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「スクショはメモ代わり」「リンクもスクロールも面倒くさい」若者のスクショ文化の理由と実態

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
若者はスクショの使い方が大人世代と異なっている(写真:アフロ)

最近、20代のアシスタントが参考資料をスクショで送ってきて困るというツイートが話題となった。若者はスクショ、つまりスクリーンショットを好んで使用するという話は定期的に話題になる。改めて、実態と理由について見ていきたい。

何でも「スクショ」する若者たち

若者世代は何でもスクショする。ある女子高生は、友人に情報を送る際にもスクショを送るし、親に「これがほしい」とAmazonの商品情報を送る際にもスクショだ。母親に「いちいち調べるのが大変だから、商品ページのURLを送ってくれたらいいのに」と言われたらしいが、「でもスクショは便利だから」とあまりピンとこない様子だ。

その女子高生は、友だちとTwitterで会話するときに、LINEのやり取りのスクショを引用として使うことがある。「Twitterはリツイートとか簡単だけど、LINEにはそういう機能がないから」という。SNSにはシェアボタンがあり、ワンタップでシェアできるようになっている。同様に、LINEではスクショをシェアするのだ。

逆に、「LINEですべてやり取りすると(スクショが回されるリスクがあって)怖い」という話も聞く。「回されるとやばい話をするときは、会って話すようにしてるかな」。

スクショはメモ、「いいね」は後で読み返す

「メモ代わりにスクショすることは多い」とその女子高生は語る。彼女はあまり検索はせず、普段からほしい情報をためておく。気になった情報が載っているサイトや投稿などを見たら、とにかくスクショをするのだ。「買い物前にスクショリストを見返して、その中から買うものを決めたりする」。

若者のそのような生態に合わせたメディアも登場している。ミレニアル世代向けのメディア「BuzzFeedKawaii」は、Twitterアカウントの体裁をとっており、画像2つで一つの記事となっている。文章も画像化しており、スマホで見ると最適に見えるようになっているのだ。通常、メディアのTwitterアカウントはURLで記事などへ誘導するものだが、BuzzFeedKawaiiはTwitterアカウント自体がメディアのため投稿にはリンクがないのだ。

取材したところ、「若者はURLをタップするのも面倒くさいし、スクロールも面倒くさいため、このようなTwitterに最適化したメディアにした」という。記事内容は一つのツイート内の画像で収め、どうしても入らない場合はURL付きもあるが7割のツイートにはURLがつかない。

一般的に、ツイートへの「いいね」は「良いと思う」という意味であり、リツイートは「みんなに広く伝えたい」という意味だ。ところが若者世代は必ずしもそうではない。後で見返すために、ブックマークのような意味で「いいね」やリツイートをするため、自分のツイートにも「いいね」やリツイートすることがあるほどだ。

ライブ配信をシェアする際も、スクショは活躍する。いいシーンをスクショを撮って配信者にアピールしたり、SNSでシェアをしたりもする。「配信者が一番かわいく写っているスクショを選ぶ。雰囲気も伝わるし、見たい気持ちになる」。大人世代とスクショの使い方がかなり違うことがわかるのではないだろうか。

ギガも減らず見てほしいところのみ示せる

では、なぜ若者たちはスクショをするのだろうか。端的に言えば、「一番簡単だから」ということのようだ。彼らにとって、スクショはURLのコピーよりも手間がかからずにできる行為だ。

先程の「URLのタップやスクロールが面倒くさい」という真意は、URLをタップする手間が面倒だし、別のページが開いてギガが減るのも嫌。スクロールしてすべて読まなければならないのは面倒だから、ポイントだけ教えてほしいということだろう。ギガとはGB(ギガバイト)の略で、契約しているデータ通信量を超えると通信速度制限がかかるため、ギガが減ることは若者の最大の心配事の一つだ。

ライブドアニュースでも「ざっくり言うと」という3行要約が用意されているが、同様に相手が読んでほしいところだけをピンポイントで読みたい欲求があるのだ。

若者でも、「じっくり読んでほしいときはURLでシェアすることもある。ポイントだけ分かればいいときはスクショ」という子がいた。このように使い分けられている若者もいるのだ。

大人世代には不思議なことが多いが、若者のスクショ文化には合理的な側面がある。従来の形に必ずしもとらわれることなく、若者に合わせて使い分けてみると思わぬ発見があるかもしれない。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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