【1月26日 東方新報】長い期間をかけてターゲットの信頼を得て、もうけ話を持ちかけて最後に大金をだましとる「殺豚盤」詐欺が中国で横行している。「殺豚盤」とは、「豚にエサを与えて太らせてから殺す」という意味。とりわけ最近は、疑似恋愛関係に持ち込んだ「ロマンス型」詐欺の手口が目立っている。

 中国西部の青海省(Qinghai)では昨年、ミャンマーを拠点に通信ネットワーク詐欺をしていたグループ23人が摘発された。青海省で初めて発覚した国境をまたいだ詐欺事件。詐欺グループは計1670万元(約3億円)をだまし取ったとして、懲役10年6月から4年2月の判決を受けた。

 判決によると、詐欺グループは手当たり次第に通信アプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」で友達申請し、「知人と間違って申請してしまいました」と相手に説明。その上で「あなたの書き込みを拝見したら、すてきな写真がいっぱいですね。○○には行かれましたか?」などとチャットのやりとりを始めていった。ターゲットが女性であれば、「背が高くてハンサムな富裕層の男性」、相手が男性なら「若くて美人で事業を手がけている女性」とキャラを設定。家族構成や子どものころのあだ名、学校の思い出、小さなトラウマ(心的外傷)体験、実家の庭にある木の種類まで詳細なプロフィルの資料も作っていた。そして「まるでドラマのような偶然。これが運命の出会い?」と感じた男女がだまされていくことになる。

 詐欺グループはチャットのやりとりをする中、「この前、投資ファンドでまた100万元(約1795万円)もうけた」「特別な情報とルートがあるから失敗しない」とさりげなく話題を織り込む。そして相手から「私もその投資話、興味がある」と言い出したとき、本格的な仕掛けが始まる。

 貯金志向の日本と比べ、中国は投資で株や不動産に大金をつぎ込む人は多い。さらに中国ではほとんどの市民が微信を通じた電子マネーで日常の支払いをしており、だまされている人は詐欺グループに電子マネーを送信。最初は「投資した金が倍になったよ。簡単でしょ?」と送金を受け、これを何度か繰り返される。そこで詐欺グループは「今度はめったにない大きなチャンスが飛び込んで来た。大金を投資した方がいい」と持ちかける。

 被害者が大金を送金すると、ここで詐欺グループは「裏ルートでもうけていたことが警察にバレた。君を守るため、もう連絡を取らない」もしくは「投資が失敗した。申し訳なくて、あなたともう連絡できない」などと言ってウィーチャットを解除した。

 昨年11月には中国東北部の遼寧省(Liaoning)瀋陽市(Shenyang)で、同様の手口で計220万元(約3949万円)をだまし取った容疑で11人が逮捕された。今月は西部の四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で計300万元(約5385万円)を稼いだ容疑者37人が逮捕された。ただ、だまされても警察に届けていない人もいるとみられる。

 詐欺の被害者は大金を失った経済的な損失だけでなく、「自分がバカだから見抜けなかった」という精神的な傷を負いやすい。識者は「被害者の周囲の人は『あなたにも問題があった』などと言わないでほしい。罰せられるべきは、人の誠意を悪用する人間です」と呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News