ドライバーをやる気にするインテリア
カタチはSUVでありながら、スポーツカーのようなドライブフィールを味わいたい。そんなぜいたくな要求を持つひとに勧められるのが、アウディ「RS Q3スポーツバック」だ。
SUVであるQ3スポーツバックをベースに、アウディ・スポーツがチューンナップした「RS」モデルのバリエーション。走る・曲がる・止まる、という3つの領域すべてで卓越した感覚が味わえる。
294kW(400ps)の最高出力をもつ2480cc直列5気筒ガソリンターボ・エンジンにフルタイム4WDの「クワトロ」を組み合せた。その事実だけでも、かなりの性能ぶりが期待できる。2020年12月に日本で発表されていらい、人気が高いのも、よくわかる。
からだをしっかり支えてくれる専用スポーツシートに、太いグリップ径の革巻きステアリング・ホイール。さらに試乗車はレーシング・マシンのような人工スウェードがシート地に使われているだけでなく、そこにはハニカム模様のパターン、と、審美性も高い。
見ているだけで気分が昂揚してくる。それには、ブラックを基調としながら、レッドの挿し色を使った、ビジュアル的に凝った内装の仕上げもひと役買っている。
ドライバ−のやる気を盛り立ててくれつつ、エクスクルーシブ性も高い。アウディは、スポーティとぜいたく性をじつにうまく両立させているのだ。
ボディを意識させない走り
最大トルクは480Nmもあり、それが1950rpmから発生する。比較的軽めのアクセルペダルをすこし踏み込んだだけで、1730kgの車重をまったく意識させないフットワークを見せ、弾丸のように加速する。そして加速は止まることがない。
高速道路を走っていくときは、みごとな安定性。1980年に「クワトロ」を発表していらい、アウディが重要なセリングポイントとしてきた高速移動のための最善の手段という価値を、2021年のいま、あらためて意識した。
そして曲がりも、このクルマの大きな価値だ。ワインディングロードではカーブの大きさにかかわりなく、ドライバ−の思いどおりに走らせられる。
全長4505mm、全高1555mmのボディはどちらかというと、いわゆる“トールボーイ型”であるものの、ステアリング・ホイールをわずかに動かすだけで、見えないレールの上を走る高速ジェットコースターのように、路面に張り付くようにカーブを曲がっていく。
踏み方に敏感に反応するブレーキと、踏めば即座にというかんじで、大きなトルクを出すエンジンのコンビネーションは魅力だ。カーブから出て、つぎのカーブをめざして加速していき、そしてブレーキで速度を適度に落として、というドライブが、スポーツのように楽しめる。
ベースになったQ3スポーツバックも、加速も曲がりもいいクルマで、印象に残る走りが楽しめる。その美点を最大限に拡大してレーシングスポーツを連想させるRSというスポーツモデルに仕立てた腕前はみごとだ。
ダミーではありません
試乗車には「RSダンピングコントロールサスペンション」(オプション)と「フロント・セラミックブレーキ」(同)がそなわっていた。サーキットを走らないひとならセラミックブレーキはいらないかもしれない。でもダンピングを電子制御してくれる前者の装備はあったほうがよい。
スプリングは硬めのいっぽう、ダンピングを最適にコントロールしてくれるため、高速では快適。ワインディングロードでは、上記のとおり、スポーツカーのようなハンドリングが実現している。
バンパー一体型の深いエアダムには、大きな開口部が空けられ、凝ったパターンのグリルがはめこまれている。往々にして、世のスポーツモデルは、そこを見るとダミーということがある。つまり、空気取り入れ口かなと思うとふさがっていたりする。
RS Q3スポーツバックの場合、大きなバンパーのエアインテークはちゃんと空いていて、奥にはターボチャージャー冷却用だろうかインタークーラーが設置されているのが見える。くわえて、ブレーキ冷却用の空気もここから取り込むのだろう。
3D(3次元)とは、数多くのスピーカーを車内各所に立体的に配置しているから。室内の反響などを利用しつつ、最良と考えられる音場(いい音楽を楽しめる場)を提供するためのシステムである。
音楽のジャンルを問わず、再生のクオリティはホームオーディオに比肩する。そして、さまざまな方向から乗員を包みこむように聞こえるサウンドによって、家庭とはまた異なるリスニング環境が出来ているのだ。いい音のあるドライブの楽しさもまた格別である。