ドイツのスタートアップ、リリウム(Lilium)は、時速300キロで飛行する5人乗りモデルを視野に入れている。今回の資金調達には、テンセント(騰訊)のほか、オブビアス・ベンチャーズ(Obvious Ventures)などの出資者が参加した。

マンハッタンからJFK空港まで5分

マンハッタンの街中からJFK空港までわずか5分で乗客を運ぶという展望のもと、「空飛ぶジェットタクシー」を設計するリリウム(Lilium)が、テンセント・ホールディングス(騰訊)を含む出資者から9000万ドルを調達した。
ミュンヘンを拠点とするスタートアップのリリウムは調達した資金を使い、最高時速300キロメートルで飛行する5人乗りジェットタクシーの試作モデルを開発したいと考えている。
すでに開発されている2人乗りの試作モデルは2017年4月に初飛行に成功したと、リモ・ガーバー最高商務責任者(CCO:Chief Commercial Officer)はインタビューのなかで述べている。
ガーバーCCOは、テンセントによる出資を引き寄せた要素について、人々の移動手段を向上させ、アジアを含めた各地域でインフラを一足とびに進歩させることが評価されたと説明する。
そのほかの出資者には、リヒテンシュタインのLGTグループ、ツイッターの共同創業者エバン・ウィリアムズが立ち上げたオブビアス・ベンチャーズ(Obvious Ventures)、イギリスの投資会社アトミコ(Atomico)が名を連ねている。これにより、リリウムが調達した総額は1億ドルを上回った。
ガーバーCCOは「我が社の技術は、都市部でも都市間でもすぐに導入できるものだと考えている。必要なものは着陸パッドだけだ」と語る。「ジェットタクシーを操縦できるパートナーを探している。乗客のコストが列車移動やタクシーと同程度になることをめざしている」
現時点では、空飛ぶタクシーの実用化はごく初期の段階だが、あと数年もすれば、リリウムのジェットタクシーは大量生産できるようになる、とガーバーCCOは予想している。

ミュンヘン工科大学出身の4人が起業

こうした輸送形態については、ダイムラーがドイツのスタートアップ、ボロコプター(Volocopter)に出資しているほか、エアバスも自動操縦旅客機プロジェクト「バハナ(Vahana)」に資金を投じている。
現在はまだ試作段階だが、こうした技術を商業展開するには、なんらかの当局からの認可を受ける必要が出てくるだろう。
欧州宇宙機関からも支援を受けるリリウムは、より広い観点から言えば、フランスのシーバブルズ(Seabubbles)などの会社がしのぎを削る分野に参入することになる。
シーバブルズは、水面を浮上して走る水上タクシーを開発するスタートアップで、都市の渋滞を緩和し、通勤を楽にするためのソリューションを探っている。
リリウムは、ミュンヘン工科大学出身の研究者4人が2015年に起業したスタートアップだ。以来、イギリスを拠点とするタクシー配車のゲット(Gett)やエアバス、テスラなどから上級社員を引き抜いてきた。
2017年4月の試験飛行プログラムでは、ホバリングモードから固定翼での前方飛行モードへ空中で移行する実験もおこなわれた。
「現在の段階では、ドローンや飛行機など、さまざまな種類の技術をベースにした数々のコンセプトを目にすることになるだろう」とガーバーCCOは語った。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Marie Mawad記者、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:www.lilium.com)
©2017 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.