軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

列強の目は、中東と南シナ海に向いている。

先日、産経の国際面に小さいが奇妙な記事が出た。
「台湾で偽『政府』名乗る詐欺」と言う見出しで、「台湾の主権は日本にあり、暫定統治権を持つ米国の軍政府から授権された」と主張している「台湾民政府」の代表者を地検が身柄拘束したと言う内容である。


蔡英文総統の就任式で、台湾人が明らかに国民党員に対して「Get A Wey」と書いた看板を掲げたからか、総統就任以降、何かと大陸の圧力が強まり、いろんな嫌がらせが続いているが、今回はおそらく下野した「国民党」のいやがらせだろう、と直感した。


日本人はほとんど知らないが、台湾は1945年の日本降伏後、連合国の一員だった国民党(蒋介石)が、連合軍司令部の命を受け、台湾人が驚いたほどの劣悪な、陳儀率いる大陸系中国人部隊が進駐してきて占領したものである。
そして占領後残虐な228事件を起こして多くの台湾人を虐殺した。つまり蒋介石軍は、米軍の代理として台湾を恐怖政治で支配したにすぎないのだ。
当時の蒋介石毛沢東と血みどろの戦闘をしていたのだから、正直台湾のことなど構っていられなかったのだろう。
しかし、その後毛沢東に追われて1949年に台湾に逃げ込んだのだから、国民党軍は 単なる“敗残軍”に過ぎなかったが、戦後処理で多忙なGHQの隙を突いて、乱暴に島に居ついて政府機能を立ち上げ「大陸反攻」の機会を窺った。しかし、中国共産党が建国した中華人民共和国との対立は膠着状態に陥り、やがて“大陸反攻”の機会は失われた。
それが戦後台湾の歴史の実態なのだが、日本人にはなぜか蒋介石びいきが多く台湾=国民党(蒋介石)と思い込んでいる。


台湾と米国との関係は、トルーマン政権は毛沢東軍が追撃してきても台湾紛争に介入しない態度であったが、朝鮮戦争が始まると台湾海峡に第七艦隊を派遣している。
その後米国は1954年10月の中ソ共同宣言を受け、12月に米華相互防衛条約を締結するが、1979年の米中国交樹立で無効化し、米国は在台米軍を撤退させ、その後は「台湾関係法」を制定して現在に至っている。
その台湾関係法の防衛部門には「平和構築関係維持の為に台湾に、あくまで台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う」「アメリカ合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない」と規定されている。

処が習主席は今年3月の全人代閉幕演説で「偉大な祖国の領土を一寸たりとも中国から分割させない」と宣言した。台湾奪取宣言である。


それ以降、私は米中間で神経戦が開始されたとみている。
5月11日に「中国当局が、外国の航空会社に対して台湾を中国の一部と表示するよう要求した問題」に対して、米ホワイトハウスは「米企業と米国民に中国の政治的公正を押し付ける中国共産党に対抗するために立ち上がる」とトランプ大統領の声明文を発表し「中国当局の国内インターネットに対する圧政は世界的に有名だ」などと痛烈に非難した。


しかし、米アパレル小売り大手ギャップ社は「Tシャツに刷られた地図に台湾がない」と言うクレームに、「不正確な中国地図をデザインしたTシャツを販売したことについて謝罪」した。
「問題になったTシャツの中国地図には、中国当局が領有権を主張する台湾や南シナ海の島などが印刷されていなかった」というのだが、これが米企業の一般的認識なのであろう。
GAPは「意志のない間違いについておわびします」との声明を発表し、「中国の主権と領土保全を尊重します」と強調したというが、無知にもほどがある。

≪中国地図に台湾などがないと指摘され、GAPは謝罪した。=大紀元日本から≫

この様に、中国が今年に入ってから、外国企業に対して台湾表示をめぐって圧力を強めてきている理由は何だろう?
恐らく儲けが目当ての外資企業を脅迫し、政府を追い込もうという作戦に違いないが、今のところ、米ホワイトハウスは強く反発している。
この様に、米中両国は互いに一歩も引かな貿易摩擦に加えて、台湾や南シナ海をめぐり対立を深めつつある。特に3月にトランプ米大統領が署名して成立した台湾旅行法は、高官の相互訪問を可能にする画期的な内容だ。


6月12日に予定されている、シンガポールでの米朝首脳会談の雲行きは怪しくなってきたが、情報によると、米国在台湾協会(AIT)の新館が、同日に台北市内にオープンすると言う。
この建物は全館米国から取り寄せた資材を使って、米国企業が完成させたものだと言う。(2015・7・20のブログを参照)
式典の参加者には、ボルトン氏の名も挙がっていると言うから、米国は本気で「シナに媚を売る国民党員」封じ込めを開始したようだ。
いや、封じ込めと言うよりも“排除”に乗り出したのではないか?
その一環として国民党は「台湾民政府」に嫌がらせを始めたのだろうが、エルサレムイスラエル大使館も正式に開所した事でもあり、世の中の流れには抵抗できまい。
これで米国は中近東と大陸、それに南シナ海に睨みを利かせる計画(戦略)が確立すると思われる。
今朝の産経によると、知ってか知らずか、ロシア企業が南シナ海の、シナが主張する領海内で石油掘削を開始した。


≪九段線の首根っこを押さえる位置にあるのが台湾である・シナは無視する事はできまい。産経から≫

わが国も、早急に今後のシーレーン東シナ海をめぐる戦略を確立する必要があるのだが、「平成24年に『日本獣医師連盟』から100万円の献金を受けていたことが判明した民進党玉木雄一郎幹事長代理の身内の利益“代理”発言」などで貴重な時間を浪費している場合じゃない。


最終講演会のご案内
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演 題:空の防人(さきもり)よもやま話〜34年間の戦闘機パイロットとしての体験から
日 時:平成30年5月19日(土)
    12:30開場、13:00開演(16:00終了予定)
場 所:靖国会館 2階 偕行の間
講 師:佐藤 守(軍事評論家、日本兵法研究会顧問、元南西航空混成団司令・空将)
参加費:1,000円(会員は500円、高校生以下無料)
お申込:MAIL info@heiho-ken.sakura.ne.jp
 FAX 03-3389-6278(件名「国防講座」にてご連絡ください。なお事前申込みがなくても当日受付けます)


以後の計画の一部
イシキカイカクリレー講演会の告知
https://abizlabo.com/relaykouenkai2018/

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