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超カッコ“e”(イー)アウディが出た! 新型e-tron GT登場

2月9日、独・アウディは、新型EV(電気自動車)の「e-tron GT」を発表した。大谷達也が解説する。
audi アウディ etron GT 電気自動車 EV A7スポーツバック AUDI
Static photo,Colour: Daytona greyAUDI AG

タイカンとの違いは?

かねてより噂されていたアウディe-tronのスポーツバージョン、e-tron GTがついにワールドプレミアを飾った。

audi アウディ e-tron GT 電気自動車 EV A7スポーツバック AUDI
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ご存じのとおりポルシェ「タイカン」とは兄弟モデルのような関係にあるe-tron GTは、永久励磁シンクロナスモーターを前後の車軸上に積んだ4WDで、リアアクスルには2段ATを搭載。93kWhの大容量バッテリーや、800Vテクノロジーを活用して150kWの大充電容量を実現(日本仕様の場合)している点はタイカンと酷似している。

では、e-tron GTとタイカンの違いとはなにか?

そのひとつはパフォーマンスの違いであり、もうひとつはデザインを含めたキャラクターの違いであると説明できる。

e-tron GTは5ドア・ハッチバック。

AUDI AG

動力性能は全般的にいってタイカンのほうが優れている。ここでは、e-tron GTクワトロとRS e-tron GTの2グレードが用意されるe-tron GTのなかで上位機種にあたるRS e-tron GTと、タイカンのフラッグシップモデルであるタイカン・ターボSを比較してみよう。

まず、最高出力はタイカンの625psに対してe-tron GTが598psになるだけでなく、ブースト時にはこの差がタイカン:761ps/e-tron GT:646psまで広がる。当然、加速性能にも差があって、0〜100km/hの加速タイムはタイカンが2.8秒、e-tron GTは3.3秒と発表されている。スピードリミッターで制限される最高速度にもなぜか差がつけられていて、タイカンは260km/h、e-tron GTは250km/hになる。

ただし、タイカンは動力性能が優れている分、航続距離が短い。ヨーロッパの発表値でタイカン・ターボSの航続距離は390〜416km。いっぽうRS e-tron GTは472kmと2割近く長い。つまり、足は速いけれど遠くまで走るのは苦手なタイカンと、足の速さではタイカンに及ばないもののより遠くまで走れるe-tron GTという違いが存在するのだ。

93kWhの大容量バッテリーを搭載する。

AUDI AG

メーターはフルデジタル。エアコン・スウィッチは、ほかの最新アウディが液晶パネルで操作するのに対し、物理スウィッチになる。

AUDI AG

“e-tron GTは夢のクルマ”

これはそのまま2台のキャラクターの違いへと直結していく。タイカンもe-tron GTも技術的にはよく似ているものの、タイカンはよりスポーツカー的で、e-tron GTはよりグランツーリスモ的と考えられるのだ。この点は、両メーカーが配信するプレスリリースの内容にも色濃く反映されている。きっと足まわりにしてもタイカンのほうがよりソリッドで、これに比べればe-tron GTはしなやか系に設定されているのだろう。もっとも、この点は試乗してみなければ断言できないが……。

そうしたキャラクターの違いはスタイリングからも見て取れる。タイカンはまさに「911」の4ドア版といった趣だが、いっぽうのe-tron GTは「A7スポーツバック」を最新のデザイン言語で描き直しているように思える。

0〜100km/hの加速タイムは3.3秒。

AUDI AG

アウディのチーフデザイナーであるマーク・リヒテが語る。

「私は2014年にチーフデザイナーに就任して以来、おそらく35台か40台のアウディをチームとともにデザインしてきました。デザイナーのキャリアとしては100台以上をデザインしたことでしょう。けれども、e-tron GTを発表する今日は、私の夢を実現した特別な日となりました。なぜなら、魅力的という意味において、e-tron GTは私がこれまでデザインしたクルマを大きく引き離しているからです」

なぜ、リヒテはそれほどe-tron GTの仕上がりに満足しているのか? その理由を説明してもらった。

「美しいデザインは、いつでも優れたプロポーションから生まれます。そしてこのプロポーションは、私が長年、夢に描いてきたものです。私はいつも、長いホイールベース、大きなホイール、そして短いオーバーハングのクルマのスケッチを描いていました。そのすべてをe-tron GTでは実現しています。だから、私にとってe-tron GTは夢のクルマなのです」

最高速度は250km/hになる。

sagmeister_potography

日本へは今年上陸か

なかでも重要なのが、低い全高にもかかわらずオトナ4人が乗れるスペースを実現したことにあるという。

「私の身長はほぼ2mですが、e-tron GTの後席に腰掛けても十分なヘッドクリアランスが残されています。しかもe-tron GTの全高はA7よりも低い。そして流れるようなファストバックのラインを備えています。スポーツカーのようなスタイリングのなかに4人分のスペースを確保する。これがe-tron GTをデザインするうえでの最大のチャレンジでした」

そうしたプロポーションの魅力とともに、e-tron GTにはEVに相応しい新たなデザイン・モチーフも採用されている。

Audi e-tron GT quattro, Static photo, Colour: Kemora grey metallicAudi RS e-tron GT, Static photo, Colour: Daytona greyAUDI AG

「たとえば、このシングルフレームグリルを見てください。これはアウディの顔とも呼べるものですが、e-tron GTではグリル部をボディカラー同色とし、周囲をブラックでペイントしました。これは通常のアウディとは反対です。こうすることでエンジン車との差別化を図っているのです。そのほか、近年のアウディは4WDのクワトロを表現するために4輪を覆うフェンダーに厚みを持たせていますが、e-tron GTではさらにこのマスを大きくし、ドラマティックで立体的な造形としました。また、キャラクターラインに関しては、従来のようにシャープなエッジとしたのは1本だけで、ほかはすべて丸みを帯びています。これもアウディの次世代デザイン言語のひとつです」

デザインに関するこうした提案は、2018年のロサンジェルスショーで公開されたショーカーのアウディe-tron GTコンセプトにすべて盛り込まれていたという。

「ショーカーを作る段階で量産モデルのデザインはすでにできあがっていましたが、それがあまりに魅力的だったので、私たちは量産モデルのデザインをそのままショーカーとして展示することにしました。ショーカーと量産モデルで異なっているのは、照明付きのロゴがフロントに飾られているのと、ドアハンドルが異なっていることの2点だけです」

たしかにリヒテが主張するとおりe-tron GTは美しい。なかでも、低くコンパクトなキャビンを中心に置き、その前後に大きなホイールとそれをカバーする肉感的なフェンダーを組み合わせたプロポーションはまるでレーシングカーのようだし、リアフェンダーのキャラクターラインがそのままテールエンドへと連なってテールライトの上側を縁取りしている造形にも強い新規性が感じられる。

オトナ4人分のスペースを魅惑的なスタイリングで包み込んだe-tron GTは、2021年中にも日本で発売される模様である。

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文・大谷達也