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ホットハッチはやっぱり楽しい!──新型ミニ・ジョン・クーパー・ワークス試乗記

大幅改良を受けた新しい「ミニ」の高性能ヴァージョン「ジョン・クーパー・ワークス」の3ドアモデルを小川フミオがテストした。
THE NEW MINI ミニ JCW ジョン・クーパー・ワークス イギリス車 BMWミニ
HIROKI KOZUKA

ミニの楽しさを存分に味わえる!

せっかくなら、しっかりキャラクターのたったクルマに乗りたい……そう思っているひとにとって、ミニの魅力は薄れていないと思う。今年の5月25日にマイナーチェンジを受けたホットモデル「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス」は、あらためて、ミニの楽しさを味わわせてくれる。

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ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(以下ミニJCW)は、ご存知のかたも多いように、ミニのラインナップにおいてもっとも高性能なモデルだ。パワフル。でも最新モデルは、カリカリにホット(高性能)というより、おとなっぽさがあって、幅広い層にアピールすると思う。

【主要諸元(3ドア)】全長×全幅×全高=3880×1725×1430mm、ホイールベース2495mm、車両重量1290kg、乗車定員4名、エンジン1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(231ps/5200rpm、320Nm/1450〜4800rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式FWD、タイヤサイズ205/45R17。

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「3ドア」と「コンバーチブル」のJCWは全長3880mmのボディに1998cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載する。最高出力170kW(231ps)の最高出力と320Nmの最大トルクでもって、前輪を駆動する。4輪駆動はJCWシリーズの「クロスオーバー」と「クラブマン」とに限定される。

3ドアとコンバーチブル、そしてJCWの設定はないものの5ドアは、そもそも前輪駆動で設計されたオリジナルの思想を継承する。いっぽう、セグメントがひとつ上になるクロスオーバーとクラブマンは、よりハイパワー(306ps、450Nm)で、そしてそのパワーを駆動力にしっかり活かすためのフルタイム4WDとなる。

レッドキャリパーと17インチ・アルミホイールはJCW専用デザイン。

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スカッフプレートはJCWのロゴが入った専用デザイン。

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いずれにしても、ファントゥドライブをアピールするのがJCWの役目だ。今回乗った3ドア(実際はハッチゲートをそなえた2ドア)の「The New Mini John Cooper Works」は、じゅうぶん迫力ある外観をもつ。

大きなバンパー一体型エアダムと、ルーフ後端の大型スポイラーがかなりの迫力だ。グリルやバッジなど本来クロームを使うパーツはピアノブラックで仕上げてある。

試乗したクルマは、ソリッド(メタリックでない)グリーンの車体に、赤く塗られたルーフの組み合わせ。かつオプションのボンネットストライプ。こんなクルマに乗っていいの?と、思っても、不思議でないかんじの派手さだ。

JCWは、センターアームレストやオートエアコンなどを含む「コンフォート・パッケージ」が標準になる。

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絶妙な操舵感覚

でも、ミニJCWは、血気にはやる若者でなく、“おとなのためのクルマ”なのだ。

スムーズにまわるエンジンと、扱いやすい太いトルク、そしてダイレクトなステアリングと、ミニが持つ特徴を、うまく拡張している。

0-100km/hの加速タイムは6.1秒。

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搭載するエンジンは、1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(231ps/5200rpm、320Nm/1450〜4800rpm)。

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トランスミッションは8AT。

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ドライブモードは3つ。エコ(グリーン)とミドとそれにスポーツ。ダッシュボードのセンターにそなわった1960年代の英国車ふうのトグルスイッチ(棒みたいな形状のスイッチ)で切り替える。

ミドは、他モデルでは“コンフォート”や“市街地モード”などと表記されるドライブモードで、エンジン回転が2000rpmの手前でシフトアップする。231psのクルマに乗っている印象は、どちからというと希薄。

マイナーチェンジでメーターは新デザインの液晶タイプに変更された。

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私なら、ミニJCWに乗るひとには、スポーツモードを勧めたい。エンジンがまさに目をさましたようなかんじで、軽いアクセルペダル操作で、1450rpmから4800rpmにわたってわき上がる最大トルクの山に乗れる。

ぐんぐんと加速し、ステアリング・ホイールの操舵感覚は軽くもなく重くもなく絶妙。、駆動輪である前輪が乗っている路面の状況も、前輪の微妙な切れ角も、それにタイヤ(乗ったクルマはピレリPゼロ装着)が路面をどれだけつかまえているか。そんなことが手にとるようにわかる感覚だ。

目をさましたエンジンは、弾けるような乾いた排気音とともに、痛快な加速を見せる。乗り心地はすこし硬いものの、不快に感じるほどの突き上げはない。電子制御ダンパーの設定が、うまく効いている。

WLTCモード燃費は14.5km/L。

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選択した走行モードはインパネのモニターに表示される。

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金属パッド付きのペダル類。アクセルペダルはオルガン式だ。

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独自のゴーカートフィーリングは健在

かつてのミニは“ゴーカートフィーリング”と称して、さっとステアリング・ホイールを切り込んだとき、車体がほとんどロールせず、ノーズが瞬時に向きを変えるハンドリングを身上としていた。

2013年に現在の第3世代へとフルモデルチェンジした際、独自のゴーカートフィーリングに手が入れられ、ボディは多少のロールを許すようになった。私は、今回のミニJCWの操縦感覚も、けっして嫌いではない。

シートは、JCW専用のスポーツタイプ。

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専用デザインのステアリング・ホイール。

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2001年に最初のミニがBMW傘下で世に送り出されてから、第3世代にいたるまで、スタイリングはキープコンセプト。もちろん、フロントグリルの処理や、LEDを使ったヘッドライトなど、そこかしこでアップデートがはかられている。大きく変わったのは歩行者保護など安全基準の採用だ。

たとえば、フロント部分の角を落としている。上からみると、車体の角が斜めに落とされて、グリルのあたりだけ前に突き出している輪郭に気づく。これは衝突時に、ボディでもっとも硬いAピラーに歩行者をぶつけないための工夫だ。歩行者のからだを車体の側面にとばすデザインだ。

リアシートはふたりがけ。

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クルマのデザインが変わるのには、上記のような衝突要件が大きく作用しているのである。ただし、現代的な基準をあれこれ採り入れながらも、ミニは誰が見てもミニとわかる。しかも、ミニには類似の競合がない。いまもって、魅力的なデザインなのだ。

室内はタイトだ。とくに2ドアモデル(ミニではミニ3ドアという)では後席は非常用かというぐらい、レッグスペースが限られてしまう。いっぽう、前席は”適度”にタイト。

通常時のラゲッジルーム容量は211リッター。

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リアシートのバックレストを格納すると731リッターに拡がる。

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ラゲッジルームのフロア下には小物入れがある。

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操作類がドライバーの使いやすいところに配置され、標準装備のヘッドレスト一体型バケットタイプの「JCWスポーツシート」がしっかりからだを支えてくれるのも、とてもよい。

ミニのよさが、バリエーションの豊富さであるのは変わっていない。ミニ3ドアだけとっても、JCWの下に、クーパーS、クーパー、クーパーD(ディーゼル)、そしてONEと、パワートレインの性能が異なる5つのモデルがある。

ミニ3ドアJCWの価格は、482万円。昨今のミニ車は標準装備が多く、私ならオプションで360W(やや控えめだ)の「harman/kardon Hi-Fiラウドスピーカーシステム」(11万円)を選ぶぐらいで十分だ。低音もそれなりにしっかり出て、いまの音源の再生によく合うと思う。イキのいいミニJCWに向いている。

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文・小川フミオ 写真・小塚大樹