ニセコに2夜限りの“幻のレストラン”が開店したわけ:野外に突如(1/5 ページ)
7月下旬、北海道・ニセコで2日間限りの野外レストランが出現した。「DINING OUT」という名のこのレストランは、これまでにも地方のさまざまな場所でオープンしている。“幻のレストラン”を現地で見てきた。
毎年冬になると数多くのスキーヤーやスノーボーダーたちが訪れる、北海道西部のニセコ地域。「蝦夷富士」の愛称で親しまれる羊蹄山を望めるこの地は、古くからスキーリゾートとして人気だが、近年は良質なパウダースノーを求めて、オーストラリアをはじめ海外からの観光客が増えている。
ニセコ地域は主に虻田郡のニセコ町と倶知安(くっちゃん)町が中心だが、特にホテルやペンション、スキー場が集まるニセコ町の観光客数の伸びは著しい。2016年は167万1000人と、この20年間で35万人以上も増加した。
ただし課題もある。スキーシーズンの冬と比べて、夏場の観光客が少ないのだ。いかにして夏のニセコをアピールするか、自治体を中心に地元の人たちは知恵を絞っている。
そうした中、今夏のニセコに“幻の野外レストラン”がオープンした。期間は7月22〜23日の2日間だけ、しかも席数は計80人のみという特別なレストランである。その名は「DINING OUT NISEKO with LEXUS」。
ニセコに移り住んだ英国人のアーティストが所有する、羊蹄山が目の前に広がる高台の丘に突如現れたこの野外レストランには、着飾った夫婦やカップル、友人同士などが来店。夕暮れ前の17時半すぎ、DINING OUTのホスト役を務めるコラムニストの中村孝則さんの挨拶とともにスタートし、この幻想的な宴は約4時間にもおよんだ。すっかり夜は更け、参加者の頭上には都会の空では決して見ることができない無数の星が静かに輝いていた。
なぜニセコで?
DINING OUTは、地域の価値創造を専門とするONESTORYという企業が手掛けるプロジェクトの1つで、日本のどこかで数日だけ開店する野外レストランである。
世界を代表する一流のシェフやクリエイターがかかわり、その地域の食材や工芸品、伝統芸能などを用いて演出するのが特徴だ。それによって地域の魅力を参加者に伝え、さらには日本の地方の価値や可能性を感じてもらうのがONESTORYの狙いである。その思いに共感したトヨタ自動車の高級車ブランド「LEXUS(レクサス)」がメインスポンサーになっている。
レクサスブランドマネジメント部 Jマーケティング室の沖野和雄室長は「日本のさまざまな地域に眠っている魅力を発掘し、もう一度プロデュースするという姿勢が、レクサスというラグジュアリーブランドが目指しているところと合致しました。DINING OUTの空間は一期一会。たとえ2日間の料理のコースが同じでも、参加者や天候は違う。2度と同じ体験はできません。まさにラグジュアリーの本質と言えるでしょう」と語る。
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