羽生三冠とCA藤田社長の考える「成功するために必要なこと」とは?

羽生三冠とCA藤田社長の考える「成功するために必要なこと」とは?

ライター: AbemaTV将棋チャンネル編集局  更新: 2017年08月12日

成功する人には「常識にとらわれない強さ」がある

藤田:羽生さんや渡辺明さんなど、将棋界で若くして注目される人は、みなさん大成されている印象があります。

羽生:確かにそうかもしれませんね。渡辺さんから後の世代というのは、インターネットを使って将棋を研究する人が増えていまして、そこからさらに「若くして強い」という流れが加速していったような気がします。それこそ、藤田さんも若くして注目されていたわけですよね。

藤田:僕は26歳のときに会社を上場させまして、それは当時の史上最年少記録でした。

羽生:そうですか。藤田さんも非常に若くに起業されたわけですが、いまの若い起業家たちにはどのような印象をお持ちですか?

藤田:ビジネスの世界って、若い子がなかなか出にくい構造なんですね。見透かされやすい世界というか、経験不足から周りにつぶされることもあるだろうし。

羽生:そういう状況の中で、藤田さんは会社設立から2年ほどで上場させてしまったわけですよね。それはどういう要素があったからだと思いますか?

藤田経験がない分、常識的に無理ということが分からない強さ、といいますか。自分は大丈夫と思い込んで、痛い目に合ってもやり切る覚悟があれば、若くても成功するような気はします。

羽生:それはリスクを恐れずに、立ち向かっていく勇気というか。

藤田:僕の場合は勇気というより、ただ単に「知らなかった」という感じでした。散々痛い目にあって、追い込まれてはじめて気づいたこともあります。もう一度同じことができるかといわれたら、おそらく無理だと思います。

羽生:私もときどき感じるのですが、経験をたくさん積むことで「ここまでやっても大丈夫」とか「これ以上は駄目」といった、アクセルとブレーキの踏み加減がなんとなく分かってきますよね。しかし、何かものすごい大きなものを生み出すときって、そういう理屈じゃないところにある気がします。周りから見たら、その選択が正しくないように見えるんだけど、それが大きな勢いや流れとなって、大きな結果を生み出していくというような。

藤田:トランプ大統領のときも、そういう勢いを感じましたよね。理屈じゃ説明できない時流があったというか。普通に考えると、みんなに叩かれてつぶされてもおかしくないわけですから。

成功の近道は「多くのミスを経験し、挫折を知ること」

羽生:そのあたりの違いというのは、起業している人が特に知りたいところだと思います。

藤田:ビジネスの世界でも、経験を積むほどに「ブレーキとアクセル」のような押し引きは上手くなると思います。しかし、それを知ったがゆえに「非常識なことが言えない」「当たり前のことができない」となる人が多い。AbemaTVを始めたきっかけも、「テレビとネットの境目はなくなる」「テレビとネットが融合したら面白そう」という単純な発想ですが、この事業が成功するかどうかなんて誰にも分かりません。だから、経験則よりも、結局は最後までやり切れるかどうかなんです。

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羽生:先ほどの「先見性よりも忍耐力」という話にも通じますね。

藤田:初期衝動として、割と誰もが思いつく当たり前のことがある。でも、経験がありすぎると無理な理由をいくらでも挙げられるので、実行する前にどうしてもブレーキがかかってしまいます。それらをすべて突っ切って、やり始めることができるか。その思い切りは大切だと思います。

羽生:ただ、その思い切りにはリスクも伴うわけで、いまだに誰もやってないというのは、誰もがやらないだけの何かしらの理由があります。それはさまざまな障壁かもしれませんし、業界の規制かもしれません。

藤田:おっしゃる通りです。だから、僕が20代ぐらいの時は、まだ自分自身に実績がなかったので、周りもなかなか信用してくれませんでした。それでも、なんとか実績を積み重ねていくことで、「藤田が言うからには、なんとかなる理由がある」という雰囲気をつくっていけた気がします。そういう意味では、AbemaTVは比較的やりやすいです。社員たちも「社長があれだけ言うなら、なんとかなるだろう」って。

羽生:周りの人たちを説得するのって、経験や実績がある人でもなかなか大変なことですよね。

藤田:結局、本当に説得しようとしたら論破されてしまうんです。なぜなら、まだ世の中にないものをつくろうとしているわけですから。だから、最後は「気合でなんとかする」としか言えないときもあります。

羽生:最後は意気込みを伝えるしかないというか、説明のしようがないわけですからね。

藤田:不可能なものを可能にするのがわれわれの仕事なので、駄目な理由を並べても仕方がありません。例え失敗したとしても会社がつぶれるわけではないので、僕の理屈からいえば、当然挑戦すべき戦いになるわけです。そういった戦略を考えるという意味でも、将棋はすごくいいんです。うちの子はまだ3歳ですが、将来は将棋をやらせようと思っています。

羽生:ああ、そうなんですか。

藤田:勝つための戦略をちゃんと自分で立てて、何かを得るには何かを失わなきゃいけないとか。そういった学校教育でやらないようなことを、将棋や麻雀は教えてくれるような気がします。

羽生:小さいときに将棋を経験するのは、ロジックの立て方とか、集中力を身に着けるという意味でもすごくいいと思います。そういう教育方針って、他にも考えていたりするのですか?

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藤田:教育方針というほどでもないですが、息子は僕と違ってボンボンなので(笑)、だから、ハングリーさというか、もっと挫折を味わうようなことをさせたいとは思っています。

羽生:いまの子供たちって安全面や治安のこともあって、なかなかそういう経験をさせてもらえないですからね。私も「若い人に向けてメッセージを」と言われると、「これまでに経験したことがない、羅針盤が利かないような状況や環境に身を置くといいと思います」という話をするんです。それを素直に受け取って「じゃあ、紛争地域に行きます」となると、それはそれでちょっと困りますが。ある程度きちんと安全面が確保されていて、失敗しても大丈夫という条件の下なら、さまざまな経験を積むことはとても大切だと思います。

藤田:さっきの話のように、将棋界で四段に上がれるのが40人中2人というシステムの中で、そこには3位だった人もいるわけで。そういった挫折を味わうというのは、人生経験としてもすごくいいことですよね。

羽生:将棋をしていると、本当にたくさんのミスを経験します。自分自身も対局のたびに、必ず何個もミスを犯してしまいます。そうしたミスを発見しながら、「どうして間違ってしまったのか」「同じミスを繰り返さないためにはどうしたらいいのか」などを検証することが大切だと思っています。私はこれまでの公式戦で1度だけ「一手詰め」を見逃して負けたことがありまして。そのときは「血の気が引く」という生やさしい表現じゃなく、もう本当に血が逆流するような経験をしました。

藤田:それは見逃した自分に腹を立てて、という感じですか?

羽生:というよりも、もう信じられないといいますか。「勝負は下駄を履くまでわからない」とよくいいますが、そういうことは実際に経験してみて、はじめて本当にわかりますよね。

藤田:普通、血が逆流するほどのミスを犯したら、もう二度とやらないって思いますからね。

羽生:もちろん、そういうミスはしないほうがいいんでしょうけど。でも、ミスをしたときに、どうやってフォローするとか、どうやって自分を立て直すとか、そういうことを学ぶことはすごく大切だと思います。

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羽生三冠×藤田社長 特別対談 ~勝負の世界で生きる40代~

AbemaTV将棋チャンネル編集局

ライターAbemaTV将棋チャンネル編集局

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