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まだまだ真っ紺コン。各ジーンズ着用20日目の色落ちレポ!【ヴィンテージジーンズ、ひとり色落ち選手権 Vol.11】

ヴィンテージデニムの芸術的魅力に開眼した『GQ JAPAN』ファッション・ディレクターの森口。色落ちの美しい“鬼ヒゲ”や“ハチノス”をつくり出そうと、この企画で7本のヴィンテージジーンズをおろした。今回は、それらヴィンテージジーンズの20日目の色落ちレポートである。
501XX革パッチ

着用20日目の色落ちレポート、参ります!

前回の『ヴィンテージジーンズ、ひとり色落ち選手権 Vol.10』では、着用15日目の色落ちレポートだった。そして今回は20日目の色落ちレポート。しかし、プラス5日間では色落ちにほぼ変化は見られず、まだどのジーンズも真っ紺コンの状態だ。各モデル別に色落ち速度を比較検証するためもあり、筆者は7本を同時におろしている。穿くジーンズが多すぎて、なかなか色落ちが進まない。そこで、何も変わってないぞこのヤローな、単調な記事にならないよう、ところどころユニークなGジャンを交えつつ、着用20日目の色落ち具合を紹介していく。

まずは501XX 革パッチの20日目

ある秋の日。1953〜54年頃に生産された両面タブの「リーバイス501XX 革パッチ」が着用20日目を迎えた。連載GQ Carsの撮影の合間に、オープンカーのモーガン・プラス6の前にて撮影。ちなみに合わせたGジャンは、506XX(通称ファースト)が半袖にカットされた1着。これが非常に玄人受け良し。Photos:UTSUMI

まだ色落ちは始まっていないが、この時代特有のゴワゴワした生地感が雰囲気十分。ちなみに、L(レングス)は29インチで、さらに裾をロールアップ。あれ、筆者って短足!?な点はおいといて、丈短めでスリップオン(or黒の革靴)を合わせる穿き方が令和っぽいかな、と。

この「リーバイス 501XX 革パッチ」は、なんてったって穿き心地が抜群にいい。色落ちの激しさやディテールの面白さ、当時の作りと当時の素材が織りなすオーラなど、ヴィンテージジーンズに惚れる理由はたくさんあるが、一番惚れる理由は、筆者的にはその穿き心地の良さである。クラシックフェラーリの、V8エンジンをふかしたことがあるだろうか? あの気持ち良さに似ている。荒々しくもピュア。時代とともに失われた“あれこれ”が、オリジナルの501XX、とくに革パッチのモデルにはしっかりと残っているのだ。

現代には、この501XXをコピーしようと、300ほどのブランドが復刻にチャレンジしているが、色落ち感は再現できたとしても、ピュアな穿き心地だけはどうにも再現できていない。コットンがまるで違うのだ。脚を入れた瞬間に思わず目を瞑ってしまう感覚は、着用20日経っても変わらない。ピュアスポーツカーのフィーリングと同じ、ピュアッピュアな心地良さだ。そして、この501XX 革パッチは、洗わずにオリジナルの糊を残した状態で色落ちに挑戦中。だから、当時のワーカーが生み出したようなごくごく自然でいい色落ちになると期待している。

次に501XX“1946”の20日目は?

“1946”は、まさにその年号が示す通り、1942〜1945年のS501XX(大戦モデル)の時期と、1947〜1952年の501XX革パッチ 片面タブ(47モデル)の時期の間、たった1年のみ存在したモデル。ジーンズの完成形とされる47モデルのディテールを持ちながら、大戦モデルと同じような分厚い生地、ラウンドした裏リベットが使われている。Photo:Shinsuke Kojima

最強種にして、ベルベルジン藤原さん曰く“あがり”のヴィンテージジーンズである「リーバイス501XX“1946”」。2ウォッシュぐらいの1本を、購入先であったベルベルジンで糊付けしてもらってから20日目の色落ちだ。鬼ヒゲ、鬼ハチノスがメイクする予感しかしない。とはいえこちらは、74年前のジーンズ。奇跡的に残っている革パッチが、穿くたびにボロボロと崩れてきそうな気配もしている。先日、青山通り接骨院に腰が痛くて行って「触られたくないところありますか?」と聞かれたところ、思わず「腰部分の革パッチ部分は押さないでほしい」と懇願してしまった。

では、ビッグEの色落ちは?

1967年に誕生した502は、それまでのジッパーフライモデルであった501ZXXの後継種。この1本は、紙パッチに「F」というスタンプが確認できたので、TYPE物(1967〜1970年)と呼ばれている。Photo:Shungo Tanaka(Maettico)

50年代、40年代ときて、60年代の「リーバイス502E TYPE物」だ。こちらは前オーナーが15日間ほど着用。そこからツーオーナー目として筆者が25日間穿いたので、40日目ぐらいの色落ち具合だ。いい感じにヒゲやハチノスは出そうだが、まだ言うほど色落ちをしていない。

また、このビッグE TYPE物も(501XX 革パッチほどではないが)ピュアな穿き心地が健在。購入金額は10万円程度だったので、何より気軽に穿けるのがいい……のであるが、先ほどの1946とこの502Eの2本は、もともと完全なデッドストックおろしではない。前述どおり、前オーナーにある程度穿かれていたジーンズ。だからか穿いているうちに、どうせなら自分がファーストオーナーとしてデッドストックをおろし、イチから色落ち検証してみたくなってきた。そんな贅沢な気持ちの変化が生まれるのも、ひとりで色落ち選手権をやっているならではの感情か。

続いて70年代の501は?

この1979年製の501は、主に1974〜77年に生産された「501eシングル(66前期)」の特徴である、尻ポケット裏がシングルステッチになった謎の1本。1978〜1981年生産は、主に尻ポケット裏がチェーンステッチで「501eチェーン(66後期)」に分類される。ただいずれも”66”(ロクロク)。Photo: Hiro Kimura

こちらも、デニムラバーの夢(夢何個あんねん)の、同い年ジーンズのデッドストックおろしを実行した1本。1979年生産のシングルステッチの「リーバイス 501e“66”(ロクロク)」だ。色落ちはなく、まだまだ濃紺。また20日目のコーディネイトは、先ほどの502Eと同じく、Leeの60年代ウエスターナージャケットで合わせている。背中の「NEVADA CENTENNIAL 1864 1964」という刺しゅう文字が青色なので、ブルージーンズに合わせやすい!と思い5万円ほどで購入したが、Leeをリーバイスに合わせるということに違和感を感じてきてしまった。だからこのジャケットは委託販売行きかな。ちなみに、日本のほとんどのヴィンテージショップは、売値の80%バックで委託販売ができる。

70年代前半のスモールeの色落ちは?

ブーツカットである517。内側にある白タグの表記で1973年生産とわかっている。Photo: Shinsuke Kojima

左身頃にヒゲ1本だけ色落ちの気配があるものの、まだまだナス紺の「リーバイス517e」。ブーツカットの517シルエットは、太腿部が細いため、W34と自分より2インチ大きい1本をおろした。が、なんだか腰穿き風でシルエットが微妙? エディ・スリマンならこうデザインするだろうと勝手に類推して少し大きめを選んだが、やはりリーバイスは腰にジャストサイズが一番美しいかもしれない。また、合わせたヴィンテージ・リーバイスのGジャンは、フォースタイプのロングヴァージョン「71205」(デッドストック)だ。ちなみに、フォースタイプはまだまだデッドストックが豊富だ。6〜8万円ぐらいで見つかるので、上着のマイ・ファースト・デッドストックおろしとしてオススメです。

オレンジタブのビッグEも似たような濃さ

2018年に原宿フェイクアルファにて18万円で購入した606E(W32 L32)のデッドストック。いまなら相場は30万円ぐらい? あまり上がらないでー。Photo:Shinsuke Kojima

「リーバイス606E」の色落ちも、まだ進んでおらず超絶濃い。だが、ジャストサイズの身体に吸い付くスーパースリムは、ピッチの狭いヒゲが数多くできそうな予感満載。こちらもノンウォッシュのオリジナルの糊のまま穿いているので、その色落ちが非常に楽しみなモデルである。あと、身体のラインがモロに出る606は、一番SEXYなモデルだということに穿いているうち気がついた。

55生地は?

原宿ベルベルジンで気合い買いしたリーバイス551ZXX(W33 L30)。同店店長の藤原裕さんが痩せて筆者と同じサイズになったので、「それいいな、それいいな」と言ってくる。 Photo:Shinsuke Kojima

洗って縮んでフィットする=シュリンクトゥフィットのから、洗っても縮まない=バイユアエグザクトサイズというキャッチコピーがついた「55生地」。他の50生地とちがい、55生地は防縮加工技術がXXデニム記事に施されている。そして、その55生地を使っている「リーバイス551ZXX」もまだまだ全然真っ紺だ。むしろ、他の501や517、606よりも、デッドストック時の姿に近い。つまり55生地は、色が落ちるスピードがゆっくりな気配あり!だ。

まだ道のりは長い

それぞれ、100日ぐらい穿けばその差も見えて来るはずなので、気長に色落ちレポートを続けようと思う。で、最後に、ここまで読んでくれた貴兄にとれたての有益情報! 美しい色落ちのための必勝保存法を本邦初公開!

くしゃくしゃっとほっとかれたその理由は? Photo:Shinsuke Kojima

吊るすがいいなんて誰が言った?

ヒザ部分の伸びを防ぐために、穿かない時は逆さ吊りしておく方がいい、と雑誌で読んだ。ので、最初はそうしていた。だが、とあるヴィンテージマスターの子供が、家で寝る前に脱ぎ捨て、起きてそのまま穿いて学校に行くジーンズが、ものすごい色落ちをしているらしい。そう聞くと、畳まず、シワの形状が変わらない脱ぎっぱなし保存の方が、たしかにいい色落ちをすることが理解できる。というわけで、これら7本のジーンズは、我が家では最近、このように脱ぎ捨てるように並べている。そう、だらしない。そして、なかなかのスペースをとっている。家族からクレームが出るのは時間の問題ではあるが、美しい色落ちのため、背に腹はかえられない。これこそが、筆者がこれまでの経験で培ったベストウェイ保管法である。では、次回は25日目の色落ちリポートでお会いしましょう。