シワ加工が断然かっこいい! 脱水機にかけて、シワシワになった服を、そのまま着ている感じ。ダメージなしのきれいなデニム色の布が、しわくちゃになっているのは新鮮。これはオリジナルのウール製デニムだ。
そしてジージャンとムートンの合体。デニムジャケットが背中の途中から、ムートンにとって代わる。まるでラグみたいな形状をした背中のファーが、歩くと揺れる。
前身頃の両脇には同じムートンの大きなポケット! 去年冬、日本の女子たちに大流行した「コートの貼り付けファーポケット」を思い出すが、こちらは本当にたくさん入る実用にも使えそうなディテールだ。
イエローのフーディーにレイヤードしたのは、アメリカ国旗をリメイクしたような、赤と青のまぶしい変形パーカ。いやパーカとポンチョの中間アイテム。ファセッタズム得意の背中のトレーンが、やはり歩くと風になびいて楽しい。
ビッグシルエットのベースボールブルゾン(ウールのシワ加工)や、サテン地のカーキの色のブルゾンには、長〜いフリンジがランダムに取り付けられ、それが適当な位置で結ばれる。ボトムスはキルティングのブランケットを体に巻き付けたような、エプロン。パンツでない姿がとても自然なのは、キルトなど「オトコのスカート好き」なデザイナー、落合宏理ならではである。
ファセッタズム 2018年秋冬コレクション
ベースボールシャツを二枚重ねてアウターに見立てたセットアップ。世界一「丈の短いパンツを履くのが得意」な日本人男子に、凄く似合いそう。
裏にも表にもちらりとのぞくカモフラ柄、常にレイヤーされるランバージャックチェック(ネルシャツチェック)。なじみのあるものが抑えとなって、一見複雑なコーディネイトやディテール、そしてボリュームを、調和に導く。半纏(はんてん)を思わせる中綿ジャケットのブルーや、明るいイエローのコート。きれいなブルーのダウンや、鮮やかなレッドのムートン。
来秋冬はカラフルに行きたい! という気分が盛り上がる。ところで、このコレクションはザ・ウールマーク・カンパニーのサポートを受けている。同社を通じて出会った日本の繊維メーカーに、落合は感謝の意を述べている。日本の匠の技による素材は、世界のラグジュアリーブランドに使われているが、やはり素材が素晴らしいと、コレクション全体のグレードが上がる。デザイナーが本来持っているポテンシャルが、隅々までいきわたる。
この調子でいけば、つぎつぎと指名されるラグジュアリーブランドの新デザイナーに、日本人の若手の名が上がる日も、そう遠くないのでは?