プレミアムなハイブリッドSUV──新型レクサスNX350h試乗記

フルモデルチェンジしたレクサスのSUVである「NX」のハイブリッド・モデルである「NX350h」に小川フミオが試乗した。先に試乗したガソリンモデルとの違いとは?
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Hiromitsu Yasui

気持ちの良い走り

レクサスの新型「NX」は、”電動化”が進んだ点でも話題になっている。2021年10月に発売された2代目には、プラグ・イン・ハイブリッドの「NX450h+」と、ストロングハイブリッドの「NX350h」が同時に発売された。

「ここからレクサス(車)の新時代」とはレクサスの弁。つまりレクサスが電動化に力を入れていくそのスタートラインが、この2代目NXという。

【主要諸元(Fスポーツ AWD)】全長×全幅×全高:4660×1865×1660mm、ホイールベース2690mm、車両重量1820kg、乗車定員5名、エンジン2487cc直列4気筒DOHCガソリン(190ps/6000rpm、243Nm/4300〜4500rpm)+モーター(フロント134kW/270Nm、リア40kW/121Nm)、トランスミッション電気式無段変速機、駆動方式4WD、タイヤサイズ235/50R20。

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試乗車のブレーキキャリパーはオプションのオレンジだった(4万4000円)。

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じっさいに、NX350hは、ハイブリッドに慣れたひとには運転しやすく、いっぽう、ハイブリッドが初めてというひとには扱いやすいモデルだ。電動化を進めるというレクサスの現在進行形が味わえるという意味でも、試してみてはいかがだろう?

NX350hは、2487cc直列4気筒ガソリン・エンジンに、電気モーターを組合せる。前輪駆動と、後輪用にもモーターを搭載した全輪駆動と2つの駆動方式が用意されている。ここで乗ったのは、後者の「E-Four」というシステムをもった、かつスポーティな仕立ての「NX350h AWD Fスポーツ」だ。

三眼フルLEDヘッドランプは18万400円のオプション。

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エンジンの最高出力は140kW(190ps)、最大トルクは243Nm。モーターのトルクはフロントが270Nm、リアが121Nmに達する。出足は実にスムーズで、すっと発進し、そののちエンジンが動き、2つの動力源がバトンの受け渡しをしながら加速していく。ボディの全長が従来とくらべ20mm伸びて4660mmとなり、重量も1830kgあるが、期待いじょうに速度の伸びはよい。

なによりいいのは、シャシー性能だ。もうすこしかんたんにいうと、ハンドルを操作し、カーブとかを走り抜けていくときの気持ちよさだ。サスペンション・システムはしっかりと車体を支えてくれ、少々高めの速度でカーブをこなしていくのがなにより気持ちよい。

2019年に発表したコンセプトカー「LF-30 Electrified」で発表した、LEXUSのクルマづくりに根付いている人間中心の思想をさらに進化させた新たなコックピットデザインの考え方「Tazuna Concept」に基づき、コックピットを設計したという。人が馬を操る際に使う「手綱」に着想を得て、ステアリング・スイッチとヘッドアップディスプレイを高度に連携させ、視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく、運転に集中しながらナビゲーションやオーディオ、ドライブモードセレクトなど、各種機能の操作・設定が出来るという。

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全輪駆動車では、カーブを気持ちよく曲がれるように心を砕いた、とはレクサスインターナショナルのシャシー開発担当者の言。動力配分は、前輪対後輪で、100対0から20対80まで、路面や運転のしかたでつねに変化する。後輪にもしっかりトルクがいくように設定され「カーブでは後輪駆動的な楽しさを味わっていただけたら」とは開発者。じっさいに、そのとおりの仕上がりだ。

きついカーブを曲がっていくとき、NX350hであれば、姿勢を崩さず、足をしっかりふんばり、さっとノーズの向きを変え、出口に向かって後ろ脚(後輪)で蹴って、いっきに疾走する……といったかんじである。

スカッフプレートはFスポーツ専用デザイン。

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ガソリン車に近い運転感覚

ガソリン車の「NX250」と比較すると、NX350hの車重は100kg以上重い。しかも、電池だったり、モーターだったりをボディ各所に配置しなくてはならないのも、デメリットといえる。しかし、運転した感覚は、ガソリン車に驚くほど近い。

重さはあまり感じず、ハンドリングを楽しませるために開発されたような印象は、ハイブリッドでも同様。本当は、冒頭に書いたとおり“電動化”が見るべきポイントなのだけれど、ハンドリングのよさ、つまり運転しての楽しさで、興味あるひとには、ぜひ乗ってみて、と勧めたい。

エクステリアには、20インチ専用アルミホイール、バンパーロアのスポイラー、存在感のあるフロントサイドガーニッシュなどを装備。インテリアには、専用デザインのステアリング・ホイールにくわえ、フロントシート、アルミペダル、シフトレバーなどを装備する。さらに、最新のAVS(Adaptive Variable Suspension system)を標準装備し、操縦安定性・乗り心地を高次元で両立したという。

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NX350hは、高効率な2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンと高出力モーターを組み合わせる。電子制御4WDシステムの「E-Four」は、前後駆動力配分を100:0から20:80で可変する。

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シフトレバーは、シフトバイワイヤ機能用にデザインを変更。しっとりとした触り心地や、握りやすく操作しやすい形状を追求したという。

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シャシーもサスペンション・システムも、基本的にはガソリンモデルとおなじだ。ただしサスペンション・システムのスプリングやダンパーやスタビライザーといった主要部品は専用のチューニングが施されているという。

そうしたなかにあって、“The NX(NXならでは)”と呼びたいぐらい、一貫した印象を作りあげるのはたいへんだろう。

Fスポーツ専用のアルミ製スポーツペダル&フットレスト。

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車室内に侵入するノイズを低減するために車両各部の吸音材、遮音材の最適配置にくわえて、ボディの気密性を高めたという。フロントドアガラスには、高遮音タイプを採用した。エンジンフードには、レクサス初採用のツインロック構造によって、空気の乱れによるエンジンフードの振動を抑制し、静粛性向上に寄与するという。

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シャシーの設計や溶接や接着、さらに補強の入れ方などに開発陣の面目躍如たるものを感じる。NX250などとも共通する、ハブボルトによるホイールの締結も、効果的なようだ。

高剛性化と、いわゆるバネ下の軽量化(約0.7kg減)により、「すっきりとした手応えのある操舵フィールと質感の高い乗り心地に貢献」と、レクサスが謳うのもわかる気がする。

Fスポーツ専用デザインのTFT液晶メーター。

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ヘッドアップディスプレイは、周辺の道路状況を確認できる視界を保った上で、表示する情報とレイアウトが異なる3つのモードを用意。運転シーンに合わせてドライバー自らモードを切り替えられる。

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ステアリング・ホイールはFスポーツ専用デザイン。

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ドライブモードセレクトスイッチはダイアル式。FスポーツはEco/Normal/Sport S/Sport S+/Customから選べる。

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凝ったデザイン

エクステリアも凝っている。「ボディのカーブのつけかたなど、生産技術の限界」と、アッパーボディ(車体)の担当者が教えてくれた。カーブがきれいについて、まるで卵のような内部からみなぎる力を感じさせる。

試乗のとき、太陽の下でみていると、ボディの面がつくりだす明暗が美しく、これもあたらしいNXのおおいなる魅力だと、私には感じられた。ここで紹介している「Fスポーツ」は、20インチ専用アルミホイール、バンパーロアのスポイラーフロントサイドガーニッシュなどを備え、よりスポーティだ。このスポーティさとボディの美しさが実にマッチしているので、違和感がない。

Fスポーツ専用の本革スポーツシート。スポーツ走行時にはしっかりと身体をサポートする性能を追求。スポーティさを高めたという。

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リアシートヒーターは、後席6:4分割可倒式シート(電動格納機能付き)とセットで7万7000円のオプション。

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リアシート用エアコン吹き出し口付き。

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インテリアも、コンセプトが明快だ。とりわけFスポーツでは、スポーティな作りこみを徹底。たとえば、ステアリング・ホイールは、スポーツ走行により適したデザインにしたという。

専用シートは「Toyota Technical Center Shimoyama」と呼ぶメーカーのテストコースでの検証を繰り返し、ドライバーの身体によりフィットする形状を追求したという。

ラゲッジルーム容量は、通常時520リッター。リアシートのバックレストを倒さなくても、9.5インチゴルフバッグなら3個、スーツケースなら約140リッターと約90リッターを1個ずつ積み込める。

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ラゲッジルームフロア下の小物入れ。

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ラゲッジルームサイドのアクセサリーコンセントは4万4000円のオプション。

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リアシートのバックレストをすべて倒すとラゲッジルーム容量は1411リッターに拡大する。

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ハイブリッドモデルならではの好燃費も見逃せない。NX350h AWD Fスポーツの燃費は、リッターあたり19.9km(WLTC)と発表されている。前輪駆動モデルでは20km台に向上する。

価格は、ここで乗ったNX350h AWD Fスポーツは635万円(前輪駆動のFスポーツだと608万円)。前輪駆動のベース車(NX350h)が520万円からなので、比較的買いやすい価格設定だ。