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上質なコンパクトセダン──新型アウディA3セダン試乗記

フルモデルチェンジしたアウディ「A3」のセダンに、小川フミオが試乗した。今や希少なコンパクトセダンの魅力とは?
アウディ AUDI A3セダン A3sedan コンパクトセダン スポーツバック
HIROKI KOZUKA
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ワンクラス上のクオリティ

アウディのコンパクトセダン「A3セダン」がフルモデルチェンジし、2021年5月18日から日本での販売が開始された。さっそく「A3セダン 1st Edition」に試乗。マイルド・ハイブリッド化された1.0リッター・エンジンの力強い走りと、クルマとしての出来のよさに驚いた。

A3ハッチバックとともに発表・発売されたA3セダン。従来型より全長が30mm伸びて4495mmに、全幅は20mm拡大して1815mmに、そして全高は20mm高くなって1425mmになった。

【主要諸元(ファースト・エディション)】全長×全幅×全高:4495×1815×1425mm、ホイールベース2635mm、車両重量1330kg、乗車定員5名、エンジン999cc直列3気筒DOHCターボ(110ps/5500rpm、200Nm/2000〜3000rpm)、トランスミッション7DCT、駆動方式FWD、タイヤサイズ225/40R18、価格472万円(OP含まず)。

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18インチのアルミホイールはファースト・エディション専用デザイン。

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基本プラットフォームは従来型とおなじ前輪駆動用のもので、ホイールベースは同一である。ただし、ボディの素材を一部変えるなどして軽量化と剛性アップがはかられたとアウディではしている。

なにより、実車を眼の前にしておどろいたのは、堂々とした雰囲気だ。「A6」とまでいうのはおおげさだとしても、「A4」と聴いても納得できる質感の高さがただよっている。A3は、アウディのラインナップではもっともコンパクトなセダンだ。しかし内容的には“スモール”でない、“ビッグ”であると思った。

アウディでは「クワトロ(1980年代にラリーでも活躍)をイメージした」とするブリスターフェンダーを採用しているのも、ボディの押し出しの強さに寄与しているはずだ。大型のグリルや深いエアダム、それに鋭角的な輪郭のヘッドライトによって、フロントマスクの雰囲気はぐっと戦闘的になっている。

WLTCモード燃費は17.9km/L。

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搭載するエンジンは999cc直列3気筒DOHCターボ(110ps/5500rpm、200Nm/2000〜3000rpm)。

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トランスミッションは7DCT。ギアセレクターはスウィッチ。

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排気量によるヒエラルキーは過去のもの

試乗した「1st Edition」は、「30TFSI Advanced」というモデルがベース。1.0リッター直列3気筒は90kW(110ps)の最高出力と200Nmの最大トルクを持ち、前輪を駆動する。これに、48ボルトのリチウムイオン電池を使ったマイルド・ハイブリッド・システムの組み合わせ。

ひとことでいって、数値から想像するより、力強い。アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、軽やかに前に進む。ステアリング・ホイールは、動かしたときの車体の反応がすぐれていることにくわえ、握っている手に、クルマの状態をていねいに教えてくれる。

最小回転半径は5.1m。

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運転支援関連のスウィッチはインフォテインメント用モニターで操作する。

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少し動かしただけで、サスペンションが動いてボディが沈むようすがわかるようだし、路面状況も情報としてよく伝わってくる。最近のアウディ車はどれも、この感覚がすばらしい。だから、速度域にかかわらず運転がじつに楽しいのだ。足によく合ったスポーツシューズの感覚といってもいい。

高速道路では、速度がどんどん伸びていく。排気量が大きくないため、高めの速度域からの急加速は得意でないものの、いかにも空力がよい感じで、ゆっくりアクセルペダルを踏み込んでいくと、グングンと速度が上がっていく。危険なぐらい自然に高速領域に入る。みごとな安定性だ。

ドイツをはじめ欧州では、高速移動が多いため、小さなエンジンをフルに使って、燃費と走行性能の両立をはかるクルマづくりを得意としてきたことを思い出した。最近では、メルセデス・ベンツ「Eクラス」も1.5リッターエンジンで、じゅうぶん満足させてくれる。今回のA3は1.0リッター。排気量によるヒエラルキーは過去のものだ。

パーキングブレーキはスウィッチタイプ。

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ファースト・エディションのメーターはフルデジタルになる。

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使い勝手の良いインテリア

コクピットの基本的なデザインは、操作盤と計器盤をドライバーのほうに向けた、いわゆるセントラル・テーマが採用されている。メーターパネルはナビゲーションなどの表示もできる10.25インチの液晶。加えて10.1インチのタッチスクリーンを使ったインフォテイメントシステム用液晶画面も用意されている。

たしかに、インフォテイメントシステムは、表示が大きいうえにグラフィックのデザインは明瞭で使いやすい。くわえてA3では、エアコンなど通常よく使うものは物理的なスイッチで、というアウディの哲学(おそらく)が適用されている。高速道路などでブラインドタッチがやりやすく、たいへんありがたい。

物理的なスウィッチを極力少なくしたインテリア。ファースト・エディションはナビゲーション・システムが標準。

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ステアリング・ホイールにはオーディオ用コントローラー付き。

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ファースト・エディションのシートには、ブルーのアクセント入り。

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フロントシートの電動調整機構とヒーター機構は標準装備。

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後席もじゅうぶんに広く、おとな4人が快適に移動できる。ちょっと前まで、プレミアムセダンはこのぐらいのサイズだったのを思い出した。日本で使うには最適なサイズだ。セダンはじつは扱いやすい。キャビンスペースが荷室とさえぎられているぶん、室内の静粛性や空調の効きにもすぐれる。A3セダンも例外でない。

今回新採用の「アダプティブクルーズアシスト」(従来のアダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・アシストとトラフィック・ジャム・アシストを統合したもの)や、バーチャルコクピットとナビゲーションの統合パッケージなどオプションも豊富だ。

リアシートはセンターアームレスト付き。

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リアシート用エアコン吹き出し口と充電用USV端子は標準。

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ラゲッジルーム容量は425リッター。

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ラゲッジルームのフロア下には小物入れがある。

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リアシートのバックレストには、40:20:40の分割可倒機構を特別装備。

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試乗した「1st Edition」には、専用デザインの18インチ・アルミホイール、マトリクスLEDヘッドライト、マルチカラーアンビエントライティング、3分割リアシートバックなどが備わる。価格はベースモデルの310万円から。「1st Edition」のベースになった「30 TFSI Advanced」は346万円。「1st Edition」は472万円。そして上には2.0リッターエンジンに4WDシステムを組み合わせた「40 TFSI quattro」(440万円~)が追って用意される。

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文・小川フミオ 写真・小塚大樹