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30歳、マンションを買う──Vol.7 ヴィンテージ マンションと耐震性

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(30歳)が、ひょんなことから中古マンションを購入した! 勢いで買ってしまったマンション購入にかんするドタバタ劇とは?
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旧耐震でも大丈夫な理由とは

前回、「築浅マンションを無理して購入すべきか? それとも中古ヴィンテージ マンションを購入すべきか?」と書いたが、結論からいうと後者を選択した。

前回:Vol.6 ヴィンテージ マンション探しの旅へ

ひとつは、無理して築浅マンションを購入するのは現実的ではなかったから。それこそ、“爪に火を灯す生活”をしなくてはならない。着たい服や乗りたいクルマをグッと我慢してまでマンションを購入しようとは思わない。

したがって、住まいはほどほどで十分。無理をすれば、都心部のタワーマンションに住めなくはないが、その必要性は感じない。せっかちな身としては、複数のオートロックをくぐり抜けなくてはいけない厳重なセキュリティは億劫だし、エレベーター待ちもイヤ。機械式駐車場の出し入れも、時間を要するので面倒。

どうやら、筆者の生活パターンは、シンプルなつくりのヴィンテージ マンション向きかもしれない。

最新のタワーマンションには、複数基のエレベーターがあるため、待ち時間は短縮されている。とはいえ、上階に行くにはそれなりの時間を要するので、せっかちな筆者には辛い(Photo by Vostok,getty)。

とはいえ、多くの人が気になるのは耐震性や建物の管理状況だろう。

まず耐震性は、「耐震基準法」がひとつの目安。ヴィンテージ マンションといっても、築年数が30年ぐらいの物件であれば「新耐震基準」(1981年6月以降)によって、建てられている。相当な大地震でも倒壊しないという。1995年に発生した阪神淡路大震災時も、新耐震基準で建てられた建物は倒壊しなかったそうだ。

新耐震基準以前の建物は、「旧耐震基準」をもとに建てられている。といっても、制定されたのは1950年だから、あくまで1950年以降の建物だ。もっとも、日本に現存するマンションのほとんどは、1950年以降に建てられている。

旧耐震基準だからといって、耐震強度に問題があるか否かは、きちんと耐震診断を受けないとわからないという(Photo by flyingv43,getty)。

筆者が購入を検討しているマンションは旧耐震基準をもとに建てられている。旧耐震基準の場合、中規模程度の地震(東日本大震災時の関東地方周辺の揺れ)であれば倒壊しないというが、大規模地震にかんする規定はない。つまり、倒壊する可能性もゼロではない。

しかも、購入希望物件は耐震補強を施していないし、耐震診断も受けていないという。不動産ビギナーの筆者は「えっ? 大丈夫??」と、不安が募る。

しかし、担当する東急リバブルの担当者は、「ヴィンテージ マンションの場合、耐震診断および耐震補強を受けてない物件は意外と多いですよ」と、述べる。

理由を訊いて、納得した。

Vol.5 駐車場は運次第

あえて耐震診断はおこないません

「耐震診断にはそれなりの費用を要します。診断によって、耐震不足を指摘された場合、耐震補強には多額の費用がかかるうえ、新たな柱の設置などによって景観が損なわれる可能性もあります」

調べると、耐震診断の費用は約数百万円。耐震補強の費用は、マンション1戸あたり300〜1000万円要するという。したがって、マンションによっては数億円かかる。ヴィンテージ マンションのなかで、耐震補強分の修繕費を確保しているところは少ないという。水まわりの修繕などと異なり、はるかに費用が嵩むからだ。

続けて、「耐震補強を施す費用が捻出できない場合、“耐震性に難あり”のマンションとなってしまい価値が下がってしまいます。したがって、あえて耐震診断を受けないマンションが多いのです」

なるほど。ほとんどのヴィンテージ マンションが耐震診断を受けていないのも納得である。

Vol.4 今すぐには住めない!?

もちろん、だからといってすべての建物が大地震に耐えられないわけでは決してない。担当者も「東日本大震災時にびくともしなかったヴィンテージ マンションは、あまり問題ないかと思います。もちろん、“絶対に大丈夫”という保証はありませんが」と、述べる。

周囲に訊いたところ意見はバラバラだった。「東日本大震災より大きな地震が発生したらヤバイじゃん!」「耐震補強されたマンションにすれば?」「私も古いマンションに住んでいるけれど問題ないよ」などなど。

うーん、どうすべきか…。大手道路会社に在籍していた祖父に訊くと、「うーん、高度経済成長期の建物に使われたコンクリートは、質のばらつきが大きいので注意が必要だよ」と、悩ましい表情で話す。

粗悪なコンクリートで作られてしまうと、耐震性にも影響するという(Photo by gyro,getty)

が、施工会社の大手ゼネコン名を伝えると、一変。「あそこの施工なら問題ないでしょう」と、表情が明るくなった。

理由を訊くと、「建設当時、あの会社は業界トップクラスの技術力と施工実績を誇っていたからね」と、話す。もちろん、“100%問題ナシ”とは言い切れないというが、それでも、粗悪なつくりである可能性は低いという。

築年数以外、あらゆる部分が筆者の理想に近いヴィンテージ マンションゆえ、購入したい気持ちは強い。ネガティブな意見もあるけれど、ここは担当者と祖父の意見を信じたいと思う。

とはいえ、耐震性とともに建物の管理状況も気になる。この部分はいかに?

文・稲垣邦康(GQ)

【過去記事:30歳、マンションを買う】

Vol.1 なぜ今、この時期に購入!?

Vol.2 マンションはバブル! 暴落覚悟は必須!?

Vol.3 新古物件という選択肢

Vol.4 今すぐには住めない!?

Vol.5 駐車場は運次第

Vol.6 ヴィンテージ マンション探しの旅へ