【12月4日 Xinhua News】中国東北部で育ち、華北を経て中部の山脈を越え、多くのトンボが生息する華南と南西部一帯にたどり着く。トンボ研究者の張浩淼(Zhang Haomiao)氏の足跡は、数千キロに及ぶギンヤンマの移動経路と見事に一致する。ギンヤンマは中国に広く分布し、長距離を移動する習性を持つ。

 世界で確認された6千種以上のトンボのうち約千種が中国に生息しているが、人々が日常で目にするのはその5%未満にすぎない。

 張氏は黒竜江省(Heilongjiang)牡丹江市(Mudanjiang)に生まれ、5歳の時にトンボと出会った。少年時代は毎日のように川でトンボを観察して絵に描き、高校に入ると標本収集を開始。大学在学中には独学でトンボの種類を見分けられるまでになった。

 大学では一見トンボとは無関係の化学工学を学び、修士課程でもパルプ・製紙工学を専攻したが、その専門知識を生かしてトンボの標本の色を保つ技術を開発した。

 張氏は現在、中国科学院昆明動物研究所の研究員として、トンボの分類学や生態学、系統発生と進化などの研究に従事している。毎年7カ月を野外調査に費やすため、多くの予測不可能なリスクも伴う。2012年に雲南省(Yunnan)大理市(Dali)の蒼山を調査した際には疲労と酸素不足で意識を失ったが、幸いにも同僚に救助され無事回復した。

 20年近い野外調査を経て、張氏はトンボの新属を一つ設立、36の新種を命名した。より高く深い次元でトンボを理解するため、ここ数年は同僚たちと共に「トンボ・ゲノム・プロジェクト」と名付けた約30人のチームを結成し、世界で研究を展開している。

 張氏が過去約10年で見つけたトンボは全て「中国トンボ大図鑑」に収録されている。同書で初公開された希少種の写真も多い。重さ7キロの本は、中国に生息する3亜目23科175属820種のトンボを網羅した最新かつ完全な中国のトンボのリストであり、世界で最も多くのトンボを収録したカラー図鑑でもある。(c)Xinhua News/AFPBB News