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あのスーパーSUVは“万能選手”に生まれ変わっていた

ランボルギーニの超高性能SUV「ウルス」をつかった日本縦断イベント「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」に大谷達也が参加した。ステアリングを握った青森県〜宮城県の模様をリポートする。
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ウルスで日本各地を走ったワケ

ランボルギーニ・ジャパンが主催した「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」は、2台のウルスが日本を縦断する全行程6500kmの冒険ツアー。私も12名のドライバーのひとりとしてこのチャレンジに参加したので、その模様をリポートしよう。

そもそも「UNLOCK ANY ROAD」はウルスが発表された当時のスローガンで、「どんな道も切り拓く」という本来の意味から転じて「困難に負けないチャレンジ精神」を指しているという。

ボディサイドには「UNLOCK ANY ROAD」の専用デカール。

以前、GQ JAPANでもリポートしたとおり、ランボルギーニ・ジャパンは「ランボルギーニ・ジーロ・ジャパン」という顧客向けのツーリング・イベントを毎年開催していたが、昨年と今年は新型コロナウィルス感染症の影響で実施できず、これに代わって「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」がおこなわれたという経緯がある。また、「新型コロナウィルス感染症によって様々な苦難に直面している皆さんを、このイベント通じて少しでも励ますことができたら……」という思いも込められているようだ。

4月26日に福岡を出発したツアーは、中国地方、近畿地方を抜けて北陸地方を北上。東北地方を通過した後に北海道で折り返し、再び東北地方、関東と巡って5月23日に六本木のランボルギーニ・ザ・ラウンジ東京でゴールした。

ウルスはランボルギーニ初のSUV。

私が担当したのは、このうちの23日目と24日目にあたる青森県八戸市から宮城県仙台市にまで至るルート。この区間には、ツアー中唯一となるサーキット走行が含まれており、ある意味でイベントのハイライトというべきセクションを担当させてもらったことになる。

ウルスで走った青森〜宮城

前日に新幹線で八戸入りした私は、翌朝、宿泊したホテルのエントランスで前任の『モーターマガジン』の千葉知充編集長からウルスのステアリングと、バトン代わりになるクマのぬいぐるみを預かった。それと同時に、運営側からランボルギーニのジャケットマスクを手渡される。しかも、ウルスに乗るのは私ひとりで、車内の消毒も行き届いている様子。感染症対策は、このツアーを通じてもっとも重要なテーマのひとつだったといっていい。

前任の『モーターマガジン』の千葉知充編集長(右)からバトン代わりのクマのぬいぐるみを預かった筆者。

私が主にドライブするのは、2台あるウルスのうち、イエローにペイントされた1台。これは、ウルスに初めて設定された専用カスタマイズオプション“ウルス・パール・カプシュール”を装備したモデルで、エクステリアにはいくつものエアロパーツが取り付けられているほか、アルカンターラ張りのシートはグレーとイエローのツートンというスペシャルな仕様。

ジャロ・インティ(イエロー)と呼ばれる高光沢4層パールカラーのペイントは、アランチョ・ボレアリス(オレンジ)、ヴェルデ・マンティス(グリーン)とともに設定されている3色のうちのひとつで、シャープなウルスのボディラインを一層際立たせる効果があるように思えた。

岩手県宮古市の浄土ヶ浜にて。ボディは全長×全幅×全高:5112mm×2016mm×1638mm。

八戸を出発した当初は幸いにも快晴。自然豊かな三陸海岸の一般道を2時間ほど走ると、最初の目的地である岩手県宮古市の浄土ヶ浜に到着した。なんでも、天和年間(1681〜1683)の高僧が「さながら極楽浄土のごとし」と、感嘆したことからこの名がついたそうだけれども、実際に訪れてみると、聞きしに勝る絶景だった。白い砂浜と険しい岩々、それに緑濃い木々と透明度の高いエメラルドグリーンの海が織りなす景色は、白砂青松をまさに現実のもののようにした美しさ。三陸のこういう自然をじっくりと眺めたことのなかった私は、まるで別世界を訪れたような感動を味わったのである。

それとともに印象深かったのは、こうした三陸の美しい海岸線のところどころに見える、コンクリート製の背の高い防波堤だった。これが東日本大震災を機に建設されたものであるのは明らか。遠くからたまさか訪れた私にとっては醜悪な建造物にしか思えなかったが、この土地に暮らす人々にとっては安心をもたらす守護神のような存在なのか。それとも古くから慣れ親しんだ海と日々の生活を分断する憎き存在なのか。クルマで通り過ぎるだけの私に、その答えが得られるはずもなかった。

かつてあった「LM002」の要素を盛り込んだエクステリア。

次に訪れたのは松島福浦橋。松島と聞けば松尾芭蕉が詠んだといわれたりもする「松島や ああ松島や 松島や」をすぐに思い出す低俗な私だが、これがデタラメであることはネットでちょっと調べればすぐにわかるとおり。

そんなこととは裏腹に、縁結びで知られる福浦橋周辺もまたしても絶景だった。ただし、私たちが訪れた時間帯は空が雲で覆い尽くされていたのが、いささか残念ではあった。

松島福浦橋にて。ウルスは2018年にデビュー。

松島福浦橋で撮影を終えたわれわれは、仙台市内からクルマで20分ほどの距離にある「ランボルギーニ仙台」に向かった。ここでもう1台のウルスのタイヤをピレリPゼロ・コルサに交換し、翌日のサーキット走行に備えるのが目的だった。

およそ3年前にオープンしたというランボルギーニ仙台は、設備がまだ新しいのはもちろんのこと、ショールームの裏手に広々とした駐車場が用意され、おなじ敷地内にあるワークショップも設備が充実しているので、いかにも頼りになりそう。私がお話しさせていただいたスタッフの方々も明るく親切だった。

初日のゴール地点であるランボルギーニ仙台で、スタッフとともに。

皆さんによると、ランボルギーニ仙台ができるまで東北地方にはランボルギーニの正規代理店がなかったらしく、地元ファンの方々からは「これで安心してランボルギーニに乗れるようになった」と、大歓迎されているとか。とりわけ、子供の頃にスーパーカーブームを体験した層には、往年の「カウンタック」とイメージが重なる「アヴェンタドール」の人気が高く、ランボルギーニ仙台としていまいちばん人気のモデルだそうだ。

翌日のサーキット走行にそなえタイヤを交換する。

デビュー当初より確実に進化したウルス

タイヤ交換後は仙台市内に宿泊。翌日はまず、私がもっとも楽しみにしていたスポーツランドSUGOでのサーキット走行に向かった。

話は前後するけれど、私は今回のツアーで初めて最新仕様のウルスに触れて、大いに驚いたことがあった。初期型ウルスで明確だった、路面からのショックがダイレクトに伝わる印象がすっかり消え去って、とてもソフトで滑らかな手触りに一変していたのだ。しかも、試乗車のパール・カプシュールが履いていたのは驚きの23インチという大径タイヤ。にもかかわらず乗り心地が大幅に改善されていたことに度肝を抜かれたのだ。

となれば、当然サーキット走行ではハンドリングがあいまいに感じられるだろうと予想していたが、これも完全に裏切られて、デビュー当初のウルスとほとんど変わらない切れが良くてレスポンスの鋭い操縦性を示したのである。つまり、最新のウルスは、サーキット走行からグランドツーリングまで幅広くこなすスーパーSUVに生まれ変わっていたのだ。

スポーツランドSUGOを疾走するウルス。フロントに搭載するのは4.0リッターのV型8気筒ガソリンツインターボ・エンジンだ。

最高速度は305km/h。0〜100km/hの加速タイムはわずか3.6秒だ。

サーキット走行後は蔵王エコーラインで“雪の回廊”とウルスの2ショットを撮る予定だったのだが、雨と霧がひどいために本格的な撮影は断念。ふたたびランボルギーニ仙台に戻ってタイヤをもとのPゼロに履き替えると、仙台駅まで走ったところで私のお役目は無事終了となった。

その後もウルスは宇都宮、横浜を経由してゴール地点のラウンジ東京に辿り着いたとの報告を受けた。今回の行程は実に過酷というか、ある意味で無謀で、トラブルやアクシデントを一切想定していない過密スケジュール。にもかかわらず予定どおりにフィニッシュできたということは、ウルスの優れた信頼性とグランドツーリング性を証明するものといえる。

霧雨の蔵王エコーラインを走るウルス。

最高出力は650psに達する。

私がドライブしたのは2日間でたかだか600kmほどだったけれど、それでも6500kmのツアーの一部を担ったという喜びと達成感を味わえたのは事実。最後に「困難な状況も、粘り強く立ち向かえばいつかは乗り越えられる」ことをあらためて教えてくれた「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」に感謝して、この一文を締め括りたい。

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文・大谷達也