日本人が気づかない「再生エネルギー信仰」の不都合な真実

電気代は上がり、C02も増え続ける…

日本は環境後進国なのか

10月4日、日経新聞オンラインの速報として、「脱CO2、先頭から脱落 環境後進国ニッポン 再生エネ普及で差」というタイトルの記事が大きく載った。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21864180U7A001C1SHA000/)。

書き出しは、こうだ。

「地球温暖化対策を評価する複数の指標で、日本は数値の悪化が止まらない。世界で急激に進むパラダイムシフトから取り残され、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及や産業構造の転換が遅れているからだ。優れた省エネ技術や公害対策などで『環境先進国』といわれた日本の自画像は大きく揺らいでいる」

しかし、日本の再エネ(特に太陽光発電)の普及は他国に比べて遜色はない。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の2017年レポートによれば、2016年末の太陽光発電設備量は日本が4,170万kW、ドイツが4,099万kW、米国が3,471万kW、英国が1,125万kWで、日本が彼らを上回っている。稼働率も、日照時間の少ないドイツや英国より、日本の方がもちろん良い。

ただ、この記事で一番困るのは、再エネが増えれば増えるほど良いと勘違いさせられてしまうことだ。日本やドイツはもちろん、多くの国では、再エネ電気は高い金額で優先的に買い取ってもらえるので急激に増えたが、結果は良いことばかりではない。高い買取価格と市場価格の差が「再エネ賦課金」として電気代に上乗せされているからだ。

つまり、ほぼゼロ金利のドイツや日本では、お金を持っている人は屋根の上にパネルを乗せれば、日が照るごとにお金が入るので、リスク無しの確実な投資となる。企業も同じことができる。それを負担しているのが全国民。

これが公正なシステムであるとは思えないのだが、この記事ではそれを問題視することなく、「稼動すれば利回りが10%を超える案件も相次ぎ」と、あたり前のことのようにさらりと通過してしまう。

 

自分がどれだけの「再エネ賦課金」を負担しているかということは、毎月の領収書に記載されているので、電気代が上がったと思っている人は一度見てみてほしい。

電力中央研究所の試算では、2017年度の賦課金総額は2兆1400億円。2030年度には再エネの買取総額が4.7兆円に膨れ上がるという予測だ。政府の予測では3.7~4.0兆円だが、いずれにしても、このままいけば、電気料金はどんどん上がっていく。

電気代の高騰は、産業に打撃を与える。だからドイツでは、国際競争力を下げてはならない大企業の再エネ賦課金を免除、あるいは軽減しているが、日本ではその配慮もない。電気代が上がれば、大企業は海外に移転を考えるし、中小企業は倒産の危険が高まるだろう。

元はと言えば、この制度を導入したのは2011年、菅元首相の民主党だった。お手本はドイツ。しかし、ドイツは当時、すでに買取値段を下げ始めていた。それどころか、2014年以降、大型発電者に対する固定価格での買取もやめている。それなのに菅氏は、ドイツよりも倍以上高い固定価格(例:40円)での買取を決め、それが現在の問題を生んでいる。

ところが、この日経の記事は、再エネはまだまだどんどん増やさなければ、世界の先進国に遅れをとると言わんばかりだ。

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