木村九段が悲願の初タイトル。豊島王位VS木村九段、王位戦七番勝負最終局をダイジェストで振り返る

木村九段が悲願の初タイトル。豊島王位VS木村九段、王位戦七番勝負最終局をダイジェストで振り返る

ライター:   更新: 2019年09月27日

いよいよ最終局。豊島将之王位3勝、木村一基九段3勝で迎えた第60期王位戦七番勝負第7局が9月25・26日に東京都千代田区「都市センターホテル」で行われました。

この七番勝負に加え、第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負でも対戦した二人。本局が"夏の十番勝負"の最終決戦となりました。

豊島王位が勝ってタイトル初防衛となるのか、木村九段が勝って初タイトル獲得となるのか、最後まで息のつけない熱戦となった第7局をダイジェストで振り返ります。
(参考:王位戦中継ブログ

対局開始、戦型は角換わりに

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タイトル防衛なるか 豊島王位

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4度目の王位挑戦。初タイトル獲得となるか 木村九段

振り駒の結果、先手は豊島王位に。

戦型は角換わりになりました。両者の今年行われた対局(王位戦七番勝負第5局や竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局)と同じ進行に。両者、まだあまり時間を使うことなく、早いペースで指し進めています。

【図は35手目▲6六歩まで】

前例を離れ、木村九段が長考に

55手目▲8七歩で前例のある指し手を離れました。豊島王位はまだ30分ほどしか時間を使っておらず、依然、研究範囲のようです。

【図は55手目▲8七歩まで】

豊島王位が長考の末、封じ手へ

かなりの早指しで進めてきた豊島王位ですが、70手目△5一飛に、初めて手が止まりました。 豊島王位は2時間以上考え続け、そのまま71手目を封じました。

一日目の消費時間は▲豊島3時間10分、△木村4時間7分でした。

【図は70手目△5一飛まで】

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立会人の塚田泰明九段に封じ手を預ける豊島王位

再開。意外な玉引きへ

豊島王位の封じ手が開封され、対局が再開しました。封じ手は71手目▲7四桂でした。

【図は71手目▲7四桂まで】

△7六歩の王手に対し、豊島王位は1時間の熟考の末に、▲6八玉と引きました(下図)。
控室での検討で候補に挙がっていない手。▲6八玉はどこかで△7七銀と打ち込まれる手が王手になるうえ、玉を上部に逃げ出す味もなくなるので、心理的には選びにくい一手といえます。豊島王位はどのような進行を思い描いているのでしょうか。

【図は73手目▲6八玉まで】

一時は豊島王位のほうが3時間以上多く残している場面もありましたが、この後、消費時間はほぼ同じになりました。

木村九段が踏み込む

16時過ぎ頃の局面。木村九段が1時間近く考えて△6九角と踏み込みました。

【図は84手目△6九角まで】

いよいよ終盤戦へ。木村九段がリード

18時を過ぎ、木村九段が△2七角と打ちました。持ち駒がない先手・豊島王位はこの王手への対応が難しく、形勢は後手が大きくリードとなりました。

【図は100手目△2七角まで】

豊島王位の▲3九玉に続き、木村九段は△4五桂と打ちました。62手目に打った自陣桂が寄せに働いており、「会心ですね」と立会人の塚田九段。

【図は102手目△4五桂まで】

木村九段が悲願の初タイトルを獲得

【投了図は110手目△2二飛まで】

第60期七番勝負第7局は木村九段が勝ち、シリーズ4勝3敗で王位奪取。悲願の初タイトルを獲得しました。同時に、有吉道夫九段の持つ最年長初タイトル獲得の記録を37歳6カ月から46歳3カ月に塗り替えました。

参考記事:木村一基九段、初タイトル獲得最年長記録を更新

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終局直後の様子

終局後インタビュー

◆木村新王位の談話

―― 本局を振り返って、いかがですか?

初日は押さえ込まれそうになって、封じ手のところなどは不本意になったかなと思っていました。

―― 攻め合いになりましたが、中盤以降の展開はいかがでしたか?

難しくてよく分かりませんでしたが、最後△4五桂(102手目)と跳ねたところは感触がよかったので、ペースを握れたかなとは思いました。

―― 勝ちを意識されたときのお気持ちはいかがでしたか?

勝ちを意識した時間が短く、あっという間だったので、気持ちはあまり変わりませんでした。感想戦での検討でも、実際、最後難しかったところもあって、あまり楽観していませんでした。気がついたら終わってたという感じです。

―― 46歳3ヶ月での初タイトル獲得は最年長記録です。年齢を意識されることは何かありましたか?

タイトル獲得はうれしいです。年齢は、取ってしまったものはしょうがないので、精一杯やるだけでした。3年ぶりの二日制だったんですが、やはり疲れましたね。

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インタビューに答える木村新王位

―― どのような気持ちでシリーズを戦われていましたか?

第1局は早く負かされる展開になってしまったので、悪い流れを早く変えなきゃいけないと思っていました。第2局でも逆転負けになってしまって。第3局で勝ったときには、ほっとしました。
第5局では淡白になってしまい、もうちょっと頑張んなきゃいけなかったなと。そういうことがないようにと終盤戦に臨みました。豊島さんは研究していてテンポが速いので、落ち着いて対処できるようにと考えていました。

―― 竜王戦の挑戦者決定三番勝負もあわせると十番勝負ともいえましたが、戦われての印象はいかがでしたか。

豊島さんはとても充実されている方だったので、いい勝負になればというか、ストレート負けをしないようにということをまず考えました。やはり作戦の立て方がとってもうまいと思います。世代や感覚の違いもあり、ついていくのがやっとと言いますか。作戦のところで随分苦しみました。

―― 大盤解説会場に入られたとき、ファンの方々から大きな拍手が沸いていました。その瞬間はいかがでしたか?

うれしかったですね。多くの方に支えていただきました。前夜祭や大盤解説会場でいろいろな方にお声掛けいただいたり、ファンレターもいただき、「頑張れよっ」と言ってくださっているのを感じました。実際、力になったと思います。ありがたく感じています。

―― 誰よりも喜んでらっしゃるのはご家族であると思います。その辺りについて、お言葉をいただけますでしょうか?

・・・家に帰ってから、言います。

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◆豊島前王位の談話

―― 本局を振り返って、いかがですか?

封じ手の辺りで指し手が難しくて、そこでミスが出てしまったような気がします。結局、自信がない感じになってしまったので。▲7四桂(71手目)か▲6八玉(73手目)かがおかしかったですかね。

―― 今シリーズは残念ながら敗れてしまいましたが、シリーズを振り返って、いかがですか?

第2局から第4局は、序盤がさえなかった感じでした。第6局・第7局は出だしはそんなに悪いことにはならなかったんですが、おそらく長考して悪い手をやっていると思うので、実力不足というか、仕方のない結果だと思います。

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防衛ならず。豊島前王位

第60期王位戦七番勝負をダイジェストで振り返る

【第4局】木村九段がタイに戻す
【第5局】豊島王位が王手
【第6局】木村九段が3勝目を上げ、再びタイへ

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