残されたつぶやき (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041128053

作品紹介・あらすじ

「関西弁って深刻さが薄れる。スマホのメモ機能に『悩みメモ』というのをつけていて、そこへ書く悩みを関西弁にすることを思いついた」「2021年の極めつけはNHK『あさイチ』のプレミアムトークに出演したこと。その数日前に自宅の階段から落ちて左足を負傷、服や靴を新調したのにサンダルで出演というガッカリな事態に」昨年、突然この世を旅立った著者が2008年から21年までの13年間にSNSでつぶやいた日記や、多くの新聞や雑誌に寄稿した書籍未収録のものを中心にまとめた珠玉のエッセイ集。著者や家族による自然や花の写真と共に、私たちの愛した山本文緒が、オールカラーの文庫で蘇る。

感想・レビュー・書評

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  • この頃、腹痛と倦怠感と体の不調を訴えておられる。病院にかかっていても、癌はなかなか見つからないんだなと感じる。
    無人島のふたりでも感じていたが、山本さんは日記のような単純な文章でも、人を惹き付ける。グイグイ引き込まれる。次が読みたいと思え、飽きない。
    これから先、山本文緒さんの続きが読めないことが、残念でならない。

  • “体の具合がどこも悪くなくて、親しい人もみんなとりあえず健康で、さしせまった悩みもない。

    空は青くて、日が暮れたら眠くなってきて、今日も本が読めずに終わりそう。

    辛かった日のことはあれこれよく覚えているのに、こんなうつくしい一日のことはきっと忘れちゃうんだからと思うから書いておく”


    2021年10月にガンで亡くなられた。
    すごく大好きな作家さんで
    たぶん全作品読んでいる
    鬱を患ったりして
    一時期小説を書かれてなくて
    久しぶりに出された
    長編「自転しながら公転する」は
    一晩で読んでしまった。
    山本文緒さんが帰ってきた!
    って、ものすごく嬉しくて
    読み終わった時、ニコニコしてた。

    そんな山本文緒さんが
    いろんなところに書いてらした
    日記やエッセイなどが集められたこの本

    日記を書いても、SNSでつぶやいても
    やっぱり山本文緒さんだなーという
    美しくて、繊細で、鋭い視線が
    とてもよくて
    あっという間に読み終わってしまったけど
    やっぱり余韻が残る

    この後に控えている
    「無人島のふたり」を読みたいような
    読みたく無いような気持ちでいる

  • 書籍未収録のエッセイ、SNSのつぶやきをまとめたエッセイ集。タイトル通りの「残されたつぶやき」だ。
    二十代~三十代、夢中になって追いかけた山本文緒作品。若かりし頃の自分を支えてくれた作家であり、長い闘病を経て復活してくれたときは本当に嬉しかった。
    だから、訃報を知ったときは涙が止まらず、早すぎる別れにまだ心が追い付かない。今回の出版が嬉しかったと同時に、文緒さんの不在を受け止められるだろうか。泣かずに読めるだろうかという戸惑いもあった。
    結局、ほぼ一気読み。久々のエッセイが嬉しく、文緒節がとにかく心地よかった。SNS初期の日記は気ままに書き散らした感があって、紙媒体で読むとまた違うなと変な戸惑いを感じてしまったが、後半のnoteの日記は(自転公転の販促活動やあさイチ出演裏話など)読みごたえあった。
    何より、巻末の著作リストが嬉しい。再読したい作品がいくつもある。
    しみじみとしながらも、在りし日の文緒さんの他愛のない日常の記録に和まされる。読めてよかったと間違いなく思う。

  • 「再婚生活」「無人島のふたり」に続いてこの作品を読んだ。

    この中では、前の夫のことも少し書かれていた。

    断食道場へ行ったことも、ピアノを習ったことも書いてあり、思ったことを行動にすることがすごいなぁと思った。

    もっと読みたかったなぁ…。
    山本さんの日記やつぶやき。

  • 山本文緒さん、うつ病を克服してから亡くなった昨年までに発表されたエッセイ集。
    mixi、Facebook、Twitter、noteのものが含まれます。
    一番最後の中央公論文芸賞受賞の言葉は、
    ほぼ亡くなる直前に書かれたものだと思います。

    最後に著作リストと年表があったので、
    頭の中が整理できました。

    闘病は本当に大変だったと思う。
    でもこうして7冊のエッセイを読むことで
    大して売れなかった小説家がだんだん引っ張りだこになっていく様子が見え、作家として大成功したこと、
    また彼女にとって二度目の結婚はとても幸せなものだったのだと知りました。

    世の中にうつ病の人はたくさんいると聞きます。
    若い人の死因一位は自殺だそうです。
    山本文緒さんも闘病中は死にたかったのですが、
    それを乗り越え、その後は楽しく暮らし
    58歳で亡くなるときには「死にたくない」「別れたくない」と思っているんです。
    私も健康と命を大切にしていきたい。

  • 本当に逝ってしまったのだなあ…と落胆の溜息で頁を閉じる。

    私と同世代の山本文緒さんの早すぎるご逝去をまだまだ咀嚼できずにいる。

    紡がれた日常の言葉をまるで傍らに座りながら聴くように読むことができる1冊だった。SNSの文章も含めた書籍未収録のエッセイ集。

    冒頭よりグッと心を掴まれる。

    うつ病で入院した時から、もうすぐ5年です。今も睡眠障害などは少し残っていますが、驚くほど快復しました。とはいえ、この病気はスッキリ完治するということはありません。「心の風邪」とたとえられることが多いけれど、一度患った人は、うつになりやすい体質を一生抱えていくことになる。でも、食べ物や運動で血圧や血糖値をコントロールするように、この体質とつきあっていくことはできる。早寝早起き、食事、運動…。なかなか難しいことですが、気をつけていきたいと思っています。

    以上7頁より抜粋。

    隣の芝生はいつも青くて、他人は皆生き生きと楽しそうに充実して過ごしている様子が世に溢れる。当然焦る。自分を責める。「なぜ私ばかり」「私がいけないから」と。

    自分の目の前に困難が立ちはだかったとき、どうすれば乗り越えられるのか、心の持ちようや具体的解決策がネットを含め自己啓発本の流行が示すよう花盛りだ。

    こうすれば怒りが抑えられる。
    あんなやり方で哀しみは乗り越えられる。
    ここに援助を求めれば、何らかの助けになる。
    具体的目標を掲げとにかく頑張る。

    それはそうなのだけれども…。
    生きていれば誰にでも濃淡有れど山もあるし谷もある。

    自分で如何ともできない他者や外的環境。
    「こうありたい」「こうでなければ」という理想の自分に手が届かない自身へのもどかしさや自責の念。
    そして世間体。外から見た自分の価値や姿。

    思うに任せぬ自分、世の中の儘ならなさ満載の日常。
    情報過多の時代「幸せでなければならない症候群」流行中。

    そんな時代に「何をやってもなかなかうまくいくことがなかった」とおっしゃる山本さんが世間に認められた執筆作品をご自身のうつ病によって全く書けなくなった哀しみを想像する。

    うつ病から快復され、ご自身に折り合いを見つけた(ように感じる)山本文緒さんの力がするりと抜けた言葉が温かい。

    「あさイチ」に出演され、嬉しいことを嬉しいと無邪気に筆を走らせた気持ちを想像する。
    何かやろうと動き始めると、視界に入ったものあれもこれも、頭に浮かんだ事柄が次々と現れて、全部途中で終わってしまう様子が目に浮かぶ。

    人となりが身近に感じられ一層作品を読みたくなる。
    もやもやを抱えながら、自責の念に身もだえする人間像がピカイチ! 山本さんの作品に出逢えてよかった。

  • 私の一番好きな作家で一昨年なくなった山本文緒さんのSNSで呟かれた日記等をまとめたエッセイでした。

    山本さんのエッセイは大好きですが、SNSで呟かれたことは後に出版するつもりもなかったと思うので、やはり出版を前提にちゃんと書かれたエッセイに比べるとほんの少し物足りなさもあるのは仕方ないといった感じです。

    でも、やはり山本さんらしさは全開です。私は勝手に山本さんと自分はものの考え方や感じ方が似ていて、いわゆる波長が合うと思っていて、読んでいて「そうそう!」とか「私もそう!」ということばかりでした。

    飼われていた猫を看取られて、ずっと一緒に寝ていた猫がベッドの上り下りができなくなり、居間に布団を敷いて最期まで一緒に寝ていたというエピソードが泣けました。
    表紙の猫は山本さんの猫でしょうね。

    苦しい闘病の末に亡くなられたのだろうなと思うと私も辛くで、亡くなるまでの経緯は知りたくなかったのですが、山本さんの年表が載っていて、すい臓癌が発覚し余命4〜6か月と宣告され、最後の長編「自転しながら公転する」が島清恋愛文学賞を受賞した翌月に抗がん剤治療をやめ、自宅での緩和治療に専念し、余命宣告から6ヶ月後に亡くなられたことを知りました。最期まで山本さんらしいと思いました。

    もし生きておられたら、これからどんな小説やエッセイを書かれたのだろう?もっと読みたかったと残念でたまりません。

  • 山本文緒が好きだ。
    だから彼女の没後この本が出た時、読みたいような、読みたくないような複雑な気分になった。

    読んでよかった。

    Twitterやnoteを追ってこなかったから、エッセイにもなっていないこういう普通の文章を読むのは新鮮だった。
    大げさだけど、山本文緒に支えられた時期があった、と確かに思う。

    もういないんだな、と再確認した本だった。

  • 断食(ファスティング)の話が印象に残っている。私はできないな〜断食してあの感じの著者いろいろすごいな〜。

  • 山本文緒さん独特の表現や言葉が沢山詰まっていた。たわいない日常を飾らず、傍で語ってくれているような温かみを感じた。文緒さんの作品には必ず哀しみのエッセンスがある。ずっと愛読者だ。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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