「俳句」と「将棋」の意外な共通点。日本の文化に込められた思いとは?【子供たちは将棋から何を学ぶのか】

「俳句」と「将棋」の意外な共通点。日本の文化に込められた思いとは?【子供たちは将棋から何を学ぶのか】

ライター: 安次嶺隆幸  更新: 2017年06月06日

あなたは、日本文化といえばどんなものを思い浮かべますか?着物、武道、相撲、俳句・・・様々なものが思い当たることでしょう。もちろん、将棋も日本の伝統文化のひとつです。将棋に触れ、将棋を楽しむことで、先人たちが作り上げてきた文化を紐解き、その奥にある日本の心を学ぶことにもつながるのです。

日本の伝統文化が教えてくれるもの

日本の伝統文化を学ぶことは、現代の教育にとって、とても大切に思われます。先人たちが試行錯誤しながら、少しずつ改良を加え、不要なものはそぎ落としていき、完成の形へとつなげていったのでしょう。そんな、先人たちの知恵の結晶とも言うべき、現代にも受け継がれている伝統文化を追体験することで、より深く日本の心を学ぶことができ、より多くの示唆を見出すことができるでしょう。

しかし、お茶の世界、相撲の世界、武道の世界など、伝統文化は様々ありますが、どれも敷居が高いことは事実です。その心を学ぶ大切さはわかっていても、なかなかすぐには始められないものです。

その点、将棋は比較的手軽に体験できます。盤と駒さえあれば、小さな子どもから大人、老人まで男女問わず誰でもすぐに始められることも、伝統文化を楽しむうえでの将棋の利点と言えるでしょう。

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コンパクトに小さく、最小限が日本の文化の特質

日本の将棋は、長い歴史と伝統がそのルールの中に込められて今に至っています。 将棋のルーツは、古代インドのチャトランガというボードゲームと言われています。紀元前にはあったチャトランガが長い歴史の中で、西洋に渡ったのがチェスで、一方アジア、中国、そして日本というように伝承されてそれぞれの国、地域の考え、文化が反映されたのが今の将棋になったと言われています。

多くの国にも将棋と似たゲームはありますが、多くのものは駒の力を強くしていって、ゲームそのものを面白くさせていったと言われています。例えば、チェスは盤面こそ8×8で将棋盤の9×9よりも狭いですが、一つ一つの駒の勢力はとても強く、激しい戦いになると言います。

将棋も現代の形になる前までに様々な試行錯誤が行われていて、その痕跡が残っています。中将棋、大将棋、大々将棋、魔訶大々将棋など、盤も大きく、駒の種類が多いものが楽しまれていた時期もあったようです。

しかし文化として根強く浸透したのは、多くの駒の力をそぎ落とし、できるだけ簡素にしていって現在の形になった「将棋」だけです。俳句や短歌と同じように、簡素な中にその思いを込めてきた歴史が将棋のルールそのものにあるということだと思います。

能面などが、顔の表情を見えなくさせたことで、その人の動作、しぐさ等でその表情をより想像できること、また、文章の行間に意味を込めるといった発想、その心が将棋をすることでも感じられるといいます。

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(第57期王位戦 第6局より )

相手を敬う「礼」の文化もあわせて、次世代へ受け継いでいく

将棋には相手が必要です。相手と将棋を指すことを通じて、相手を敬う気持ち、「礼に始まり、礼に終わる」という日本の文化・精神を自然に学び、実体験できるのです。 対局の前の「お願いします」の礼、自分で自分に負けを宣言する「負けました」の礼、対局が終わった後に相手に言う「ありがとうございました」の礼。

これらの礼を大切にしながら、長い歴史の中で先人たちから受け継がれてきた文化としての将棋を楽しみ、日本の心を深く学ぶことを通じて、伝統文化がさらに次世代へと継承されていくのだと思います。

子供たちは将棋から何を学ぶのか

安次嶺隆幸

ライター安次嶺隆幸

東京福祉大学教育学部教育学科専任講師(元私立暁星小学校教諭)。公益社団法人日本将棋連盟学校教育アドバイザー。 2015年からJT将棋日本シリーズでの特別講演を全国で行う。中学1年生のとき、第1回中学生名人戦出場。その後、剣持松二九段の門下生として弟子入り。高校、大学と奨励会を3度受験。アマ五段位。 主な著書に「子どもが激変する 将棋メソッド」(明治図書)「将棋をやってる子供はなぜ「伸びしろ」が大きいのか? 」(講談社)「将棋に学ぶ」(東洋館出版)など。

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