ごちそうを食べ尽くす
4種類の和食をひとつにつなげる、というディナーコースを、東京・赤坂の「ザ・キャピトルホテル 東急」が商品として展開中だ。全体を、懐石の前菜、天ぷら、鉄板焼き、それに寿司で構成。毎回ひと組限定のゲストが、各カウンターを回る、といういわば周遊型なのもユニークだ。
「水彩の余韻」と題されたこのコース、提供するのは同ホテルの日本料理「水簾(すいれん)」。「いろいろな料理をひとつのテーブルで食べてみたい、というお客様の声から着想を得ました」。曽我部俊典総料理長は、2012年10月の日曜日限定で行われるこのコースのきっかけを、そう説明した。
体験しておもしろいと思ったのは、水簾のなかに、上記の料理の各カウンターが、壁を隔てただけで隣接しているプラン(配置)をうまく利用していること。ゲストひと組ずつ、まず特別個室で前菜を味わったあと、天ぷら、鉄板焼き、寿司、とそれぞれのカウンターを回る。
当初は、ゲストがテーブルに座っていて、料理を次々に運ぶことを想定していたという。しかし考えてみると、どれも「ア・ラ・ミニュット」(その都度、その場)で作られる料理なので、いっそゲストが周回していくほうが、店内の雰囲気の違いを含め楽しみが増すのではと考えた、と、曽我部総料理長。
料理の内容は、ひとことでいって、ぜいたく。前菜は自家製からすみ、蟹身とキャビア、それに鯛燻製サラダで構成されている。天ぷらは、活け車海老、銀杏、松茸、アボカド生ハム巻、そしてウニ大葉巻き。鉄板焼きでは、国産黒アワビと、神戸牛。寿司は、本マグロ、アマダイ昆布じめ、ノドグロ、アナゴ、毛ガニと続く。
「私どものホテルが持てる武器(料理人と食材)を最大限活かしたプランです」とは、末吉孝弘総支配人の言葉だ。たとえば、鉄板焼きを例にとると、常時3人の手練の焼き手が揃っているのが自慢なのだそう。
「ホテル業界を見渡したとき、三者三様のスタイルで高い腕前の料理人が揃うというのは、よそではなかなかない特長だと自負しています。いまのご時勢、利益をすこしでも追求しようとするあまり、人材や食材をカットするのは間違いだと思っています。作り手の層の厚さあってこその料理を味わっていただけるのが、私どもの最大の魅力であることを、このディナーコースを機に、お客様にわかっていただけたら嬉しいです」
曽我部総料理長は、言葉づかいは控えめながら、強い自負心を感じさせる調子で、そう語った。
「水彩の余韻」ディナーコースは10月3日(日)にスタートし、10日、17日、24日、31日と、毎日曜日に開催される。各日、3回に分かれており、第1部は午後5時スタート、第2部は午後6時から、そして第3部は午後7時からの開始の予定だ。各部ひと組最大4人までで、料金はひとりにつき8万2225円(税とサービス料込み)。
文・小川フミオ