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ジャガーのセダンは今──新型XF R-Dynamic SE P300 AWD試乗記

マイナーチェンジを受けたジャガー「XF」に小川フミオが試乗した。XJなき今、ジャガー・セダンのトップモデルになった、その実力とは?
ジャガー JAGUAR XF RDynamic SE P300 AWD ジャガーXF 新型XF ジャガーセダン イギリス車
Hiromitsu Yasui

パワフルなエンジン

ジャガープレミアムセダン「XF」の熟成が進んでいる。日本車ともドイツ車ともちがう個性が欲しいひとは、試す価値があると思う。ここで紹介するジャガー「XF R-Dynamic SE P300 AWD」は、とりわけスポーティな雰囲気で、運転が楽しめるのだ。

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XFは、おおきくいって、スタンダードモデルと、このR-Dynamic(アールダイナミック)との2本立てのラインナップだ。パワフルな1995cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載モデルの「P300」は、R-Dynamic専用。いちおう書いておくと、セダンと「スポーツブレーク」なるステーションワゴンの2つのボディがある。

【主要諸元】全長×全幅×全高=4970×1880×1455mm、ホイールベース2960mm、車両重量1820kg、乗車定員5名、エンジン1995cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(300ps/5500rpm、400Nm/1500〜2000rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ245/45R18、価格838万円(OP含まず)。

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試乗車はオプションの20インチ・アルミホイールを履いていた(20万1000円)。

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エンジンラインナップは、同時に発表されたマイルド・ハイブリッド化された2.0リッターディーゼルの「D200」と、出力がやや控えめの2.0リッターガソリン「P250」。前者はP300同様AWD(フルタイム4WD)で、後者は後輪駆動。

P300(「P」はペトロル=イギリス英語でガソリンの意)に用意されたエンジンは、221kW(300ps)の最高出力と、400Nmの最大トルクを発生。数字からしてパワフルだ。

インテリアは、インフォテインメント用ディスプレイが拡大され、ギアセレクターのデザインなどが変更された。

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ドライブしての印象は、数字からの期待を裏切らない。重めの操舵感をもつステアリングホイールと、ボディのロールを抑えめにした足まわり、それに、低い回転域から強い力を感じさせるパワーユニットが持ち味だ。

ふだん使いなら3000rpmあたりまでが実用域だろう。8段オートマチック変速機は燃費をかんがえて、早めにシフトアップしていく設定である。エンジン回転が2000rpm以下に落ちても、パワー不足と感じることはない。扱いやすいのだ。

WLTCモードは10.6km/L。

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搭載するエンジンは1995cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(300ps/5500rpm、400Nm/1500〜2000rpm)。なお、XFは全車4気筒エンジンになる。

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トランスミッションは8ATのみ。

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ボディサイズを感じないスポーティな走り

先に触れたとおり、スポーティなR-Dynamicのよさがちゃんとある。この仕様は足まわりが少し硬めで、操縦を楽しむように作られている。

試乗車には、「ダイナミックハンドリングパック」というオプション(22万5000円)がそなわっていた。おそらく、これもいい”働き”をしているはず。

ボディカラーの「ユーロンホワイト」は9万3000円のオプション。

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電子制御ダンパーの減衰力などは任意で変更出来る。

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内容は、アダプティブダイナミクス、コンフィギュラブルダイナミクス、赤色ブレーキキャリパー、リアスポイラー、355mm径フロントブレーキディスク、325mm径リアブレーキディスクからなる。

アダプティブダイナミクスとは、走行状況に応じて足まわりの設定を変える電子制御の可変ダンパーを中心とした機構。コンフィギュラブルダイナミクスは、操舵の重さ、ATのシフトポイント、スロットルマッピングなどの設定を任意でカスタマイズできるシステムだ。

駆動方式は4WD。前後のトルク配分は、インフォテインメント用ディスプレイで確認出来る。

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360°カメラを搭載。

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カメラの映像を表示するデジタルルームミラーは10万2000円のオプション。

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ステアリング・フィールにダイレクト感があり、車体の動きは機敏。少し脚を前に投げ出して座るジャガー独自のシーティングポジションをとって、太めの革巻きリムをもった小径ステアリングホイールを操作すると、全長4970mmもあるセダンを運転していることを忘れる。

これまで、ジャガーのラインナップには「XJ」という最上級モデルが設定されていた。X351型という2010年発表の最新型は、しかし、2019年に生産中止。重い車重に排気量の大きなエンジンの組み合わせは、従来からのジャガーXJの”伝統”を受け継いでいたものの、ドイツ車やレクサスを前に、じゅうぶんな個性を打ち出せなかった。

ステアリング・ホイールはRデザイン専用のもの。ヒーター機構は3万9000円のオプションになる。

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メーターはフルデジタル。ヘッドアップディスプレイは10万1000円のオプションになる。

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XJがラインナップから落とされたいま、ジャガーのセダンは、「XE」とこのXFのみ。いまはXFがトップモデルだ。アルミニウムを多用した車体に、4気筒マイルドハイブリッド。この組み合わせはけっして悪くないものの、XJとはやっぱりちがう。

もうすこし排気量が大きくて、加速していくとき、マルチシリンダー(6気筒いじょう)ゆえの、アクセルの踏みこみに太いトルクで応えてくれる、独特の感覚がなつかしくなった。

フロントシートにはオプションの16ウェイ電動調整機構が付いていた(5万7000円)。

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スライディングパノラミックルーフは23万円のオプション。

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やっぱりドライバーズカー

ないものねだりをしたくなるのは、後席を広く作るものの、つねにドライバーズカーであることを忘れないジャガーのクルマづくりが、XFでも感じられたからだろう。

後席は居心地がいいし、オプションで個別のモニタースクリーンを設置することも出来るなど、ビジネスからファミリーまで多様な目的に対応しているのがXFの美点だ。

リアシートはセンターアームレスト付き。

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リアシート用エアコンは9万9000円のオプション。

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内装のクオリティは高い。いまのジャガーが力を入れている点だ。試乗車は、レザーとクロームの使用範囲を拡大した「プレミアムアップグレードインテリアパック」(44万6000円)を組み込んでいた。

とくに眼をひいたのは、シート表皮だ。「シエナタン」と名づけられた乾いた土を思わせる色合いのタンの色。ひしゃげたハニカムというか、日本の伝統柄でいうと網目模様のようなパターンが箔押しされている。類例のない独特の雰囲気があるのだ。

ラゲッジルーム容量は通常時459リッター。

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40:20:40の分割可倒式リアシートバックレストは13万7000円のオプション。

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今回の2021年モデルは、インテリアがほかのモデルに準じて、アップトゥデート化された。センターコンソール全体の造型が変わり、そこに最新のインフォテイメントシステムである11.4インチの「Pivi Pro」が標準で装備される。

オプションの「メリディアンサラウンドサウンドシステム」(19万3000円)も、Pivi Proと組み合わされ、タッチ式モニター画面で操作する。相変わらず、品がいい再生特性だ。先日乗ったジャガー「I-PACE」のメリディアンは低音域もしっかり再生したという記憶があるものの、XFのものはより上品。管弦楽やボーカルが得意科目のようだ。

メリディアンのサラウンドサウンドシステムは19 万3000円のオプション。

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価格は838万円なので、価格からいってもりっぱなプレミアムセダンだ。ぜいたくに作られているし、オプションも豊富。それでも、XFの最大のよさは、ドライバーズカーとして作られているところだろう。セダンが好きなひとのために、XFという選択肢が残されていることは、とても喜ばしい。