伝統のセダン、魅力は褪せない──新型BMW 530e Luxury Edition Joy+試乗記

BMWのPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデル「530e」に小川フミオが試乗した。
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Hiromitsu Yasui

新しい“上質”

世のなかには、地味だけれどいいものがある。自動車で思いつくのは、BMWの「5シリーズ」だ。日本では、SUV全盛だけに、存在感がすこし希薄になったかもしれないが、じつはとてもいいセダンである。欧州ではベストセラーだ。

2020年秋にマイナーチェンジを受けたプラグ・イン・ハイブリッド「530e」は、パワフルでぜいたくなセダンを欲しいひとに勧めたい。

【主要諸元】全長×全幅×全高=4975×1870×1485mm、ホイールベース2975mm、車両重量1910kg、乗車定員5名、エンジン1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(184ps/5000rpm、300Nm/1350〜4000rpm)+モーター(80kW/265Nm)、トランスミッション8AT、駆動方式RWD、タイヤサイズ245/45R18、価格815万円(OP含まず)。

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18インチのタイヤはピレリ社製。タイヤはランフラット・タイプ。足まわりには、電子制御サスペンション・システムが標準装備。

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530eは全長4975mmと余裕あるサイズのボディに、1998cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンに電気モーターのパワープラント搭載。システムのトータル出力は215kWで、最大トルクは420Nm。後輪駆動だ。

発進時はモーターの駆動力をフルに使うため、1910kgの車重をまったく感じさせず発進し、さらに速度があがっていくときに、一瞬たりとも力が途切れるような感覚はない。非常にスムーズだ。知らずに乗ると4気筒エンジン搭載車とは気づかない。これまでにはない、新しい“上質”である。

普通充電用の給電口は、ボディサイド左側の前方にある。

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モーターで発進し、最大54kmまで可能なバッテリー駆動のモーターで走り、そのまま充電モードなしに走り続けると、エンジンにバトンタッチする。

4気筒エンジンも“さすがBMW"と言いたいスムーズな回転フィールと、痛快なサウンドを聴かせてくれるので、いってみれば、ひと粒で二度おいしい感覚が楽しめる。

試乗車のダッシュボードは、オプションのレザー張り(6万8000円)。ルーフのアルカンターラ張りもオプションだ(21万9000円)。

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素晴らしい走り

私は、ずっと5シリーズの大ファンで、いまのモデルも、ポルトガルの発表会からこのかた、折りに触れてドライブを楽しませてもらってきた。パリからル・マンまで走って24時間レースを観戦したのも、いまとなってはいい思い出だ。

5シリーズがいいのは、作りのよさ。ボディサイズは比較的ゆったりしているものの、エンジンのよさを存分に味わわせてくれるハンドリングを持っている2面性も、また他社の商品では見つからない魅力だった。

ハイブリッド時のWLTCモード燃費は12.8km。

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フロントに搭載するエンジンは1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(184ps/5000rpm、300Nm/1350〜4000rpm)。

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5シリーズに最初乗ったのは、1980年代初頭で、それは初代だった。そのあとすぐ2代目にも乗って、以来、上記のような魅力が薄らぐことがない。

今回の試乗では、東京から蓼科まで走った。路面からのフィードバックをしっかり伝えてくれて、気持ちの良い感覚のステアリング・ホイールと、アクセルペダルの踏み込みに対する反応のよさは、さすが、という感じ。

エンジンやモーター、バッテリーの状況はインフォテインメント用モニターで確認出来る。

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メーターはフルデジタルで、ナビゲーションマップも表示出来る。

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乗り心地は、車重も手伝って、重厚で快適だ。どんな路面でも、私の姿勢はフラットに保たれ、かつステアリング・ホイールに強いキックバックがくることもない。

蓼科では山道も走行したものの、スムーズで、やはり“すばらしい”と感じた。

満充電時の航続可能距離はWLTCモードで54km。

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トランスミッションは8AT。シフトレバーは握りやすい形状だ。

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設定した充電量を維持する「バッテリーコントロール」モードも用意。

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インテリアは5シリーズのもうひとつの魅力。2975mmのロングホイールベースの恩恵もあって、前後席ともに、広々と感じられる。

かつ、試乗車には「レザーフィニッシュダッシュボード」や、BMWインディビジュアルによるソフトな感触の「メリノレザー」シートが装備されていて、ぜいたくだった。5シリーズの世界観と合うのだ。

ステアリング・ホイールのヒーター機構は4万1000円。瞬時にあたたまるので、寒い時期に嬉しい。

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充実の先進機能

2020年のマイナーチェンジで、キドニーグリルがさらにワイドになったうえ、ヘッドランプにはL字型のLEDライトが組み込まれた。リアでは、コンビネーションランプの造型が立体的になっている。

「オーケイ、ビーエムダブリュー」という発話で起動する対話型コマンド「BMWインテリジェントパーソナルアシスタント」搭載。ナビゲーション・システムの目的地をスマートフォンから転送することもできるし、電話のデバイスが車両のキーがわりとなって、ドアの施錠と解錠、さらにエンジン始動までおこなえる。これも、改良で採用された機能だ。

フロントシートは電動調整式。ホールド性は高く、かつ疲れにくい形状だった。

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harman/kardon サラウンド・サウンド・システム(464W、16スピーカー、9チャンネル・サラウンド)は6万8000円のオプション。

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実際、試すと音声認識機能の高さに驚く。「●●へ行きたい」と呼びかけると、ほぼ完璧に希望の目的地を検索してくれる。

3シリーズで先に導入された「ハンズオフ機能つき渋滞運転支援機能」が標準装備。3眼カメラとレーダーによる検知と高性能プロセッサーを組み合わせている。高速道路などにおいて、一定の条件下であれば、ステアリング・ホイールを握っていなくても、車線を守りながら先行車を追従走行してくれるので便利だ。

センターアームレスト付きのリアシートは、ヒーター機構付き。

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リアドアのサンシェード(手動式)は標準装備。

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ドライバビリティの高い、つまり運転して楽しいクルマにとって、運転支援システムは、ちょっと相容れない機能のように思えないこともない。せっかくの楽しみを奪われてしまうような気がするからだ。

でも、えんえんと高速道路を走るような機会が多いひとなら、重宝もするだろう。技術とは、転ばぬ先の杖でもあるから。

ラゲッジルーム容量は410リッター。ガソリンモデルにくらべ約120リッター少ないものの、実用上不満はない。

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ラゲッジルーム・フロアの一部は高さを調整できる。

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リアシートのバックレストは分割可倒式。スキー板などの長尺物を積むのに便利だ。

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今回試乗した「530e Edition Joy+」はディーゼルやプラグ・イン・ハイブリッドなど、燃費を中心とした環境対応車に設定された“お買い得”仕様。価格は815万円だ。

530eでは上に「Luxury」も設定されている。いっぽう、スポーティなサスペンションを組み込んだ「530e M Sport Edition Joy+」は840万円だ。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)