも今回の一件で、多くの人に支えられてきたんだな、と改めて思いましたね。もちろん今後もエゴ丸出しの品を扱いますけど、より一層お客様のためになることをしたいんですよね」

その現れが、店内に新しく置かれた盆栽だ。瀟洒な江口時計店にあって、古い盆栽は飛び抜けた存在感を放っている。しかし、それは、枯れた心境の表れ、ではないそうだ。

「この盆栽は面白い形をしてますよね。大きく曲がって葉が生えている。一度折れて、また戻ったからこういう姿になったそうですね。この盆栽は、私達の象徴だと思っています。大変なことがあって、江口時計店はアップデートされましたよ」

雷に打たれ、折れ曲り、復活した盆栽の前で撮影。5年前から吉祥寺に江口時計店を開業した店主の江口大介さん。

広田雅将(時計ジャーナリスト)

1974年大阪府生まれ。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。一般誌にも寄稿多数。

江口洋品店・江口時計店

東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目34−11

電話番号:0422-27-2900

営業時間:11:00-19:00

定休日:火曜

江口時計店
ギャラリー:時計ジャーナリスト広田雅将が生直撃! 吉祥寺「江口時計店」の強盗事件の真相!
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文・広田雅将 写真・UTSUMI