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アメ車の最新コンパクトSUVは侮れない──新型ジープ・コンパス試乗記

ビッグマイナーチェンジを受けたジープのコンパクトSUV「コンパス」に小川フミオが試乗した。
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Hiromitsu Yasui

進化のポイント

都会派にも使いやすいサイズで、価格もこなれているジープのコンパクトのSUVが「コンパス」である。内外装と安全支援システムがグレードアップされた新型が、6月2日に日本でも発売された。トルクたっぷりのエンジンと安心感の高いステアリングフィールなど、デザインを含めて、日欧のSUVとはまたひと味ちがうキャラクターが印象的だ。

コンパスは、全長4420mmと、日本の市街地でも扱いやすい。「グランド・チェロキー」や「チェロキー」と共通の「7スロットグリル」と呼ぶフロントグリルが目をひく。前輪駆動仕様も用意され、乗り手を選ばない。コンパスには、トヨタの「RAV4」や「ハリアー」から乗り換える人もそれなりにいるという。なるほど、それもわかる気がした。

【主要諸元(リミテッド)】全長×全幅×全高=4420×1810×1640mm、ホイールベース2635mm、車両重量1600kg、乗車定員5名、エンジン2359cc直列4気筒DOHCガソリン(175ps/6400rpm、229Nm/3900rpm)、トランスミッション9AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ225/55R18、価格435万円(OP含まず)。

Hiromitsu Yasui

リミテッドのアルミホイールは18インチ。

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内装はインパネまわりのデザインを一新。ダッシュボード中央には10.1インチ(スポーツは8.4インチ)のタッチディスプレイを設置した。

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右ハンドル、2.4リッター直列4気筒ガソリン・エンジンに、前輪駆動は6段オートマチックを、オンデマンド型全輪駆動は9段オートマチックを組み合わせる。今回のマイナーチェンジによって、外装は、従来から要望の多かったというフルLEDヘッドランプが全車標準装備となった。内装は、ダッシュボードを中心にデザインが大きく変わった。10.1インチのタッチスクリーンが設置され、Apple CarPlayAndroid Autoが使える。

運転支援システムも機能が追加された。死角を走る隣の車線の車両との接触を避けるためのアクティブレーンマネジメントシステムを、ジープとして初採用したのだ。隣の車線に近づくと、強い力によるステアリング操作で押し戻される。

タッチディスプレイはスマートフォンとの連携機能付き。Apple CarPlayなどにも対応する。

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Google Mapも表示出来る。なお、新型コンパスには純正ナビゲーション・システムはオプションでも設定されない。

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リミテッドは360°カメラを標準搭載する。

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リミテッドのオーディオはアルパインのプレミアムサウンドシステム(9スピーカー)。

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輸入元のFCAジャパンでは、新型コンパスで新しいユーザー層を積極的に取り込みたいとする。日本におけるSUV市場で、もっとも人気の高いコンパクトSUVセグメントは,

従来、「レネゲード」が奮闘していただけに、コンパスでも、というわけなのだ。

リミテッドのシート表皮はレザー。フロントは電動調整式だ。

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リアシートはセンターアームレスト付き。

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リアシート用エアコン吹き出し口付き。

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リアシート用エアコン吹き出し口の下部には115Vのアクセサリー電源アウトレットが付く。

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スクエアな形状のラゲッジルーム。

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リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。

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ラゲッジルームのフロア下にはスペアタイヤがある。

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リミテッドのテールゲートは電動開閉式。

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アメ車らしい乗り味

コンパスには独自の魅力がある。229Nmの最大トルクを持つエンジンは、軽くアクセル・ペダルを踏んだだけで、地面を力強くつかんで進んでいくようなフィールだ。しゅんしゅんっと上までまわるキャラクターのエンジンでないものの、けっして遅くはない。

もうひとつ、日欧のSUVにはないキャラクターがある。高速を含めて、走らせているとき、長めのサスペンションストロークでもって、ボディがゆったりと上下動する独自の乗り味が味わえる点だ。

リミテッドの駆動方式は4WDのみ。最小回転半径は5.7m。

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搭載するエンジンは2359cc直列4気筒DOHCガソリン(175ps/6400rpm、229Nm/3900rpm)。

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4WDモデルのトランスミッションは9AT。FWD(前輪駆動)モデルは6ATになる。

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ステアリングフィールはしっかりとしていて、カーブを走るのも得意科目である。乗り心地は路面の凹凸をよく吸収して、乗員にとって不快な揺れもなく、終始快適である。

全輪駆動の「リミテッド」のドライブトレインは、オンデマンド型だ。通常は前輪のみ駆動していて、路面状況やタイヤの負荷によって後輪へトルクが送られる。なので、今回の試乗では、ほとんど前輪駆動で走り、カーブの脱出などで強めにアクセルペダルを踏みこんだときのみ、全輪駆動になったはずだ。

4WDのリミテッドのWLTCモード燃費は11.5km/L。

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運転支援系のスウィッチが付いたステアリング・ホイール。

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リミテッドのメーターは、10.25インチのフルデジタルになる。

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従来のコンパスでは60%強のユーザーが、全輪駆動を選んでいたという。メーカー発表の燃費は、全輪駆動車がリッター11.5kmであるのに対して、前輪駆動車は11.8km(ともにWLTC)と、大きな違いはない。オンデマンド型4WDシステムが効率よく作動している証だろう。

前輪駆動との直接的な比較が出来ないのでなんともいえないものの、前後輪の駆動力をしっかり使って安定して走れるという点で全輪駆動はいいかもしれない。

走行モードの切り替えスウィッチは、ギアセレクターの横にある。

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ギアセレクターの下には、4WDのモード切り替えや、ヒルディセントコントロールのスウィッチがある。

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ただし、車重の差は110kgで、価格差も小さくない。前輪駆動の「ロンジチュード」との価格差は50万円。ベースモデルの「スポーツ」では89万円に差が開くから、前輪駆動仕様というのも、じゅうぶんにあり得る選択だ。

悪路走破性を含めたオールマイティな操縦性をとるか。軽快な前輪駆動をとるか。選ぶ楽しみを与えてくれるモデルである。

そういえば、リミテッドに搭載されていたアルパインの純正オーディオは、低音が強く出る設定で、ビートの効いたサウンドの再生が得意だった。繊細なピアノジャズよりヒップホップ。それもこのクルマのキャラクターの一部と感じられる。明るい気分にしてくれる米国製の最新コンパクトSUVであるのだ。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)