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トヨタ・クラウンの未来を占う! SUV化はあり得ない!?

トヨタ・クラウンの次期型にかんするさまざまな情報が、巷で流れている。SUV化やFWD(前輪駆動)化といった真偽不明の“噂”があるなかで、大谷達也が考えたクラウンのあるべき姿とは?
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クラウンのSUV化はデマ

次期型トヨタ・クラウンがセダンでなくなるという報道はデマだった。いや、デマという表現に語弊があるなら、少なくとも公式な見解ではないというべきだろう。これは私がトヨタ自動車に確認したことなので、ここで自信を持って申しあげることができる。

トヨタは、伝統あるモデル名を大切にする自動車メーカーだ。その代表がクラウンであり、「カローラ」である。さらには「センチュリー」、「ランドクルーザー」、「ハイエース」、「ハイラックス」といったモデルにも長い歴史がある。そこまで古くなくとも「86」や「スープラ」といったスポーツモデルを最近になって復活させている。もちろん、新しいモデル名もたくさんあるが、数ある日本車メーカーを見渡しても、トヨタほど伝統あるモデル名を大切にする自動車メーカーはほかにないといってもいいくらいだ。

現行クラウンは初代からかぞえて15代目。2018年に登場した。

インパネ上部に大型のインフォテインメント用ディスプレイを設置。

なぜ、トヨタは古くからのモデル名を大切にするのか?

そこに先人たちの努力と誇りが込められているから守り続ける、というのが第1の理由だろうが、もうひとつ大切なのは、伝統あるモデル名が堅調な販売に寄与することを彼らが深く理解しているのと関係がある。

初代クラウンは1955年に登場。

なにしろ、自分が買おうと思っているモデルが“現行型で生産終了”と知れば、誰だって購入をためらったとしても不思議ではない。そんな、“間もなく消えゆくモデル”を自動車メーカーやディーラーが大切に扱ってくれるとは思えないし、中古車として手放すときのリセールバリューにも不安が生じるからだ。この辺の事情を営業現場からのフィードバックで深く承知しているから、クラウンやカローラをトヨタは長く作り続けていると思う。

つまり短期的な売り上げに一喜一憂することなく、長い目で見て安定的なセールスに貢献するよう「モデルを育てていく」のがトヨタ流なのだ。

2代目は1962年に登場。1965年には2.0リッター直列6気筒搭載モデルも追加された。

3代目は1967年に登場。ペリメーターフレームをクラウンとして初採用した。

4代目は1971年に登場。愛称は「クジラ」だった。

前輪駆動化の可能性……

こうした原則から考えれば、クラウンが次期型でいきなりSUVになるというのは考えにくい。もちろん、クラウンのポジションがかつての“動く応接室”から“走りを意識したジャパニーズ・セダン”へ移行しているのは事実であるが、そうした変化は気づかれない程度の小さなステップで行なわないと、継続してひとつのモデルを生産する意味がない。だから、次期型クラウンがSUV的な要素をいくぶん採り入れることはあっても、1代で完全に様変わりするとは考えにくい。

2012年登場の14代目クラウンには、ピンクの特別ボディカラーも限定生産された。

クラウンの上級仕様「マジェスタ」は、14代目をもって生産終了した。

クラウンのラゲッジルームは、長年、ゴルフバックを4セット積めるのが特徴だった。

後輪駆動から前輪駆動への転換も、次期型クラウンで噂されていることのひとつだ。私自身は、こちらのほうがはるかに信憑性はあると考える。

トヨタに限らず、世界中の自動車メーカーがプラットフォームやエンジンの数を減らそうとしているのは事実だ。なにしろ、各メーカーはいままでなかったEV(電気自動車)などの電動化モデルを新たに手がける必要に迫られているのだ。

現在のクラウンはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドがメイン。

そうでなくとも先進安全運転支援システムやコネクティビティ、最新の排ガス規制に対処するなどのために、巨額の投資をしなければいけない。したがって、多少なりともハードウェアの数を整理しない限り、新車価格は今後、天井知らずで高騰していくだろう。

幸い、現代の自動車は電子制御技術が大きく進化しており、従来のようにメカニズムで最適化を図らなくとも、1台の自動車としてまとめやすくなっているのは事実。したがってプラットフォームやエンジンの数が減ること自体は自然な流れといえる。そして、その過程でクラウンが後輪駆動から前輪駆動に生まれ変わる可能性は十分に考えられる。

1979年登場の6代目にはクラウン初のターボモデルを設定。

1983年登場の7代目には、国産乗用車初のスーパーチャージャー搭載モデルが設定された。

1987年登場の8代目は、3ナンバー専用のワイドボディを設定。販売時は好景気(バブル期)だったこともあり、月間販売台数でカローラをうわまったときもあった。

将来クラウンがなくなるとしたら?

ただし、トヨタ社内に後輪駆動用プラットフォームがある限り、クラウンも後輪駆動を継承するだろう。もっとも、以前GQ Webでレポートしたとおり、レクサスの後輪駆動セダンであった「GS」が生産終了し、前輪駆動セダンの「ES」がその代わりを務めることになった流れを考えれば、後輪駆動クラウンの運命もそう長くはないと捉えるのが自然である。

1991年登場の9代目には、上級仕様の「マジェスタ」を初設定。

1995年登場の10代目はフルモノコックボディを採用した。

1999年登場の11代目には、14年ぶりにターボ仕様が復活した。

というわけで、私自身は今後もクラウンはセダンとして生き続けるのでは? と、考える。だからといって今の姿をまったく変えないわけではなく、時代に応じて少しずつ変化していくはず。

そして、もしも将来にクラウンがなくなるとしたら、それは内燃機関の火が完全に消え去るときだろう。

そのときは、現在の「ミライ」がクラウンにとって変わるというのがもっとも現実的なような気がする。