カルティエ時計20本、持ち去られる
江口さん、そもそもいつ強盗が入ったとわかったんですか?
「5月18日の午前0時30分に、警備会社のALSOKから連絡が入ったんです。そこで店に駆けつけたら、時計が20本ぐらいなくなっている。ALSOKって、異常があったら10分で駆けつけるんです。だから、犯人たちは数分で店を出たのでしょうね。盗まれたのはカルティエばかり。犯罪のプロではあるけど、時計は素人だと思いましたね」。人的被害がなくてよかった、と語る江口大介氏。しかし、丁寧に仕入れた時計を盗まれたのは、かなりショックだったようだ。
「気分はネガティブでしたよ。僕らの警戒が足りなかったからと反省もしたし、スタッフのみんなにも、どう伝えようかと悩みましたね。黙ってガラスを片付けていました」。そして、翌19日を迎える。
TVニュースにされてしまうが
「翌日、19日に、泥棒が入ったことがニュースに取り上げられたので、お客さんからメールやメッセージが山ほどきたんです。励まされましたね。そこで19日からまた仕事をはじめて、30日に店を再開しました」。この一件で、江口氏は大きく変わったという。
「僕は、こういう時計があればハッピーになると思って時計を仕入れてきました。でも今回の一件で、多くの人に支えられてきたんだな、と改めて思いましたね。もちろん今後もエゴ丸出しの品を扱いますけど、より一層お客様のためになることをしたいんですよね」
その現れが、店内に新しく置かれた盆栽だ。瀟洒な江口時計店にあって、古い盆栽は飛び抜けた存在感を放っている。しかし、それは、枯れた心境の表れ、ではないそうだ。
「この盆栽は面白い形をしてますよね。大きく曲がって葉が生えている。一度折れて、また戻ったからこういう姿になったそうですね。この盆栽は、私達の象徴だと思っています。大変なことがあって、江口時計店はアップデートされましたよ」