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専門家に聞く――〝アフターコロナ〟(5) Jリート市場 「いまだ成熟せず」 アイビー総研代表取締役 関 大介 氏

 Jリート(不動産投資信託)は、複数の投資家から集めた資金でオフィスやホテル、賃貸マンションなどの不動産を取得し、その賃料収入や売却益を分配する仕組みだ。今回の新型コロナウイルス感染症拡大でどのような影響を受けたのか。Jリート市場分析を手掛けるアイビー総研の関大介代表取締役に話を聞いた。(井川弘子)

 ――新型コロナ第1波からこれまでを振り返ると、どのような値動きをしているのか。

 「市場全体の価格動向を示す東証リート指数は、2月20日に2250ポイントだったものが、3月19日には1145ポイントまで下げた。たった1カ月で半値になるような急落は初めてだろう」

 「その急落の背景としては、近年、異次元の金融緩和や低金利の環境下でイールドハンティングと呼ばれる利回りを求める動きの中で、Jリートが利回りの取れる投資先と見られ資金が集まった。19年には同指数は2000ポイントを超えていた。そうした高値水準の反動として、下落幅も大きかった」

 ――4月に入り、新型コロナは全く収まっていない中で、同指数は持ち直した。その理由は。

 「株価との関係だ。多くの企業が21年3月期業績予想を出せていない状況(見通しできない)にもかかわらず株価は持ち直した。投資家はそれを見て、Jリートがまだ上昇していないのは、投資妙味があると判断した。『株と比べて値ごろ感があるから買っておこう』という考えであり、商品特性で買われているわけではない」

物流と住居が人気

 ――アセットタイプ別では、どのような特徴が見られるか。

 「これまでオフィス銘柄が人気だったが、コロナ以降は序列が変わり、物流施設系と住居系に人気が集まった(利回りは低下)。その理由は、Jリートの住居系の利回りは3%ある。注目されるのは当たり前とも言える。景気がよくない時期に、住宅や物流のような安定銘柄に人気が集まるのはよい動きだ」

 ――資産の取得・売却動向は。

 「売り、買い双方の先行きの見立てが異なり、活発には行われていない。買う側は、先行き不透明のため、低めを提示。売る側は現在これだけの賃料収入があるのだからと現状維持(高め)を提示。目線が合わないため成立しない。マーケットが低迷しているときは契約しにくくなる。売買は一時的にブレーキがかかっている状態だ」

 ――一般的に、コロナ後の社会は将来不安が増すと思われるが、そのことはJリート市場にプラスか、マイナスか。

 「プラスに働く。国債利回りが取れない状態であり、ある程度リターンが取れる投資商品として改めて注目されると思う。もちろん、今回のコロナ危機で大きな痛手を受けた人は、それどころではないだろうが」

 ――長年、Jリート市場を分析してきた立場で、今回のコロナ危機による市場の動きをどう見ているのか。

 「これだけインバウンド需要が低迷しているにもかかわらず、ホテル系銘柄が上昇したのは、本来おかしい。5月は価格上昇率トップ3をホテル系銘柄が占めていた。Jリートは株式と一緒と捉えられている。〝株式第4市場〟と言ってもいいくらいだ。その意味合いが強くなっている」

 「Jリートは市場創設からもうすぐ20年となる。投資家の動向を見ると、あまり業績や商品特性を理解して投資がなされていないことを再認識した。まだ市場として成熟していないと感じた」(連載終わり)