New Art Installation in GINZA SIX Titled “Six Boats”

GINZA SIXの中央吹き抜けに“靄がかる”6隻の船──塩田千春の新作アートが出現

東京・銀座「GINZA SIX」の中央吹き抜けの新作アートが衣替えした。現代美術家の塩田千春による“6隻の船”が宙に浮かんでいる。 文・沖浦裕明(GQ)
GINZA SIXの中央吹き抜けに“靄がかる”6隻の船──塩田千春の新作アートが出現
6隻の船

2月27日、東京・GINZA SIX館内中央・吹き抜けが様変わりした。ベルリンを拠点に活動する現代美術家・塩田千春の新作「6つの船」が展示されたのだ。

百貨店の吹き抜けにアートを展示する取り組みは、パリの百貨店ボン・マルシェの例に倣うものでもある。モノを売るだけでなく、アート経験の提供もサーヴィスに組み込み、「体験価値」を創造しようとしている。

GINZA SIXのアート展示は開館時、2017年の草間彌生の「南瓜」(2017)からはじまり、その後はダニエル・ビュレン、ニコラ・ビュフの作品が続き、塩田の作品で4作品めになる。

塩田のアートは“糸”を空間に張り巡らせる。2017年にはボン・マルシェで「どこへ向かって」(Where are we going?)をインスタレーションした。そのときは、ボン・マルシェ本館にある2つの吹き抜けに白い毛糸で編んだ150隻の船を展示した。

そして今回、GINZA SIXの展示に塩田が選んだモチーフも船だった。ボン・マルシェと異なるのは船の素材で、黒いフェルト板を使った。23〜25の板を船の形に並べ、おそよ全長5メートルの「船」にした。「船」の数は計6隻で、いずれも天井から吊るされている。塩田は「船は前進するもの。過去に幾度となく襲いかかった震災や空襲のたびに復興し、たくさんの困難を乗り越えてきた銀座の象徴です」と説明する。

約5000本の特殊な毛糸が天井から垂らされ、船の周りを取り囲む。糸と船を合わせてアートは全長14m、高さ8.5mにおよぶ巨大作品になった。白い糸は靄のような視覚効果を生み出している。そのため、下から見上ると、6隻の「船」が花びらのように見える。

「資生堂の椿会に出席するために毎年ベルリンから訪れるたびに、銀座の華やかさに魅了されてきました。GINZA SIXができて華やぎが増したので、そのムードに合うように船を花の形にレイアウトしました。過去には船のモチーフを赤や黒の糸で覆った作品を発表してきましたが、GINZA SIXの雰囲気とは違います。シャンペンゴールドのエレガントな内装からイメージして、白い糸で行こうと決めました」

船のモチーフ使いは、塩田の幼少時代の経験がもとだ。大阪から高松の親戚の家に夜行フェリーに乗って訪ねていった思い出によるという。

「夜、船に乗って眠り、朝になって起きるとまったく違う場所で目を覚ますんです。毎回乗るたびにワクワクしていました」。

夜行フェリーで感じていた高揚感をGINZA SIXでのショッピングにも重ねている。

「ショッピングはどこか欲望を埋める行為です。誰もが気軽に出かけることのできる商業施設での展示だからこそ、アートとの気軽な出会いがなにかを埋めることになったら嬉しい」

塩田の作品は10月31日まで展示される。また、6月20日〜10月27日の期間に六本木・森美術館で、塩田の20年のキャリアを総括する個展「塩田千春展:魂がふるえる」が開催される。

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塩田千春『6つの船』
場所:東京・GINZA SIX 中央吹き抜け(東京都中央区銀座6-10-1)
期間:2019年2月27日(水)〜2019年10月31日(木)予定
サイズ:全長14m×高さ8.5m(船は1隻あたり全長5m)

塩田千春
PROFILE
1972年大阪生まれ、ベルリン在中。2015年の第56回ベネチア・ビエンナーレで発表した赤い糸と18万個の鍵、2隻の船をつかった作品『掌の鍵』で注目を集める。グッチの2016年のアートプロジェクト「GUCCI 4 ROOMS」でも赤い糸を使った作品「GUCCI HERBARIUM ROOM」を発表した。これまで世界約35か国で250展以上の展示に参加。