近づくと読めなくなる不思議なひらがな 大学生が考えた『読める文字』の境目

    近づくと読めない、不思議なひらがなの制作者に話を聞きました。


    これ、実は文字なんです。あなたは読めますか?

    これに文字数を増やしてみると...

    読めましたか?

    そう、「ひらがな」です!

    制作者が「近づくと読めなくなる」とTwitterに投稿したところ、このひらがなが話題になりました。

    『かたちかな』というこの作品。京都市立芸術大学の卒業制作としてつくられました。

    『かたちかな』制作のきっかけとは。

    大学4年生のぃぃさんは、このテーマで卒業制作を作ろうと思ったきっかけを、こう語ります。

    「日々、何気なく文字を見て、意味を読み取っているけれど、よく見ると文字というのは抽象的な線や形の集まりで、ふと『文字を読めること』自体がとても不思議だと感じました」

    「その感覚を文字のデザインで人に伝えられたらと思い、『すぐにゲシュタルト崩壊するフォント』を作ろうと思ったのが始まりです」

    ゲシュタルト崩壊とは、よく知っているはずのひらがなや漢字を見続けていると、何の文字か分からなくなってしまう現象のことです。

    近づくと読めなくなる仕組みは...?

    「一度に視界に入る文字数が多いと字形の推測がしやすいので『読める』、文字数が少ないと抽象度が上がるので『読めない』、という仕組みを使っています」

    どの線をなくすとその文字と認識できなくなるのか、どの形がその文字をその文字たらしめているのか。そのルールを探る作業を繰り返して制作しました。

    線や形の集まりであることを強調するために、「直線」「円」「半円」だけで構成するという制限で作っているといいます。


    「読める/読めないの境目や、かたちの省略」について考えた。

    ぃぃさんは、文字を「絵や写真のように、文化や言語が違う人が見ても意味が伝わるもの」ではなく「線や形が集まって一定のルールを満たしたときに、その形を知っている人だけが『読める』もの」と捉えました。

    「そのルールは、学校で教わったものだったり、生活の中でいろんな文字に触れる経験を通してできていくもので、人によっても、見る状況によっても少しずつ違います」

    「どこまで形を省略して読める文字を作れるか挑戦することで、『読める文字』と『読めない形』の境目の曖昧さが面白く伝わるのではないかと考えました」

    大変だったのは...


    「ひらがなは『あ』から『ん』まで一文字一文字に個性があり、どの形を抽出したら読めるのか探る作業に想像以上に時間がかかりました」

    「どのくらい『近づくと読めなくなる』効果が出るのか制作途中はいまいち確信が持てませんでした。うまくいくか不安なまま作業をしていたのがとても苦しかったです」

    ぃぃさんの投稿は2月21日現在、2500以上リツイート、1.4万いいねされています。大きな反響を受け、こうコメントをくれました。

    「普段、文字やデザインに興味のない人にも面白がってもらえるものを作りたいとは考えていました。ですが、これほど多くの人から反応をもらえると思っていませんでした。驚いていますが、とても嬉しいです」