愛じゃないならこれは何

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087900682

作品紹介・あらすじ

斜線堂有紀のはじめての恋愛小説集。

『きみの長靴でいいです』
天才ファッションデザイナー・灰羽妃楽姫は、二八歳の誕生日プレゼントに、ガラスの靴を受け取った。
送り主は、十年来の妃楽姫のビジネスパートナー、そして妃楽姫がいつか結婚すると信じている男、妻川。
人生の頂点に到達しようとしている妃楽姫だったが、しかし次の瞬間彼女が聞いたのは、妃楽姫以外の女との、妻川の結婚報告だった。

『愛について語るときに我々の騙ること』
「俺さ、ずっと前から新太のことが好きだったんだ。だから、付き合ってくれない?」
そういう男――園生が告白しているのは、私――鹿衣鳴花に対してだった。私たちの関係は、どこに向かおうとしているのか。
男と男と女のあいだに、友情と恋愛以外の感情が芽生えることはあるのだろうか。

『健康で文化的な最低限度の恋愛』
美空木絆菜は死にかけていた。会社の新入社員、アクティブな好青年、津籠の気を引きたかった絆菜は、彼の趣味――映画にもサッカーにも、
生活を犠牲にして一生懸命頑張って話を合わせた。そして今、絆菜は孤独に山の中で死ぬかもしれない。どうしてこんなことに。

『ミニカーだって一生推してろ』
二十八歳の地下アイドル、赤羽瑠璃は、その日、男の部屋のベランダから飛び降りた。男といっても瑠璃と別に付き合っているわけではない、
瑠璃のファンの一人で、彼女が熱心にストーカーしているのだ。侵入した男の部屋からどうして瑠璃が飛び降りたのか、話は四年前にさかのぼる――。

『ささやかだけど、役に立つけど』
初めて高校の放送部の部室で鳴花と出会った時に、自分はいつか彼女と付き合うんじゃないかと、園生は思った。
しかしそれから十年経って、彼女と自分の関係に、新太が加わった。二人よりも三人のほうが、ずっと安定している。
自分たちは、このまま死ぬまで三人なのだろう――でも、それでいいのだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、”恋愛小説”にどのような内容を思い浮かべるでしょうか?

    この世に溢れる数多の小説の中でも”恋愛小説”は定番です。”男女間もしくは同性間での恋愛を主題とした小説”を指すという”恋愛小説”。この四年ほどで780冊あまりの小説ばかりを読んできた私の本棚にもたくさんの”恋愛小説”が並んでいます。私の場合、女性作家さんの小説をすべて読み切ることを目標としており、”恋愛小説”をわざわざ選んでいるわけではありません。そうです。ランダムに選んでも自然と一定数を占めるほどにこの世には”恋愛小説”が存在するのです。

    一方で、”恋愛小説”と言ってもその内容は千差万別です。青春の甘酸っぱさの中に存在するものもあれば、しっとりとした大人の恋愛もあります。そして、なるほど、これも恋愛の一つのかたちだね!と少し変わった”恋愛”を見るものもあります。そうです。この世に数多ある”恋愛小説”のかたちはその小説の数だけあるとも言えるのです。

    さてここに、斜線堂有紀さんがはじめてチャレンジした”恋愛小説”があります。ミステリ作家として見せる顔とは異なる斜線堂さんを見るこの作品。なるほど、これも恋愛の一つのかたちだね!という作品群を見るこの作品。そしてそれは、”恋愛小説”の多様性をそこに感じる物語です。
    
    『人気アイドルが、一般人へのストーカー行為で逮捕されたら、どんな結末が待っているだろう』と、『他人の家のベランダに座り込みながら考える』のは主人公の赤羽瑠璃(あかばね るり)。『男の部屋に忍び込んで捕まるなんてあってはいけない』、その一方で『彼は自分の部屋に忍び込んだ咎で推しが引退することになったと知ったらどう思うだろうか』とも考える瑠璃。そんな『瑠璃は意を決して、二階のベランダから跳』び降りながら、『今から四年前。瑠璃が二十四歳の頃』のことを思い出します。
    『アイドルを辞めようとしていた』『二十四歳の赤羽瑠璃』は、『言ってしまえば、ただの地下アイドルで』しかない『東京グレーテル』の『ステージ最後列、ワンフレーズだけのソロが唯一の晴れ舞台』という状況に埋もれていました。『今の赤羽瑠璃を知っている人間なら、そんな時代を信じないかもしれない』という日々の中に『早く辞めなければいけない』と思う瑠璃。そんな中、『めるすけ「赤羽瑠璃は赤じゃなくて黒の方が似合うな」』というツィートを目にした瑠璃は、『運命かもしれない』、『衣装に文句を付けられはしたけれど、めるすけは自分のことを認めてくれている』と思います。そして、『自費で購入したいものがある』とマネージャーに訴え、『黒』の衣装を着ることになります。『衣装替えました!カラーも一新でニューばねるりで』とツィートすると、『めるすけ「ばねるり、衣装替えて正解だな。すごく綺麗だ」』と反応がありました。『たった一人のそんな一言が、死ぬほど愛おしい』と思う瑠璃がライブの後に、『ツイッターのホームを確認』すると、『どの曲も、瑠璃を中心に書いてある』ことに気づきます。そんな中でも『めるすけ』のツィートを意識する瑠璃は、『これほどまでに赤羽瑠璃を見てくれている人間はいなかった。だが、それと同じくらい瑠璃もめるすけのことを見ていた』という思いに満たされていきます。そんな半年後、『東京グレーテルの握手会』が開かれます。『他のメンバーには全く及ばないものの、瑠璃の列にも数人のファンが並んでくれた』のを見てホッとする瑠璃は『その列の先頭に「めるすけ」がい』るのに気づきます。ツィートの公言で彼が来ることを知っていた瑠璃は、事前の服装の情報も合わせて彼を特定します。『いつも応援してます。ライブ楽しみです』、『ありがとう。すごく嬉しい』と会話する二人。『私、頑張るから。ずっと見ててね。一生推してて』と言う瑠璃に、『うん。見てる。応援してる』と返す『めるすけ』。そして、会の終了後『めるすけ「ばねるり握手会終わった。最高だった」、「ばねるり一生推す」』というツィートを見て『一生推してて、と瑠璃は復誦』します。そんな中、『握手会の直後に、転機が訪れ』ます。『東京グレーテルの第一期生が全員卒業することになった』というその転機に際して『同期である第二期生の中でも卒業を表明する人間が出てき』ます。このままでは『東京グレーテルは解散になってもおかしくな』いという状況の中、『二十五歳の赤羽瑠璃は東京グレーテルに残ることを決め』ます。そんな発表に、『めるすけ「東グレ解散はマジで無理だわ。ばねるりは勿論だけど、俺は東グレが好きだったから」、「でもばねるり、アイドルやめないで…」』と反応するツィートに『この世でたった一人でも、ずっと自分のことを愛してくれている人がいる。見つめてくれている人がいる』と思う瑠璃。そんな瑠璃が転機を生かして『東京グレーテルのリーダーに抜擢』されたその先の物語が描かれていきます…という最初の短編〈ミニカーだって一生推してろ〉。まさかのアイドル視点で展開する彼女の苦悩を描く好編でした。

    “斜線堂有紀のはじめての恋愛小説集”と高らかにうたわれるこの作品。斜線堂さんというとやはりミステリ作品という印象が先立つ中に、”恋愛小説”という言葉がとても新鮮に感じられます。五つの短編から構成されたこの作品は、「JUMP j BOOKS編集部公式note」公開の作品に、一編を書き下ろし、一冊の作品として刊行されたという経緯を辿るようです。

    そんなこの作品の興味深い構成の一つが一編目〈ミニカーだって一生推してろ〉に用いられているツィートの多用でしょうか?この短編では、主人公でアイドルの瑠璃が、彼女の『推し』である『めるすけ』のツィートを意識する中に物語が進んでいきます。そんな彼女の転機となったのが『東京グレーテル』のメンバーとなるも『照明すら薄らぼんやりとしか当たらない舞台』で『アイドルを辞めようと』考えていた瑠璃がたまたま目にしたツィートでした。

     『めるすけ「赤羽瑠璃は赤じゃなくて黒の方が似合うな」』

    この『めるすけ』のツィートを起点に瑠璃が衣装を変えたことで風向きに変化が生じていきます。また、そんな起点をくれた『めるすけ』への想いが募ってもいきます。その一方で瑠璃のことを『ばねるり』と書く『めるすけ』のツィートは続きます。

     ・『めるすけ「ばねるりの目が、まるでメテオライトみたいだった。ばねるりは黒が似合う。あの大きな目にも星がある」』

     ・『めるすけ「というか、ばねるりの握手列結構えげつなかったな。みんながばねるりの良さに気づいてくれたみたいで嬉しい」』

     ・『めるすけ「ばねるりがみんなの一番になってほしい」』

     ・『めるすけ「ばねるり一生推す」』

    さらには、

     ・『めるすけ「まさかゴールデンタイムに東グレを見れるとは思わなかった。推し続けてよかった…。残業続きの身体にめちゃくちゃ沁みる」』

     ・『めるすけ「テレビに映ったばねるりのこと、多分一生忘れないと思う」』

    瑠璃を追う『めるすけ』のツィートが作品に織り挟まれるように本文は構成されています。”恋愛小説”にも関わらず、主人公の想いは、自らのことを記すツィートであるという点がこの短編の大きな特徴です。しかもそれは、瑠璃本人宛ではなく、あくまで『めるすけ』が書き記したツィートに過ぎません。そんな物語は、あくまでツィートにこだわった結末を迎えていきます。”恋愛小説”という枠組みの多様性を見るなかなかに興味深い構成の短編だと思いました。

    さて、〈ミニカーだって一生推してろ〉の構成を取り上げる中で、”恋愛小説”の多様性について触れてみましたが、この作品では他の短編でも構成こそ違え、”恋愛小説”ということを意識すればするほど、これって”恋愛小説”なの?という構成の作品が続きます。では、そんな視点も意識しながら各短編をもう少し見てみましょう。本の帯に記載された各短編の”イメージ”も最後に付記します。

     ・〈ミニカーだって一生推してろ〉: 『アイドルを辞めよう』と考えるのは『地下アイドル』『東京グレーテル』の『ステージ最後列、ワンフレーズだけのソロが唯一の晴れ舞台』という主人公の赤羽瑠璃。偶然に見つけた『めるすけ』という人物の『赤じゃなくて黒の方が似合うな』というツィートに転機を見出します。それ以降も『めるすけ』のツィートを意識する瑠璃は『めるすけ』の存在を強く意識し、好きになっていきます…。
      → “ファンをストーカーする地下アイドル”

     ・〈きみの長靴でいいです〉: 『二十八歳の誕生日に贈られたプレゼントはガラスの靴だった』というのは灰羽妃楽姫(はいばね きらき)。『この世界で一番妃楽姫に似合う靴だと思ってる』と『ガラスの靴を差し出』す妻川から靴を受け取る妃楽姫に『お誕生日おめでとう…君に出会えたことは、僕の人生にとって最高の幸福だった』と語る妻川を『愛おしい、と心底思』う妃楽姫ですが、直後、『そんな男の婚約報告を聞』くことに…。
      → “舞踏会 中毒の女”

     ・〈愛について語るときに我々の騙ること〉: 『高校時代に廃部寸前の放送部で出会った私達は、それからずっと仲がよかった』と、春日井園生と泰堂新太のことを語るのは鹿衣鳴花(かごろも めいか)。そんな鳴花は『僕さ、ずっと前から新太のことが好きだったんだ。だから、付き合ってくれない?』という園生の告白を受けるも『私の欲しいものは、三人でいるこの現在だ。私は自分なりに二人ともを愛している』という鳴花は…。
      → “男 × 男 × 女”

     ・〈健康で文化的な最低限度の恋愛〉: 『津籠実郷です。よろしくお願いします!』と手を伸ばされ『美空木絆菜です。よろしくお願いします』と握手を交わしたのは主人公の絆菜(きずな)。『中途採用された新人』の実郷(みさと)の指導を担当することになった絆菜ですが、実郷が絆菜の担当した記事を褒めてくれたことをきっかけに彼のことが気になり、どんどん好きになっていきます。そして、彼の趣味について調べ始める絆菜は…。
      → “男に合わせて山で死にかける女”

     ・〈ささやかだけど、役に立つけど〉: 『初めて放送部の部室で鹿衣鳴花と出会った時に、自分はいつか彼女と付き合うんじゃないかと思った』というのは主人公の春日井園生(かすがい そのお)。泰堂新太を加えて『男二人に女一人の形』で付き合いを続けていく中、『居心地のいい空気の中で、友情を育んでい』た『ツケ』として、『恋愛感情が生まれ』た先の戸惑いを感じています。そして、鳴花と『恋人』になった園生は…。
      → “男 × 男 × 女”

    五つの短編のうち、この作品のために書き下ろされた〈ささやかだけど、役に立つけど〉は、〈愛について語るときに我々の騙ること〉の視点を変えた物語です。園生、新太、そして鳴花という“男 × 男 × 女”の関係性を描く物語は、この最後の書き下ろしによってもう一人の人物から見た三人の視点が加わることで、世界観が大きく広がります。男と女の間に友情が成立するのか?というテーマは、千早茜さん「男ともだち」で作品全体にわたって語られていますが、この作品では、ある意味さらにその先に踏み込みんだ物語が描かれていきます。

     『男女の友情がなかなか難しいこの世界において、私達はどこに出しても恥ずかしくない親友をやっていた』。

    そう、一対一ではなく“男 × 男 × 女”という組み合わせによってその関係性を考える物語がここに展開するのです。この作品を刊行するにあたって、書き下ろしまでされた斜線堂さんが描くその世界。”恋愛小説集”という位置付けのこの作品において一つ大きな読みどころになる作品でもあると思いました。

    また、その他の三編についてもなかなかに興味深い視点を提供してくれます。〈ミニカーだって一生推してろ〉については上記で記したとおりですが、他の二編もそれぞれの読み味があります。〈きみの長靴でいいです〉では、『ガラスの靴』というものを物語中に実際に登場させるのが斬新です。シンデレラの物語であくまでお伽話の中にある『ガラスの靴』。そんなまさかの靴を履くことになる主人公の複雑な胸中を見る物語。それは、シンデレラの物語を背景に思い浮かべれば思い浮かべるほどに奥行きが深くもなっていきます。そして、この作品である今一番の読みどころを提供してくれるのが、〈健康で文化的な最低限度の恋愛〉です。”恋愛小説集”というこの作品の位置付けで最もそれに近いもの、しかし、一方で歪さを見るもの、それがこの短編です。

     『自分というものが全部抜き取られて、恋に埋められてしまった』。

    『中途採用された新人』の指導を担当することになった主人公の絆菜がまさかの思いが止められなくなっていく展開。そんな絆菜の物語は、『親友の遠崎茜が逮捕』されたという事実を背景に見せながら展開するところが絶妙です。

     “恋愛には楽しい部分ももちろんあるけれど、先へ進むと八割方…九割五分、地獄が待っている。でも、感情が大きく動くということは、プラスであろうとマイナスであろうと、人生にとって必要なことだと私は思うんです”

    そんな風におっしゃる斜線堂さんが描く”恋愛小説”の一つのあり方を見るこの作品。そこには、”恋愛”というものの懐の深さを見る物語が描かれていました。

     『愛されたかった。いや、愛されたいのだ。今もすごく』。

    五つの短編が収録されたこの作品。そこには、はじめての”恋愛小説”にチャレンジされた斜線堂さんが見るさまざまな『恋愛』のかたちが描かれていました。なるほど、こういう視点から切り込むのね!と感心するこの作品。『恋愛』現在進行形の人間の思いの強さに圧倒されるこの作品。

    “今後も恋愛小説を書き続けたい、自身の主戦場であるミステリというジャンルとのかつてない融合も試みてみたい”と語る斜線堂さんの”野望”がとても楽しみにもなる、そんな作品でした。

    • さてさてさん
      ハニロビさん、
      いつもありがとうございます。
      コメントもありがとうございました。ブクログの賞も今年で三年目。おかげさまで今年もいただくこ...
      ハニロビさん、
      いつもありがとうございます。
      コメントもありがとうございました。ブクログの賞も今年で三年目。おかげさまで今年もいただくことができました。私は2019年12月までは読書というものをしたことがなかった人間ですので、あの頃の自分が聞いたら意味が理解できないだろうとも思います。取り敢えずは目標の1,000レビューを目指して読んでいきたいと思います。
      こちらこそ、ハニロビさんの感想も楽しみにしております。今後ともよろしくお願いします!
      2024/02/01
    • ハニロビさん
      2019年からお読みになられてこの冊数は素晴らしいです!私は遅読なので冊数は少ないですが…マイペースに読書を続けております。こちらこそ、これ...
      2019年からお読みになられてこの冊数は素晴らしいです!私は遅読なので冊数は少ないですが…マイペースに読書を続けております。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします!何度も失礼いたしました。
      2024/02/02
    • さてさてさん
      ハニロビさん、
      ペースは人それぞれだと思います。自分に合ったペースで長く読書を楽しめるのが良いですよね。
      今後ともどうぞよろしくお願いいたし...
      ハニロビさん、
      ペースは人それぞれだと思います。自分に合ったペースで長く読書を楽しめるのが良いですよね。
      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
      2024/02/02
  • ひねくれた愛情と憂わしげな情感描写がお見事! クセ鬼強な恋愛ストーリー短編集 #愛じゃないならこれは何

    ミステリーに読み疲れたので、ちょっと恋愛小説を手に取りました。とはいえ新進気鋭のミステリー作家、斜線堂先生の作品なので、期待はとまりません。

    5つの短編集ですが、確かにどれも「愛」ですね。どれも偏屈ながらも、登場人物たちの何とも言えない情が伝わってきて、魂が揺さぶられました。

    本作一番素晴らしいと思ったのは、文章の構成や会話のやりとりが滅茶苦茶うまい。これはマジでびびった。会話の中で見え隠れする、情愛、不安、駆け引き、狂気、そして愛する人とのすれ違いが、バッチシ描写されています。

    元々、恋愛をテーマにしたミステリー多く書かれている作者ですが、本気の恋愛小説も高品質だと思いました。

    ■ミニカーだって一生推してろ ★3
    どんだけ素直にならねーんだよw
    愛だとは思うけど、そこを乗り越えないと、愛を育めませんよと言いたい。

    ■きみの長靴でいいです ★4
    切ないながらも、いわゆる女性の悪いところと言われがちな、業が強烈に出ている作品。いいですね、モデルや芸能人はこうでなきゃ。

    ■愛について語るときに我々の騙ること ★5
    ■ささやかだけど、役に立つけど ★5
    同じ登場人物、関係性で綴られる2作品。超大好きですね、ぜひ続きを書いてほしい。
    男女の友情、愛情、三角関係は、いつの時代も美しくも苦しいですね。よくもこのありがちな設定で、ここまで深く書ききりました。素晴らしい。

    ■健康で文化的な最低限度の恋愛 ★3
    主人公が前向きでイイ!読者を応援してくれるような作品。ただこの後の二人がどうなるかは、なんとなく想像できる。

    本格的な恋愛小説を読むのは久しぶりでしたが、素晴らしかったです。続編も期待しています!

  • ほんタメから。
    地獄と帯にあるが、短編5篇の恋愛地獄をたっぷり楽しめました。

    「ミニカーだって一生推してろ」
    いちばん好き。一生推せには思わずにやけてしまいました。わかる(笑)

    「愛について語るときに我々の騙ること」
    男性2人が女々しくて苦笑いでした。今どきなのでしょうか?愛ではないかな?

    「健康で文化的な最低限度の恋愛」
    貫き通せれば嘘も本当に変わるかも?並々ならぬ努力。この愛がいちばん好みかな。自分はここまでできないけど、好きな相手がしてくれたら嬉しいもの。


    「生活を侵食するこれは何だ?嘘だろ、とわざわざ口に出して言ってみる。これが恋だというのなら、今までの全てが茶番になってしまう。」
    恋なんて何かが狂えば、一歩先は地獄なのだ。

    でも恋の天国と地獄時期なんてあったほうが後に振り返った時人生の醍醐味を味わった気になれますよね(*゚∀゚)b
    真っ最中の本人たちは、これは正しい愛じゃないと思っても、じゃあ愛じゃなければこれは何?!と叫んでいる。おもしろかったです!

  • 2022/04/23読了
    #斜線堂有紀作品

    だいぶ拗らせた恋愛オムニバス。
    まさにタイトル通りだ。
    恋は盲目というけれど
    俯瞰で見たら地獄絵図のような恋愛も
    当事者はめちゃ楽しいんだろうな。

    廃遊園地の殺人の文体がすごく良くて
    手にとってみたけど、とても良かった。
    執筆ペースも早い作家さんなので
    これからの作品も注目したい。

  • 斜線堂有紀の恋愛地獄小説集。
    彼女達だけの恋=闘争が始まる…

    彼女が、彼が、好き。自分を見失うほど。
    私も周りも自分じゃ気づかないだけでこんなにも必死なんだろうか…

  • 著者はじめての恋愛小説集なんだけど、どの話も「なんだこれ」ってくらい気持ち抉られる。共感できたというか、ああまさにこれは私だと思ったのが、舞踏会中毒の女と、男に合わせて山で死にかける女の話。

    前者の話は「物語の搾取」「エモい関係」に気づかず勝手に相手も自分と同じ気持ちだろうと思ってた哀れな女性デザイナーの話。自分が彼にとって「物語」や「エモ」の中の存在でしかなく、生身の世界は別な相手で構築されてたって考えると、ただひたすら絶望。

    後者の話は、恋心が暴走してだんだん自分が自分でなくなってしまう女性の話。好きな人に振り向いてもらうために、その人の趣味嗜好に合わせてしまうのは別に悪いことではないと思うんだけど、自分の好きなものまで忘れて、自分がわからなくなっちゃう。「恋は盲目」とはよくいったもの。

  • この小説で「ほんタメ文学賞」を受賞された斜線堂さんが、インタビューで、
    「恋愛はQOLを下げる」とおっしゃっていました。
    なんか分かる気がします…笑
    そんな、恋に落ちたばかりにQOLがガタガタに下がったり、思いもよらない行動をとったりする人たちの短編集です。
    ファンに恋したアイドルや、カリスマデザイナーのキャラを崩せない女性の恋模様は、立場に縛られるがゆえに拗れて行ってる感じが凄まじく、息苦しさが伝わるようでした。
    一番グサっときたのは、好きになった相手と話を合わせるために趣味を寄せていく会社員の話です。
    インドアな女性がサッカー観戦趣味の男性に全力で合わせているところは、まぁまだあってもおかしくないと思うのですが、登山趣味に合わせだすともう大変です。
    両思いになる要素は趣味の一致だけではないと分かりつつも、好きになったらいくらでも相手のいる世界に浸りたくなる、可能性を高めたくなる、という心理は理解できます。
    いい具合でとめられたら、相手に影響されても視野を広げる機会になって理想的ですが、理性で自分のQOLを保つ塩梅が分からなくなるのが、この小説に出てくる恋愛なんだと思いました。

  • 怖いなーっていう恋愛のオムニバス。
    自分を見失ったらもう自分ではなかなか止められないかもしれないね。止めてくれる人が近くにいたとして、その人の声はきっと敵意になってしまう。
    あとあとその恋が叶わなくても、自分のための努力であれば、それで十分報われるのに、無理するから。相手に合わせて虚像を育ててしまうから、相手に報いを求めてしまう。こんなに頑張ってるのだから、もっと見て欲しい。好きになって欲しい。そんなふうに。

    そんな感じのお話と、あとは…男2人と女1人のお話…これも良かった。着地点の正解がもう、わからなかったけど。昔の漫画を思い出した。秋里和国の。
    あれは結局…ううん、これもネタバレに繋がっちゃうのかな。書かないでおこう…。

    どのお話も、主人公のことは嫌いではない。と言うか、そんなに特殊な人じゃない。いつかの私かもしれない。そう思えるような、少しずつ歪んでしまった人たち。

    しかし斜線堂有紀さんは、登場人物の名前の読みが難しい。一回で覚えられないことが多い。
    この方の本は2作目だけど、文章運びも少し独特。
    でも読みやすいです。他の作品も読みたいと思います。

  • 最近、YouTubeで「ほんタメ」という動画にハマっているのですが、MCのあかりんが「恋愛と地獄は近ければ近いほどいい」と言っておりました。
    これはまさに、そんな胸ギュン小説です。

    決してキュンではないしハッピーでもないけれど、確かに「これが愛じゃなければ何なのだ!」としか言い様のないどうしようもなさ。
    恋をするとキラキラ綺麗な自分でいたいし、そういう自分だけ見せたい。相手との時間も自分の時間も大切にできる理想の女性になりたい⋯⋯でも、現実の自分の感情はそうはいかないのだという、それがそれぞれの主人公達の行動に現れているような気がして、とても好きです。

  • ちょっと歪んだ愛の形。好きが行き過ぎてしまうと、その先はどうなってしまうのか。
    それぞれタイプの違う偏愛が5編。
    自分を推してくれるファンを好きになってしまうアイドル。好きになった人に趣味を合わせすぎて疲れ切ってしまうOL,などなど。先が気になるお話しばかり。

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著者プロフィール

2016年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビュー。楽園とは探偵の不在なり』『恋に至る病』『コールミー・バイ・ノーネーム』ほか著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斜線堂有紀の作品

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