最近の投資信託業界では「レバレッジ投信」が人気のようだ。確かに市場が連日激しくアップ・ダウンする状況では、指数の数倍の動きをする投資手法、或いは投資元本の数倍のリスクが取れる投資手法に注目する投資家層がいるのも無理はない。

とは言え、まともなプライベート・バンカーが担当しているような超富裕層がこれらに手を出したという話は聞いたことがない。既に充分に分散されたポートフォリオを持っている超富裕層は今回のような市場動揺もあまり気に掛けない。ならば、資産形成層に最適な商品かと言えば、筆者の個人的な見解としては、違うように感じられる。

筆者も楽天投信投資顧問の社長時代、最初に設定したファンドは「楽天トリプル・ブル・ベア」という日経平均株価の3倍の値動きをする投資信託だった。だからそこに投資家のニーズがある程度存在することは非常に良く分かる。

「元金以上の相場ポジションが作れます」或いは「テコの原理が利用出来ます」というトークで解説されるこの投資手法、ベテランならば使い勝手の良い投資手法かも知れないが、言うまでもなく、実は相当にリスクが高い。それは単に値動きが荒くなるということだけではないのをご存知だろうか。今回は「レバレッジ」の本質について説明する。もちろん、それを承知の上で高い投資収益を求めて購入するのは個人の自由である。最終的な判断は読者の皆さんにお任せしたい。

レバレッジ運用はヘッジファンドから始まった

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(画像=Andrey Popov / shutterstock, ZUU online)

もともとレバレッジを掛けた運用は先物などを多用するヘッジファンドの十八番(おはこ)だった。筆者も2005年から2007年までの3年間足らずではあったが「マーケット・ニュートラル」と呼ばれる、市場の上げ下げには理屈上影響を受けないタイプのヘッジファンドでレバレッジ運用をしていたことがある。

その時、新規の投資家(主として海外の機関投資家)に必ず質問されたのが「グロス(レバレッジのこと)で何%、ネットで何%ぐらいのポジションを取るのか?」という質問だった。基本的には「売りと買いがセット」になる運用なので、その合計値であるグロスに質問が集まるのが当初は不思議だった。ただ事実としてヘッジファンドに投資し慣れている投資家はグロスで200%を超える運用はあまり好まなかった。

それは彼らの経験則として、グロス(つまりレバレッジ比率)で200%以上のポジションを頻繁に作るヘッジファンドに好成績なものが少なかったからだ。200%を超えて攻める理由は、余程市場見通しに自信があるか、決算近くに一発逆転を狙っている時に多いそうだ。

売りポジションが100%、買いポジションが100%だとすると、グロス200%と呼び、売り買いの差引き(ネット)はこの場合ならば理屈上は0%になる。これを売りも買いも200%ずつとしてグロス400%にすると、理屈上はネット0%であっても、ひとたびエラーが出るとその損害は当然大きく、あっという間にファンドを食い尽くしてしまう。何せ元金の4倍のリスクを取っているのだから当然だ。

レバレッジという「魔物」の正体

筆者が楽天投信投資顧問の社長時代、最初に設計開発した3倍のレバレッジ・ファンドは、所謂「ブル・ベア・タイプ」と呼ばれるもので、日経平均株価が上昇すると思えばブル型を、下落すると思えばベア型を投資家が自ら選ぶペアの商品だった。ネット証券が販売の主体だったので、正に投資家自身が相場を読んで、指数の3倍のリスクを取って貰った。運用サイドの使命は限りなく指数の連動率をぴったりと日々3倍に調整すれば良い。

この商品の目論見書には図解と共に投資家に絶対に理解して貰いたい注意書きがついている。それが下記の文章だ。