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ポール・スミスがMINIとコラボレーション!

英国のファッションアイコンであるポール・スミスが、MINIとのコラボレーションを発表した。
ポール・スミスがミニとコラボレーション!

グリルもパースペクス製のホイールカバーも、ブラックのパーツを多用。

ルーフには透明のパースペクスがはめこまれている。

サステイナブルなMINI

たいへんキャラクターがたったMINIが発表された。名づけて「MINI STRIP(ミニ・ストリップ)」。塗装なし、装飾は出来るだけ排除。ミニマリズムでデザインされた特別モデルだ。手がけたのは、ファッションデザイナーのポール・スミスと、MINIのデザインチームだ。

クルマから過剰と思われる装飾を削ぎ落とし、自分なりの仕様に仕立てる楽しみをストリップダウンといったりする。2021年8月12日にロンドンで世界初披露されたMINI STRIPは、自動車デザインにおけるサステナビリティとはなにか、を追究した結果なのだそうだ。

ベースになったMINI Cooper SEから塗装を剥ぎ落とし、防錆のために最小の透明コーティングを施しただけの車体。ホイールはキラキラとした軽合金でなく、リサイクル素材のパースペクス(合成樹脂の一種)のカバーをかけたもの。パースペクスはルーフにも使われている。

インテリアも可能なかぎりシンプルに仕上げてある。ドアパネルの内側はメッシュ張りで、内部構造が透けてみえる仕上げというのがユニーク。ドアを閉める際に使うプルハンドルは、クライミング用のロープを使用している。

オリジナルデザインを尊重しつつ再生コルクやオリジナルカラースキームを採用。

ドアの内張にはコルクのクラッシュパッドが貼られ、その下はメッシュ素材で内部構造が見える。

完全な不完全

眼をひくのは、リサイクルが容易な再生コルクをダッシュボードとドアのパッド材、リヤ・シェルフに使用していること。ステアリングホイールも、金属部分はあえて素材感を強調。リムにはなんと自転車のハンドルバー用と同じテープが巻かれている。

自転車好きでもあるポール・スミスの提案として、素材を自分の手でバラしたら再利用が可能になる、というイメージを盛り込んだそうだ。そのため、オーバーフェンダーはあえてビスをむき出しに見せている。

ポール・スミスは、このMINI STRIPを「完璧な不完全」と謳う。50年代のベントレーやブリストルなど、クラシックカーを好んできた氏として、なるほどと思わせる表現だ。

あまりに完璧に出来た現代のプロダクトは、オーナーが手を入れられる余地がなく、自分の手で修理もままならない。クラシックカーや自転車のように、部品を付けたり外したりすることで生きながらえ、ずっと所有しつづけすることが出来れば、よりサステイナブルになる、というのが今回の主張。

「シンプルで、透明性があって、サステイナブルである。これからの自動車デザインにとって重要なテーマを、ポール・スミス氏の協力で、実現できたと思います」。ヘッド・オブ・ミニデザインを務めるオリバー・ハイルマー氏はコラボレーションの結果について胸を張る。

ポール・スミスと英国自動車ブランドの結びつきは強い。かつてローバー・ミニ(初代Mini)の時代、1998年に、ポール・スミスはマルチストライプを施したモデルを発表して話題を呼んだ。

リサイクル素材もインテリアに多用されている。

MINIのハイルマー氏(左)とデザインを検討するポール・スミス(中央)。

そののち、ダッシュボードなどを外装色と同色で塗った、市販版のローバー・ミニのポール・スミス仕様が市販され、日本市場にも導入された。グリルにつけられた英国の地図のバッジが”キュート”と女性にもウケていた記憶がある。2015年にはランドローバーの旧型ディフェンダー90を、なんとも楽しいマルチカラーに塗り分けたこともあった。

今回のMINI STRIPのプロジェクトは、ユニークなカラーリングの域をこえて一歩先へと踏み出した。「スペースをクリエイティブに使う、というMINIのコンセプトにぴったり合ったものに仕上がっている」と謳う。残念ながら、コンセプトモデルなので、販売予定はなし。しかし、発売になる日がくることを期待して待とう。

https://www.paulsmith.co.jp/stories/aw21/mini

ギャラリー:ポール・スミスがミニとコラボレーション!
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文・小川フミオ