招致から旗振り役の4人全員が去った トラブル続き東京五輪への道

2021年2月13日 06時00分

2020年五輪の東京開催が決まって喜ぶ(右2人目から左へ)森元首相、安倍首相、猪瀬東京都知事ら(肩書は当時)=2013年9月、ブエノスアイレスで(AP・共同)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任を表明した。開幕まで半年を切った段階で大会組織委のトップが退く異例の事態。ただ、東京大会を巡って生じた混乱は今回だけではない。新国立競技場の当初案の白紙撤回や大会エンブレムの盗作疑惑、招致に絡む不正疑惑など国際的なトラブルに発展したケースも多い。問題は相次ぎ、大会招致から深く関わってきた中心人物はそろって表舞台を去った。(中川耕平、森合正範)

◆安倍前首相、猪瀬元都知事、竹田前JOC会長に続き…

 2013年9月。20年の東京大会開催が決まった国際オリンピック委員会(IOC)総会で、安倍晋三首相(肩書は当時、以下同じ)は東京電力福島第一原発事故について「状況はコントロールされている」と言い切った。当時は汚染水漏れが起き、海への流出も懸念される中での国際社会へのアピール。国内では批判も起きた。
 15年7月には、ザハ・ハディド氏デザインの新国立競技場の建設計画が白紙に。総工費が膨張し、根本から見直された。同月には公式エンブレムが発表されたが、ベルギーの劇場のロゴマークと酷似していたことが判明。その後、使用中止となった。
 18年7月には公式マスコットの名前が決まるなど準備は着々と進められていたが、新たな火種が発生した。12月に五輪招致を巡る買収疑惑で、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長がフランス当局から聴取を受けたことが明るみに。竹田氏は潔白を主張するも、19年3月に退任表明。それから1年後、世界規模の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、五輪史上初の延期が決まった。その後、安倍氏が自らの病気を理由に9月に首相を辞任した。
 今回の森氏に加え、竹田氏、延期を決断した安倍氏、そして金銭受領問題で13年12月に任期途中で辞任した猪瀬直樹都知事。大会招致を導き、旗振り役だった者は誰ひとりとして、当時の肩書のまま、東京五輪を迎えることができなかった。

◆逆風の中、開催出来るかどうかも不透明

 大会関係者は12日、「招致に成功してからは森さんを先頭に、安倍さん、竹田さんと走ってきた。これで東京五輪というものを最初から知っている人が全員いなくなり、大会の責任の所在も分からなくなった」と複雑な表情で話した。
 スポーツの祭典を巡って繰り返された、アスリートを置き去りにしての迷走劇。コロナ禍も重なり、その結果が世論調査で国民の多くが五輪を待ち望んでいないという重い現実だ。
 確かなことは今夏、大会が開催できるかどうかは依然、不透明なままということ。そして、組織委や五輪・パラリンピックへの国民の不信感は、増すばかりということだ。

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