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贅沢さと美しさを手に入れたフォルクスワーゲンとは?──新型アルテオン・シューティングブレーク試乗記

ビッグマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン「アルテオン」に追加されたシューティング・ブレークに小川フミオが試乗した。
フォルクスワーゲン volkswagen アルテオン arteon シューティング・ブレーク  SHOOTING BRAKE パサート PASSAT ゴルフ GOLF ドイツ車
HIROKI KOZUKA

スポーティさとエレガンスを強調

セダンは気分でないものの、SUVはちょっと食傷ぎみ……なんてひとがいたら、フォルクスワーゲン「アルテオン・シューティングブレーク」がいいかもしれない。2021年7月13日に日本で販売開始されたスタイリッシュなステーションワゴンである。快適志向の、ぜいたくでおとなっぽいクルマだ。

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アルテオンは、ちょっとひねりが効いた、クルマ好きへのアピール度の高いモデルとして知られている。2017年10月から5ドア・ファストバックが日本へ導入された。クーペライクなボディはカッコいいだけでなく、作りの質感が高く、クルマ好きに評価されてきたのだ。

「ゴルフ」や「パサート」といったモデルは実直な機能主義がなによりセリングポイント。対するアルテオンと今回のアルテオン・シューティングブレークは、機能よりすこしスタイルに寄せたコンセプトが光る。独自のキャラクターを持つモデルだ。

【主要諸元(TSI 4モーション エレガンス)】全長×全幅×全高:4870×1875×1445mm、ホイールベース2835mm、車両重量1750kg、乗車定員5名、エンジン1984cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(272ps/5500〜6500rpm、350Nm/2000〜5400rpm)、トランスミッション7DCT、駆動方式4WD、タイヤサイズ245/35R20、価格644万6000円。

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アルミホイールは20インチ。駆動方式はフルタイム4WD「4MOTION」だ。

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新しいラジエターグリルにはLED照明(クロスバー)が付く。

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テールゲートに装着されたアルテオンのエンブレムは、右下からセンターに移設された。

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今回あらたに設定されたシューティングブレークとは、クルマ好きにはもはや説明はいらないかもしれない。クーペとステーションワゴンのクロスオーバー的なスタイルのモデルだ。車高は低めに抑えられ、スポーティさとエレガンスを強調したスタイルが特徴である。

あたらしいアルテオンとこのアルテオン・シューティングブレークは、フロントとリアを中心に外観に手が入れられた。インテリアは、機能主義的な考えもそれなりに大事にしつつ、ぜいたくさが強調されている。

ダッシュボードには大型液晶コントロールパネルがはまる。「We Connect(ウィコネクト)」なる通信機能が使えるため、たとえばスマートデバイスによりリモートでドアの解錠や施錠も操作できる。30色から選べるアンビエントライトの搭載も時宜にかなったものだ。

ボディカラーは新しい「キングズレッドメタリック」、「キングフィッシャーブルーメタリック」(写真)、「ラピスブルーメタリック」をふくむ全7色から選べる。

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ラゲッジルーム容量は、通常時565リッター。

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ラゲッジルームのフロア下には小物入れ付き。

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ラゲッジルームサイドには小物を置くのに便利なスペースもある。

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リアシートのバックレストを倒すと1632リッターに容量が増える。

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荷崩れ防止用のネットやトノーカバーは標準。

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テールゲートは電動開閉式。

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“元祖ライフスタイルビークル”

シューティングブレークとは、英国で好まれてきた車型である。とくに、1960年代はアストンマーティンジャガーやジェンセンFFなどのスポーティなクーペのボディを改造するケースが目立った。

専門の改造業者にクルマを持ちこんでリアに荷室をつけるのである。目的はモーターウェイとカントリーロードをぶっとばして狩りに出かけること。つまり“元祖ライフスタイルビークル”でもある。

インパネ上部には最新のインフォテインメントシステムなどを内蔵するタッチパネルモニターを設置する。

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シートは、ナッパレザーを使った贅沢なつくりだ。フロントは電動調整式で、ドライバーズシートにはマッサージ機構も付く。

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ダッシュパネルやドアトリムなどには「レザレット」と呼ぶ人工皮革を使い、かつステッチを施すことで高級感を高めた。さらに、「エレガンス」ではウッドも使う。

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オーディオは、harman/kardonと共同開発したプレミアムサウンドシステムもオプションで選べる(電動スライディングルーフとセットで29万7000円)。700W/11スピーカーで構成され、臨場感あるサウンドを楽しめるという。

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現代的に再解釈したのは、メルセデス・ベンツだ。荷室の大きさはやや控えめで、そのぶんスタイリッシュな「CLSシューティングブレーク」(2012年)と名づけた大型スポーティカーを出した。続けて、2015年には初代「CLAシューティングブレーク」を、というぐあい。マーケットではそれなりに人気があったと聞く。

アルテオン・シューティングブレークは、プロファイル(サイドビュー)をみると、ポルシェ「パナメーラ・スポーツツーリズモ」を連想させる。シルエットは流麗で美しいうえに、微視的には、たとえば下までまわりこんだ複雑な造型のクラムシェル型フードなど、作りが凝りまくっている。

内装も、フォルクスワーゲンのフラグシップにふさわしい。私が乗ったのは、上級グレード「TSI 4MOTIONエレガンス」。小さな孔が空いたパーフォレーテッドレザーというぜいたくな革を使い、かつシートは2色づかいと見た目にも特別感がひとしおだ。

リアシートはセンターアームレスト付き。

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リアシート用エアコンは標準。

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エアコン操作パネルは、デジタル・ディスプレイと組み合わせることで操作性と視認性が向上した。

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電動スライディングルーフは、harman/kardonと共同開発したプレミアムサウンドシステムとのセットで29万7000円のオプション。

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長距離ツーリングが似合う

エンジンは、1984cc直列4気筒ガソリンターボ。200kW(272ps)の最高出力と350Nmの最大トルクをもつこのパワートレインには7段ツインクラッチ(VWでは「DSG」とよぶ)が組み合わされて、フルタイム4WDの「4MOTION(フォーモーション)」も標準だ。よどみないパワー感で、ひとことでいって気持ちのよいドライブができる。

試乗した「エレガンス」は、軽いアクセルペダル、軽めの操舵感のステアリング・ホイール、それにゆったりと上下動するサスペンションなど、ドライブすると、ソフトともいうべき印象だ。

電子制御ダンパーを組み合わせたアダプティブシャシーコントロール「DCC」は全車標準になる。

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搭載するエンジンは1984cc直列4気筒ガソリンターボのみで、最高出力は272ps/5500〜6500rpm、最大トルクは350Nm/2000〜5400rpm。

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トランスミッションは7DCT。

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おなじVWブランドのパサートが、しゃきっとした足まわりの設定で、意外なほど運転が楽しめる仕立てなのと好対照というべきか。アルテオンは、快適な移動を求めるひとに最も合っている感が強い。

電子制御ダンパーを組み合わせたアダプティブシャシーコントロール「DCC」は標準装備だ。その恩恵にあずかれるのは、コーナリング時だ。姿勢の傾きは抑えられ、しっかりと安定して、気持ちよくコーナーを抜けていける。

先進運転支援装備もアップデートされた。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と操舵支援を組み合わせた「トラベル・アシスト」は、0km/h〜210km/hの範囲で作動する。

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新デザインのステアリング・ホイール。

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アダプティブシャシーコントロール「DCC」の設定は、インフォテインメント用モニターで操作出来る。

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フルデジタルのメーター。

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長距離のツーリングでも、アルテオン・シューティングブレークなら、疲労感なくこなせるだろう。2835mmのホイールベースの恩恵を最大限活かそうとしたパッケージングは上手で、後席はかなり広いし、荷室も広大だ。

おとなっぽいスタリッシュさは、人生経験を積んできた人たちによく似合いそうだ。機能というより趣味のために手にいれたステーションワゴンというイメージの強いシューティングブレークでカッコをつけられるのは、おとなの特権なのである。