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田中知之が選ぶ極私的・秋のひと皿!──食通8人の大箱中華からミシュラン、隠れ家レストランまで

フードジャーナリストにミュージシャン、映画監督からモデルまで、食通8人が"食欲の秋"に食べたい一品をレコメンド。トレンドに左右されないド定番は、この8品で決まり!今回は田中知之編。

田中知之(FPM) DJ/プロデューサーとして活躍するほか、本業の活動に伴い培った各地の食情報も発信し、ファン多数。11/1に開業する『渋谷スクランブルスクエア東棟』の屋内展望回廊「SKY GALLERY」併設の「Paradise Lounge」の音楽を監修。

〈中国茶房8 六本木店〉の北京ダック

眠らない、眠らせない中国料理店

年中無休、24時間営業、いついかなるシチュエーションでも我々を甘んじて受け容れてくれる巨大なキャパシティ、圧倒的なコスト・パフォーマンス、中国人料理人による本場そのままの調理、水餃子からサソリ料理などのゲテモノまでをカバーする豊富過ぎるメニュー、留学生アルバイト店員によるフラットでクールな接客……。この店は、もはや中国がそのまま六本木にやってきて根を下ろしていると理解した方が手っ取り早いかもしれない(しかも恵比寿/新宿/赤坂/麻布十番/青山/心斎橋/難波という日本の名だたる繁華街にもブレずに出店し続けている。これを大陸からの脅威と感じている私は考え過ぎなのだろうか?)。

夜毎に浮かび上がるチープなネオンサイン、男性器や女性器をインテリアに配した昭和の秘宝館的なビザールな内装、多種多様な人種が集うカオスな様相は、もはや映画『ブレードランナー』の世界だ。この秋は、夜更けに1人で店を訪れ、外套も脱がずにおもむろに席に着き、しかめっ面で北京ダック(一羽丸ごと2,888円!!)をオーダーしたい。気分はハリソン・フォードだ。焼き上がりを待ちつつ、安い紹興酒で亡きルドガー・ハウワーに献杯するとしよう。

「本窯焼き北京ダック」 ¥2,888。一羽丸ごと本窯でつややかに焼き上げた鴨は、ゲストの目の前で皮つき肉に切り分けられる。甘口の味噌ダレ・豆板醤ダレ・レモンはちみつダレの3種類のタレと野菜とともに包餅で巻いて味わっている間に、残りの肉はスパイシーな炒めもの、骨はガラスープとなって再登場。まさに余すところなく味わい尽くす寸法で、この価格とは!

中国茶房8 六本木店

東京都港区西麻布

3-2-13 コートアネックス六本木2F

TEL:03-5414-5708

営業時間:24時間

お休み:無休

Photos 菊池陽一郎 Yoichiro Kikuhi、岡本 寿 Hisashi Okamoto

Editor 小石原はるか Haruka Koishihara