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進化した“陸の王者”に期待しかない! 新型トヨタ・ランドクルーザーの注目すべきポイントは?

6月10日、フルモデルチェンジしたトヨタ「ランドクルーザー」が発表された。新型を見た大谷達也の印象は?
進化した“陸の王者”に期待しかない! 新型トヨタ・ランドクルーザーの注目すべきポイントは?

200kgの軽量化はお見事!

新型ランドクルーザーの姿が公開された。

無骨で直線的なスタイルは歴代ランドクルーザーに共通するもの。それどころか、虚飾のたぐいを廃してさらにシンプルなデザインを目指したようにも見える。例外はフロントグリルで、より大きく、さらに立派になったが、これは中東や中国あたりの売れ行きを考えると必要な措置だったのかもしれない。

新型は、TNGA(Toyota New Global Architecture)思想に基づき開発された新しいプラットフォームである「GA-F」を採用した。マイナス200kgの軽量化と高剛性化、低重心化を実現したという。

メカニズムに関してわかっていることは、まだあまり多くない。ただし、200kgもの軽量化を実現しながら、フレーム構造を踏襲したあたりはさすがというべき。“ランクル”が走る道は、整備が行き届いた先進諸国の舗装路ばかりとは限らない。人里から遠く離れた中央アジア、中東、アフリカ、南米といった地域の、とてもクルマが走れるとは思えない荒れ地を果てしなく走り続けることだってありうる。

いや、むしろそういう状況でもバツグンの走破性と圧倒的な信頼性を備えているからこそ、ランドローバージープといった並みいるライバルを押しのけて、ランクルは現在の地位を確立したともいえる。その意味でいえば、プレスリリースに記された「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」というランドクルーザーに対する世界中からの評価は、紛れもない事実であると同時に、このクルマの真価を的確に言い表していると思う。

1951年登場の“BJ”型。

1955 年登場の“20”系。

そういった使い方を考えれば、過酷な状況でも優れた堅牢性を発揮するフレーム構造は決して捨てることができなかったはず。「200kgの軽量化」もうたわれているが、これは燃費性能の向上=CO2排出量の低減に役立つだけでなく、オフロードでの走破性を高める効果も期待されているに違いない。車両全体の低重心化を図ったのも同じ理由からだと考えられる。

サスペンションの進化もあくまでもオフロード性能の向上を狙ったもので、ホイールの浮きづらさや接地性の改善に主眼が置かれている。

14年ぶりに生まれ変わった新型ランドクルーザーは、2007年に登場した“200”シリーズの後継として、新たに“300”シリーズとして登場した。

内装は、従来とおなじく水平基調のインパネを採用。インパネ上部にはディスプレイオーディオを設置した。

“ランクル専用基準”

エンジンラインナップでV型8気筒ガソリンが落ちて2種類のV型6気筒(ガソリンとディーゼルの2種類)とされたのは時代の要請だろうが、トヨタお得意のハイブリッドとせず、コンベンショナルなエンジン形式を頑なに守った点も、適切なメンテナンスが長く受けられない恐れのある地域での使用を前提としたものだろう。

同様に、プレスリリースには記されていなかったものの、4WDシステムは最近流行の“電子制御多板クラッチ式”ではなく、歯車と歯車がガッチリと噛み合うセンターデフ方式であることを期待したいところだ。

搭載するエンジンは、新開発の3.5リッターV型6気筒ガソリンツインターボ・エンジン(415ps/650Nm)と、3.3リッター V型6気筒ディーゼルツインターボ・エンジン(309ps/700Nm)の2種類。

社内の熟練テストドライバーやダカールラリー出場ドライバーなどが徹底的に走り込んで足回りをセッティングしたという。

トランスミッションは、いずれも新開発の10ATを組み合わせる。なお、詳細は明かされていないものの、一部地域にはV型6気筒ガソリンNA(自然吸気)エンジンと6ATを組み合わせた仕様も設定されるという。

そういえば、ランドクルーザーには信頼性や耐久性に関して独自の基準が設定されているという話を聞いたことがある。

トヨタに限らず、どこの自動車メーカーも自社製品の信頼性や耐久性には独自の目標値が設定されていて、たとえばエンジンであれば○○万km走っても壊れないとか、シートであれば●●kgの重さのものを●万回、載せたり降ろしたりしても形状が崩れないといった要件が決められているが、トヨタは自社製品に共通の信頼性・耐久性基準とは別に、特別厳しい“ランクル専用基準”を定めているというのである。

そのなかには、たとえば「エンジンオイルを交換しなくても▲万km(△十万km?)走行できる」といったものまで含まれているそうだ。もちろん、エンジンを保護し、最良のコンディションに保つには、メーカーが定めたインターバルでエンジンオイルを交換することが重要であるが、前述したような地域では、そういった“理想”が必ずしも実現できるとは限らない。そんな場合でも、とりあえずエンジンが焼き付いたりせず、坦々と走り続けられる耐久性を目標にして、ランドクルーザーは設計されているというのだ。なんとも頼もしい話ではないか。

1967年登場の “55”型。

1980年登場の “60”系。

1984年登場の “70”系。

1989年登場の “80”系。

重い使命

同様にして、走行に欠かせない消耗部品や補修部品が、世界中のどんな地域でも手に入りやすいというのもランドクルーザーの特徴とされる。

それも最新型に限らず、生産が終わってから何十年も経たモデルについても、トヨタ自身が供給を続けているそうで、それが望めない場合でもサードパーティが生産しているケースが少なからずあるという。

1998年登場の “100”系。

2007年登場の “200”系。

これも、あまたあるライバルメーカーではなく、トヨタのランドクルーザーが世界中で選ばれている理由のひとつ。同じ理由から、日本で古いランドクルーザーを使うのも安心といえるかもしれない。

いっぽうで「ハイエースと並んで、窃盗集団からもっとも狙われやすいクルマ」という嬉しくない評価もあるが、それこそ世界中から愛されている証拠。ランドクルーザーに課せられた「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」というこのうえなく重い使命は、新型にも受け継がれているに違いない。

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文・大谷達也