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漫画『モトカレマニア』作者・瀧波ユカリさんインタビュー | 1億総“傷つきたくない”時代に生まれた私たちは、“どうにも好き”という本能にどう立ち向かえばいいのか?

更新日:2020.10.12

VOCEマンガサークルでお試し読み配信中の『モトカレマニア』。安全な過去の恋の思い出にしがみつく主人公・ユリカが、現実の恋に翻弄され、支離滅裂な思考と言動をくり広げていきます。ユリカのように、現代では傷つくことを恐れて「恋愛離れ」に走る現代男女も多い。それでも人は、誰かを好きになってしまう本能からは逃れられないもの。傷つきたくない私たちはその本能とどう向き合うべきなのか、作者の瀧波さんと共に考察しました。

モトカレマニア

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居心地のいい恋愛のほうが映える!?

現在連載中の漫画『モトカレマニア』(毎週木曜日22:00ドラマも放送中)
主人公のユリカは元カレ・マコチのことを忘れられず、理想化した妄想マコチに悩みを打ち明けたり励ましてもらったりと、それはそれで幸せな日々を過ごしています。そこに本物のマコチが現れ、激しくときめきく。しかし苦しい。結果、一緒にいて気楽な男性・山下さんと新しい恋を始めようとするなど、チグハグな行動を取ってしまいます。

……というストーリー展開が物語るように、この作品のキャッチコピーは『女だって引きずる!』というものですが、その裏には、昨今の恋愛傾向として注目される「居心地のいい恋愛VS.本能的な恋愛」という課題も潜んでいると感じます。「結婚するなら2番目に好きな人」が推奨されたり、気楽な関係を維持するため今はあえて付き合わない「ウィル彼」なんて言葉が生まれたり。私たちは今なぜ、こんなにも「居心地のいい恋愛」を求めるのでしょうか? 瀧波ユカリさんの分析を伺ってみました。

瀧波さん「実は恋愛の仕方にも流行りみたいなものはあって、“波乱”と“落ち着き”の波って交互に来ていると思うんですよ。そういう視点で見ると、今は居心地のいい恋愛のほうが支持されているわけですが、その理由はというと、SNSの影響が大きいんじゃないかと思います。なぜなら幸せな恋愛のほうが“バエ”ますよね? 私が結婚する前って、恋愛の話題というと女友達で集まって愚痴ってハシャぐのが楽しかった。でもそういうのってSNSでは伝わりにくい。仲良くディズニーランドに行ったり美味しそうなケーキを食べたり、というほうが分かりやすく見て楽しんでもらえる。そうやって人間関係がつながっている時代なので、落ち着いた恋愛が求められるんだと思います」

実はリスクの大きい「居心地のいい恋愛」

しかし居心地のいい恋愛とは「環境込み」であることを忘れてはいけない、と瀧波さんは指摘しています。環境が整っていて精神的安定が得られているうちはいいけれど、相手が失業したり病気になったりして心の安定が維持できなくなったら続けられなくなる、と……。

瀧波さん「作中でマコチは、金持ち作家・さくらさんが買った6SLDKマンションに同居しており、ユリカのことは好きだけれども、その同居を解消してまでユリカと付き合う決心がつきません。一見、さくらさんのこの方法は居心地のいい関係を成立させるのに有効に見えますが、非常に脆いものでもあります。というのもマコチとさくらさんの関係は、8割は満たされた住環境の上に成り立っているものだから。さくらさんがそれを提供できなくなったときは、あっという間に崩れてしまうでしょう。このとき、ときめきのある相手なら『この苦難を乗り切ってみせる!』となるかもしれませんが、ただ居心地のいい相手だとその底力は出ないかもしれませんね」

 環境だけでなく、「好き」のバランスが崩れる可能性も見逃してはいけない、と忠告してくれました。

瀧波さん「さくらさんは本気でマコチを好きというより、そばにいてくれればそれでいい、と思っています。なのにもしマコチのほうが燃え上がってしまってグイグイくるようになったら、それはもう、さくらさんにとっては居心地のいい相手ではなくなってしまうんですよね。私の知り合いにも、友達夫婦として始まったのにだんだん妻のほうの気持ちが強くなって、自分を見てくれない夫にイライラし始めた、という夫婦はいます。あまり先のことまで考えても仕方ないですけど、今が居心地いいからといって永続的に居心地がいいとは考えないほうがいいでしょう」

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“ときめき”と“居心地のよさ”両方を手に入れたい私たちは、どうすればいいのでしょうか?

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