世界中でオンライン・メディアが群雄割拠する中、ストック画像の需要はますます大きくなっています。ストック画像を選んでもらうためには画像そのものをユーザーに見せないといけないわけですが、本物の画像を表示してしまうとそれをそのまま転用されてしまう危険性があります。そのためストック画像の多くが画像の上にうっすらとロゴや「コピー」といった文字を入れ込む「ウォーターマーク」を使用してきました。
そんなストック画像業界を激震させたのが先日Googleが発表した研究結果です。「目に見えるウォーターマークの効率性について」と題されたこの研究では、同一のウォーターマークが入れ込まれた複数の画像を基にウォーターマークを抽出することで、画像からウォーターマークを除去することに成功しています。
こちらが研究の成果のプレゼンテーションとなっていますが、その出来上がりは見事です。
左に並んでいるのが同じウォーターマークを組み込まれた異なる画像です。これを大量に用意すれば、共通しているデザインであるウォーターマーク(右)だけを読み取ることができるわけですね。

これまでもウォーターマークの除去はフォトショップを使って行なうことができましたが、一つひとつを除去するのは大変な作業でした。それがこのアルゴリズムを使うことで自動で簡単にしかもキレイに除去できるようになってしまったわけです。


この完成度は驚異的。この技術がストック写真業界に与える影響は大きい、ということで論文では「この技術を使えないようにするための技術」も提案されています。それはウォーターマークを全て同じにしてしまうのではなく、一つひとつ微妙に異なっているようにする、というものです。そうすると同じ技術を使って除去しようとしても画像に歪みが残るとのこと。


なるほど確かに歪んでいます。Googleの研究者たちは論文を発表する前にShutterstockといったストック写真会社に連絡をし、この防止技術について伝えたそうです。そのため今ではShutterstockの画像はこの防止技術を反映したものになっているとのこと。人間の目には全て同じウォーターマークに見えますが、全て微妙に違っているんですね...
The Next Webの取材に対し、ShutterstockのCTOであるマーティン・ブロッドベック氏は次のように応えています。
Shutterstockは論文が発表される前にこれについて告知を受け、すぐに指摘された問題に取り組み始めました。その結果我々のエンジニア・チームが開発したのはウォーターマークをランダム化するソフトウェアです。それによって同じウォーターマークが存在しないようになっています。画像ごとに(ウォーターマークの)形が異なっており、画像の提供者の名前も含まれるようになっています。各画像に含まれるウォーターマークが全く違っていることで、その形状を特定するのが難しくなっています。
試しにShuterstockのサンプル画像を拡大して見てみると、提供者のユーザーネーム「Casimiro PT」がグネグネと曲がりながら描かれているのが確認できます。
ランダム化がソフトウェアで行なわれている以上、そのソフトウェアをめぐって今後もイタチごっこが続きそうな気もしますが、とりあえずは今回の技術でShuterstockの持っている画像が違法に転用される、ということは無さそうです。
Screenshot: Tali Dekel/YouTube
Source: Shutterstock via TNW
(塚本 紺)