Highlights from the Grandstand: National Highschool Baseball Championship Tournament Day02

旭川大はまさかの“仁義なき戦い”!──ブラバン甲子園「本日のアルプススタンド_第2日」

100回目の夏の甲子園。56校全校の試合を観戦する高校野球ブラバン応援研究家の梅津有希子によるアルプススタンド“本日のハイライト”、2日目は北北海道代表「旭川大」。 文と写真・梅津有希子
旭川大はまさかの“仁義なき戦い”!──ブラバン甲子園「本日のアルプススタンド第2日」
30人とは思えない音量と迫力で、『仁義なき戦い』を吹き続けた

春夏通じて史上初のタイブレーク制に突入した大会2日目の第4試合、佐久長聖(長野)-旭川大(北北海道)。延長14回までもつれた3時間を超える熱戦は、5-4で佐久長聖が制した。

ナイターに突入し、美しい芝生をナイター照明が照らすなか、旭川大アルプスから鳴り響くのは、なんと映画『仁義なき戦い』のテーマ。曲名を知らずとも、誰もが聴いたことのあるあのメロディーだ。

「狙いうち」や「サウスポー」などの昭和歌謡、「宇宙戦艦ヤマト」などのアニメソング、あるいはJ-POPが応援曲の定番だが、さすがに「仁義なき戦い」は聴いたことがない。

若さあふれる30人の高校生が奏でる、おどろおどろしい伝説のヤクザ映画のテーマが響き渡ると、なんとも言えない空気がアルプスを包む。野球ファンもあいまいな笑みを浮かべて吹奏楽部に注視している。

と思ったら、「北北海道らさ」も忘れない。今度は富良野市がロケ地となったテレビドラマ「北の国から」のテーマ曲だ。「あ〜あ〜 ああああ あ〜あ〜♪」と、吹奏楽部のアカペラ合唱による清々しいメロディーに心が洗われる。と、次の瞬間、また稲妻のような『仁義なき戦い』が轟く。まったくもって気が抜けない。完全に球場を支配していた。

『仁義なき戦い』を選んだ理由を吹奏楽部顧問の川島明人氏にたずねたところ、「もともと演奏会でよく使っていた曲で、野球応援にもいいんじゃないかと思い、10年以上前に取り入れた」とのこと。スタンドで応援する野球部の控え選手も、「うちといえば『仁義』です!」と声を揃える。

球場で演奏するというのはかなり斬新だし、何といっても対戦相手への威圧感が半端ではない。実際に対戦校のアルプススタンドに移動してみると、「え、なにあの曲……」「怖いんだけど……」と、佐久長聖の女子生徒たちがざわめいていた。

試合には惜しくも破れたが、似たような応援曲ばかりがあふれる高校野球応援の世界に、強烈な印象を残した。とはいえ、グラウンドとアルプススタンドの生徒たちには「仁義」ある戦いをお願いしたいですね。

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