スムーズな加速感
“コンパクトカーの常識を超えるコンパクトカー”と、うたうのが日産の新型ノートだ。「ちいさなクルマに興味はない」なんていう層にも、いちど体験してもらいたい、あたらしい乗り味を持っているクルマだった。
ノートは、日産自動車が「e-POWER(イーパワー)」と名づけたシリーズハイブリッド・システムを搭載する。前輪を駆動するのは電気モーターで、そのモーターのための駆動用バッテリーは、1.2リッターガソリンエンジンによって充電される。
今回ようやく公道で乗れたのは、2020年12月23日に販売開始された前輪駆動の「ノートX」。X(エックス)は3つあるグレードのうち最上級車種に位置づけられている。
上質さの追求
私が思うに、現時点で好燃費のクルマを買おうと思ったら、e-POWERを搭載するノートが、もっとも現実的な選択なように思う。最大の理由は充電の心配がないからだ。燃費はリッター28.4km/L(現実的な数値がでるWLTC)だから、充分ではないだろうか。くわえて、上記のとおり、力強いドライブフィールを持っている。
原子力や火力、それに最近では海の生物におおきな騒音被害をもたらしているともいわれる水上風力発電など、電源にはいろいろ悩ましい問題があるだけに、ピュアEVに二の足を踏んでいるひとなら、ノートは現実的な選択肢といってもいい。
フロントに発電用の4気筒エンジンを搭載しているとはいえ、エンジンじたいはかなりコンパクトで、エンジンルームを開けてみると、“スカスカ”だからびっくりする。1960年代のクルマが、エアコンとか排ガス浄化装置とかがなくて、同じような作りだったのを思い出したほど。
ハンドリングはエンジンの重さを感じさせない。操舵に対してきもちよくボディが反応する動きには、日産の開発陣はかなりこだわったという。その狙いどおりの出来のよさであると思う。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に280Nmの最大トルクを出す設定のモーターだから、きびきび感はたっぷり味わえる。
おもしろいのは、たんにパワフルさを追究するのでなく、日産の技術陣は、日常的な走行におけるスムーズさにも心を砕いたというのだ。「力強いだけでは扱いにくく上質とはいえません」と、日産の渡邊明規雄チーフビークルエンジニアは語っている。
アクセルペダルを踏みこみ、つぎにゆるめて、また踏み込むなどという場面でも、ギクシャクとボディが動かないような制御が入る。
プロパイロットも選べます
新型ノートについて、いろいろ書きたくなったのは、乗っていると、たいへんリラックスできて気持ちよく、すぐ好きになれるクルマだからである。
日常の足として使われることを前提に開発されたそうで、たとえば新型の回転半径は、先代より0.3m小さい4.9mになったそうだ。取り回し性がさらによくなっているのも、私が感心した点である。
試乗車にはオプションの先進運転支援システム「プロパイロット」が搭載されていた。ステアリング・ホイールのスポーク部のボタンをひと押しすると、先行車追従のクルーズコントロールが作動。くわえて、車線中央をキープするようステアリング操作が支援される。カーブ手前では自動で減速し、ドライバーをサポートする。日産が自信をもっている技術だけあって、たしかに、たいへん使いやすい。
価格はベーシックが「F」(202万9500円)。その上に「S」(205万4800円)と、トップモデル「X」(218万6800円)が設定されている。先述のプロパイロットは、カーナビゲーション・システムなどとセットで44万2200円のエクストラだ。