驚異の進化──新型レクサスLX試乗記・前編

フルモデルチェンジしたレクサスの新型「LX600」に大谷達也が試乗した。前編ではオフロードでの走行性能をリポートする。
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Hiromitsu Yasui

はっきりわかった旧型との違い

昨年10月のワールドプレミアに続き、本日正式発表された新型レクサスLX(日本仕様)のプロトタイプに富士スピードウェイ内の特設コースで試乗した。

新型LXといえば、旧型からの進化の度合いもさることながら、同じプラットフォームを用いる新型トヨタ「ランドクルーザー」との違いも気になるところ。もっとも、レクサス自身は「ランクルとの差別化を図るだけでなく、レクサスのフラッグシップSUVとしてのLXを追求する」といった“姿勢”に方向転換したと力説する。

走行モードシステムの「マルチテレインセレクト」は、路面状況に応じて6つのモードから任意で選べる(AUTO/DIRT/SAND/MUD/DEEP SNOW/ROCK)。このうち、AUTOは新型で初採用されたモードで、各種センサーの情報から走行中の路面状況を推定し、ブレーキ油圧、駆動力、サスペンションを制御する。

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今回はこういった側面にも注目しながら、オフロードコースとオンロードコースの2ステージでLXプロトタイプをテストした。

最初に試乗したのはオフロードコース。ただし、実際に走ったのは丸太や鉄骨などで組んだ“オフロード風のコース”である。それでも旧型からの進化ははっきりと確認できたので、ここで報告しよう。

内装は、新型NXとおなじ「Tazuna Concept」にもとづき、クルマとドライバーがより直感的につながり、ドライバーはより運転操作に集中できるようになった、とされる。インパネには、上下2画面のデュアルディスプレイを設置したのが新しい。上部は12.3インチのタッチディスプレイでナビゲーションやオーディオ画面を、オフロード走行時は、車両各所に設置されたカメラの映像を映す。下部は7インチのタッチディスプレイで、空調やマルチテレインセレクトの状況などを表示し、オフロード走行時には、上部モニターで車両の周辺を、下部モニターで傾斜角などを同時にチェックする。

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2列・4人乗りの豪華仕様「“EXECUTIVE”」が新しく設定された。セパレートタイプのリアシートは、最大48°リクライニングするうえ、オットマンや読書灯、エンターテインメント用モニターなども付く。

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リアシートの各種機能は、中央に設置されたリアコントロールパネルで操作出来る。

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SUVの悪路走破性といえば、昔はごついブロックパターンのオフロード用タイヤでグリップを確保するいっぽう、トラクションはディファレンシャルギア(いわゆる“デフ”)をロックして稼ぎ出すのが基本だった。

この手法は現在でも有効であるものの、オンロードでの乗り心地や静粛性を考えればオフロード用タイヤの装着は避けたいところだし、デフをロックすると舗装路ではいろいろと不都合が起きるので、これまでは状況に応じて「デフをロックする」「デフロックを解除する」手間が必要だった。

前後灯火類はL字をモチーフにしたデザインだ。ヘッドライトは、配光を緻密に制御するという触れ込みの「ブレードスキャンアダプティブハイビームシステム」なるものを搭載した。

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盗難の多いLXらしく、セキュリティも強化。レクサス初の「指紋認証スタートスイッチ」が搭載された。スマートキーを携帯し、ブレーキを踏みながら スタートスイッチ上の指紋センサーにタッチすると、車両に登録された指紋情報と照合し、一致しなければエンジンは始動しない。

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そこで現在では、タイヤの性能やデフロック機能になるべく頼ることなく、トラクションコントロールに代表される電子デバイスで悪路走破性を確保するスタイルが主流になってきた。私は海外メーカーのSUV試乗会で、この種の機能が思いのほか優れた性能を備えているのを何度も体験している。

とりわけ、1輪ないし2輪が浮き上がってしまうような岩場、それに泥濘地などで高い効果を発揮する傾向にあるようだ。しかも、本格的なオフロードタイヤでなくとも、オールシーズンタイヤや場合によってはサマータイヤでも十分な性能を実現できる点は、普段は街乗りにSUVを用いるユーザーにとって好都合といえる。

新型LXは、登降坂時および左右の車体傾斜45°までの範囲でのオイル供給性能を確保したと謳う。過度な傾斜などによってオイルレベルが著しく下がったときは、油面低下を検出し、警告灯などでドライバーに知らせるオイルレベルセンサーを採用した。

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緻密な制御、スムーズな走り

新型LXでも、この種の電子デバイスが大きく進化したという。

そのポイントのひとつは、電子制御によって素早く繊細に制動力をコントロールするのに必要なブレーキ・アクチュエーター(ドライバーがブレーキペダルを踏んで制動力を生み出すのではなく、コンピューターの判断で4輪の制動力を個別に生み出すためのデバイス)の進化で、これまで以上に微妙な制御を正確に実施できるそうだ。

415psの最高出力と650Nmの最大トルクを発揮する3.5リッターV型6気筒ガソリンツインターボ・エンジンを搭載する。

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組み合わされるトランスミッションは新開発の10ATのみだ。

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実際に、クルマが大きく傾いたり、1輪ないし2輪が浮き上がってしまったりするような特設コースを走行してみると、トラクションを確保するためにシステムがブレーキを作動させた際の“ギコギコ”というノイズがかなり小さくなったほか、作動に伴うショックも小さくなった結果、これまで以上に不安なく難所を乗りきることができた。

こうしたスムーズな走りには、低回転域でも大トルクを発揮し、レスポンスにも優れた新しいV6ターボエンジンの特性も寄与しているようだ。

車高調整機能の「AHC」(アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション)は、ばねレート切り替え装置を前・後(従来モデルはフロントのみ)に装着し、車高調整にかかる時間を短縮した。車高ポジションは「Low」、「Normal」、「Hi1」、「Hi2」の4種類。AHCは、車高調整のみならず、車両姿勢変化を制御する。

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カメラ機能のアップデート

最新SUVで注目されるもうひとつの電子デバイスが、カメラをつかった車両周辺の画像表示機能にある。

どこに鋭敏な岩や深い穴が隠れているかがわからないオフロードを走行するとき、車両周辺の路面を確認することは極めて重要で、以前であれば運転席からの“見切りのよさ”がクロスカントリー車には必要不可欠とされてきた。

オフロード走行時は、車両各所に設置されたカメラの映像を映す。

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オフロード走行時には、下部モニターで傾斜角などを同時にチェック出来る。

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デジタルカメラを使った電子ルームミラーも装備。

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それが、いまではカメラに置き換えられつつあるのだが、とりわけ注目されているのが、車両の下側の状況を擬似的に映し出す機能。これは、車両前方の路面を電子的に取り込んだ後、移動した距離に応じて“現在の車両直下の路面”を合成して画面上に映し出すもので、レクサスではこれを「アンダーフロアビュー」と呼んでいる。

ボンネットやルーフ、すべてのドアパネルはアルミニウム製。先代のLXより車両重量は約200kg軽くなったという。

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ちなみに、先代LXでは前進時に必要な車両前部の路面のみ映し出すことが可能だったが、新型では後退時に役立つ「バックアンダーフロアビュー」を搭載。車両後部の直下に位置する路面を画像処理技術によって表示する機能を手に入れた。

結果として新型LXのオフロード性能は、旧型を上まわるだけでなく、300系と呼ばれる新型ランドクルーザーと同等のレベルを実現したと、チーフエンジニアの横尾貴己氏は語る。つまり、新型LXは内外装がランクルより豪華なだけでなく、ランクル並みのオフロード性能も手に入れたというのだ。

「LX」は、トヨタ「ランドクルーザー」とプラットフォームを共有するレクサスのフラグシップSUVだ。ランドクルーザーのフルモデルチェンジにやや遅れて、約14年ぶりに全面刷新された。

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では、新型LXのオンロード性能はどうなのか? 

これについてはレポートの後編でご紹介することにしよう。

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文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.)