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進化したFWDプレミアム・セダン──新型レクサスES300hバージョンL試乗記

マイナーチェンジを受けた新型レクサス「ES300hバージョンL」に小川フミオが試乗した。
レクサス LEXUS ES ウィンダム toyota トヨタ セダン
Hiromitsu Yasui

小さな改良、大きな進化

セダンというのはいいものだ。クルマにことさらトレンドを求めず、”王道”といえるセダンを好むひとには、改良された新型レクサス「ES」はいいだろう。

そもそもおとなっぽい、品のよさを身上とするアッパークラスのセダンだったESが、さらにクオリティをあげて、8月26日に販売開始された。

レクサス LEXUS ES ウィンダム toyota トヨタ セダン
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今回乗ったのは「ES300hバージョンL」は、しっとりした乗り味を好むひと向けのセダンで、2487cc直列4気筒ガソリンエンジンとモーターを使ったハイブリッドシステムを搭載している。

このパワーユニットとサスペンションとステアリング、どれもバランスがよい。

【主要諸元】全長×全幅×全高=4975×1865×1445mm、ホイールベース2870mm、車両重量1720kg、乗車定員5名、エンジン2487cc直列4気筒DOHCガソリン(178ps/5700rpm、221Nm/3600〜5200rpm)+モーター(88kW/202Nm)、トランスミッションCVT、駆動方式FWD、タイヤサイズ235/45R18。

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バージョンL専用デザインの18インチ・アルミホイール。

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ホイールベースがそもそも2870mmもあるのにくわえ、スペース効率にすぐれる前輪駆動の強みを活かしただけあって、室内は前後席ともスペースはたっぷり。

2018年に発売された現在のESは、フラッグシップの「LS」があるだけに、やや存在感が薄いものの、それでも、おなじ前輪駆動主体のセダンであるアウディ「A6」を35mm上まわる4975mmの全長をもつボディといい、内容的にはみるべきものがある。

鏡面のかわりにデジタルカメラを使った「デジタルアウターミラー」は22万円のオプション。

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レクサスのラインナップ中、ESにのみ搭載される「デジタルアウターミラー」は、カメラ性能が向上し、よりノイズ感の少ないクリアな映像によって、視認性が高まった。

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今回のマイナーチェンジでは、リアサスペンションのメンバーブレースの剛性を高め、高速道路でのレーンチェンジの際などの操縦安定性を向上させたのがセリングポイントなっている。

じっさいにドライブすると、従来とくらべ、低速から高速まで広い範囲の速度域での操縦性があきらかに向上していると感じられた。これまでに最新のレクサス車やトヨタ車のところでも触れているとおり、いってみれば“ほんのすこし”という範囲での操作領域でコントロール性がうんと向上しているのだ。

インテリア・トリムにはウォールナット素材も選べるようになった。

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アクセルペダルの踏みこみ量を、ほんのすこし戻したときの速度の落ち方とか、切り込んだステアリング・ホイールをほんのすこし戻したときの操舵感覚とか、そういう領域で、運転者のからだと車両とがつながっているように感じられる。

ブレーキでも、電子制御ブレーキシステムの制御定数を変更し、ブレーキのコントロール性を向上させたのが、今回のESの特徴のひとつとしてあげられている。くわえて、ブレーキペダルのリンク構成内のブッシュ取り付け方法を見直したことで、ペダルの横方向の剛性感を上げたそうだ。

クルマは、ほんのすこし手を入れるだけで、驚くほどフィールが向上するもの。レクサスというと、LSやISのテコ入れが(すくなくとも個人的には)印象に残っていたものの、こうして、ESにきちんと改良が加えられているのは、やはり喜ばしい。

大幅改良を受けた新型は、フロントグリルのメッシュパターンやヘッドライト、アルミホイールのデザインが新しい。また、配光を緻密に制御する「ブレードスキャンアダプティブハイビームシステム」がオプション設定され、ボディカラーには、シルバー系の「ソニックイリジウム」(写真)とグレー系の「ソニッククロム」が追加された。

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意外とスポーティ

ESのバージョンLはどちらかというと後席重視仕様であるものの、だからといってドライバーズシートが退屈というわけではない。1970年代のジャガーなど英国の大型車を運転したときの感覚がこうだったかなぁ、と、思い出した。

細かいところでいうと、超をつけたくなるほど複雑な断面形状が連続するステアリング・ホイールを握ったときの感覚や、右か左に操舵して車両が動くときの反応など、ていねいにできていて「ますます熟成したなぁ」という感を強くした。

2.5リッター直列4気筒ガソリン・エンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットは変わらない。リアサスペンションのメンバーブレースは、1枚板から2枚の板をあわせた構造に変更され、ねじりや曲げに対する剛性を高めた、という。

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2.5リッター直列4気筒ガソリン・エンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットは改良前と変わらない。

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トランスミッションは電気式無段変速機。ギアセレクターはオーソドックスな形状だ。

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ハイブリッド・ユニットは、1720kgの車重をまったく意識させないパワーだ。鋭い加速が欲しいときは、円筒形のドライブモードセレクターをまわして「スポーツ」を選択するとよい。エンジンが活発にまわって、アクセルペダルを介して右足と車両がつながっているように、トルクが思うようにコントロールできるのだ。

ハイブリッドなので、ついついエコモードを意識してしまうものの、ES300hバージョンLはスポーツモードで操縦すると、さきに触れたリアサスペンションの見直しをはじめ、おそらく各部が細かく微調整できていて、その素性のよさがビンビンと伝わってくるかんじだ。

ステアリング・ホイールは電動調整式。

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フルカラーのインフォメーションディスプレイを組み合わせたメーター。

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「目標としたのは、ESの持つ上質さを深化させるとともに新たな価値を付加することです。静粛性と乗り心地をより一層向上させるとともに、ステアリング操作に対してドライバーの意図した通りにクルマが動くリニアリティを追求」したというLexus Internationalの青木哲哉チーフエンジニアの言葉が、最初に配られたプレスリリースに掲載されている。

試乗していて、なるほどなぁ、と、思った。

インフォテインメント用モニターがタッチディスプレイ化され、モニター位置をドライバー側に約100mm近づけるとともに約5°傾けて、操作性を高めた。

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落ち着いたインテリア

さらにあたらしいESでは、フロントグリルのメッシュの意匠が変更された。また、一部車種に設定される3眼ランプにはハイビーム走行中も対向車や先行車を幻惑しない「ブレードスキャン・アダプティブハイビームシステム」を採用している。上下幅も薄くなり、観た目の精悍さをねらったという。

安全装備としては、単眼カメラとミリ波レーダーの性能向上が謳われる。昼間の自転車や夜間の歩行者も検知可能な「プリクラッシュセーフティ」の対応領域を拡大し、交差点右折前に前方から来る対向直進車や、右左折時に前方から来る横断歩行者も検知可能になったそうだ。

電子制御ブレーキシステムは、制御を見直してコントロール性を向上したとのこと。細かいところではペダル・パッドの形状が変わったが、これは足裏との接触範囲を拡大するためという。

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シート表皮はレザー。フロントはヒーターおよびベンチレーション機構付き。

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その効果については、今回の試乗では判断できなかったものの、オプション装備の「デジタルアウターミラー」(22万円)と「デジタルインナーミラー」(11万円)の性能は、大きく上がったように感じた。

画素数が増えて、映し出されるイメージがよりクリアになった。アウディ「e-tron」などの輸入車が採用するデジタルミラーより、いまのESは上をいっていると思う。

バージョンLのリアシートは電動リクライニング機構付き。

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リアシート用ヒーターやリクライニング機構などのスウィッチは、センターアームレストにある。

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リアのドアウインドウ用サンシェード(手動)は標準。

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試乗車はしっとりした手ざわりのレザー張りで、表皮のカラーは今回新設定された「モーブ」(灰色がかった紫色)で、地味派手とでもいうべき、なかなかよい色だった。

色も素材も、全体に落ち着く室内のつくりである。このあたりの見極めは、レクサスのデザイナーの面目躍如たるものがあるかもしれない。

マークレビンソンのプレミアムサラウンドサウンドシステムは24万3100円のオプション。

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電動ガラスサンルーフは標準。

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ラゲッジルーム容量は443リッター。

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ラゲッジルームのフロア下にある小物入れ。

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ESは、2.5リッターハイブリッドに前輪駆動システムの「ES300h」のみの設定。

試乗車は「ES300hバージョンL」(715万円)だ。グレードはその下にベースグレード「ES300h」(599万円)と、スポーティな「ES300h Fスポーツ」(651万円)がある。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)