イケアが渋谷に新業態「IKEA for Business」を開いた理由。中小企業や個人事業者がターゲット

IKEA for Business

渋谷駅前にオープンしたIKEAの法人・ビジネスオーナー向けプランニングスペース。

撮影:大塚淳史

家具小売り大手IKEA(イケア)の日本法人イケア・ジャパンは2月20日、日本で初めて、法人・ビジネスオーナー向けの会員制プランニングルーム「IKEA for Business」を、東京・渋谷にオープンした。

イケアは日本でこれまで郊外の倉庫型大型店舗を中心に展開していた。渋谷の店舗では、中小企業、自営業や個人事業主を対象にしていく。

中小企業向けのソリューションサービス

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イケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長。

撮影:大塚淳史

「IKEA for Business」は東京・山手線の渋谷駅から徒歩約3分の場所にある。店舗の総面積は455平米と、これまでの店舗に比べると小さめの都市型店舗だ。

ターゲットユーザーも倉庫型店舗とは明確に異なり、中小企業、自営業、個人事業主やフリーランスといったビジネス層をターゲットにしているという。

IKEA for Businessと同名のサービスに入会すると(入会金・年会費無料)、ビジネス専任のアドバイザーに相談でき(予約制・有料)、イケアの商品を提案するサービスを受けられる。

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美容室を想定したセット。説明する担当者の左にあるカーゴは日本オリジナルだという。

撮影:大塚淳史

イケアがなぜビジネス向けソリューションサービスを始めるのか。イケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長(兼チーフ・サスティナビリティー・オフィサー)は、狙いを次のように語った。

日本ではまったく新しい業態です。渋谷への出店は、我々にとってユニークな取り組み。プランニングスペース自体は他都市にも出店していますが、渋谷のように中小企業に焦点を当てたものは世界初です」

さらに、日本特有の狭いオフィス環境での仕事や生活への工夫も背景にある、と続ける。

「東京で会社を持つ人たちは、非常に小さなスペースでやらなければいけません。(東京都には)50万社ほどの中小企業がありますが、彼らにクリエイティブな提案をしていきたい。私たちは、ホームファニシング(家具を含めたホームファッション)の知見に基づき、何年も経験を積んでいて、知識を持っています」(ライス社長)

IT企業の集積地・渋谷にはビジネスチャンスがある?

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イケア・ジャパンの菊池武嗣ストアマネジャー。

撮影:大塚淳史

中小企業や個人事業主などをターゲットにした狙いについて、菊池武嗣ストアマネジャーはこう説明する。

「渋谷はIT企業の集積地であり、スタートアップ企業も多くある。昨今のテレワーク増加の動きに対応し、自宅作業をする場合にも、コンパクトに仕事するためのソリューションが提案できる。(渋谷には)小売店、レストラン、美容室、カフェがたくさんある。個人のビジネスオーナーがより快適な職場を作り、お客様を迎える場所を快適にしてもらいたいと思っている」(菊池ストアマネジャー)

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オフィスや店舗用途に使える机や椅子が店舗内に並ぶIKEA for Businessの店内。

撮影:大塚淳史

渋谷の店舗は駅前にあるとはいえ、やや路地裏にあたる場所にあり、ひっそりとしたたたずまい。これもビジネス向けだからなのだろう。店舗内は、企業向け、個人事業主向けの提案を明確に打ち出している。

シェアオフィス、スモールオフィスを想定した机や椅子の展示、カフェ、美容室、小売店を想定した見本部屋がそれぞれあり、イケアの家具などが散りばめられている。さらには、Airbnbといった民泊を想定した見本部屋まであった。

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民泊を想定したルームセット。

撮影:大塚淳史

ライス社長はIKEA For Businessについて、出店計画などの具体的な言及は避けつつも「今後、東京の他のエリアや大阪にも進出していきたい」と明かした。イケア・ジャパンはここ数年、業績が低迷している。2017年8月期に赤字に転落し、2019年8月期も売上高こそ前年比微増の844億7600万円だが、純損失8億8500万円と3期連続で赤字が続く。

小規模な都市型店舗は、イケアにとって「2020年のチャレンジ」といえる新業態だ。都心で家具を見て注文できるメリットがある反面、いわば「受け身」のショールーム形式でどこまでビジネス顧客に刺さる営業ができるのかは、未知数な部分も多い。

4月25日に国内初の都市型店舗として原宿に路面店でオープンする一般向け店舗「IKEA原宿」と合わせて、新業態の今後の進展は気になるところだ。

(文、写真・大塚淳史)

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