声優という生き方 (イースト新書Q)

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781680583

作品紹介・あらすじ

キャリア60年超のレジェンドによる
夢をもって立ち向かうための役者論

新劇の俳優が外画の吹き替えを担当することからはじまったとされる声優ブーム。それから約半世紀、若者の人気「職業」にまでなった声優。業界のかたちが整い、より大きくなったものの、華やかさの影には厳しい現実も待ち受けています。「うまくやろうとするな」「売れるのが唯一の価値観か」など、成功法則のない業界だからこそ必要なスキルと心構えを、「ばいきんまん」「フリーザ」でおなじみのレジェンドが語り尽くします!

感想・レビュー・書評

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  • 「ばいきんまん」「フリーザ」の声でおなじみの中尾隆聖さんによる、経歴と声優についての本。
    これ一冊で声優の歴史や、カバーする範囲についてある程度分かるので、声優志望の人は読んで勉強するのもいいかもしれないと思った(ただ、個人的には声優志望の人には、大塚明夫さんの『声優魂』のほうがお勧めしたい)。
    テレビが出始めたころは、「テレビなんて」と小ばかにしている人もいて、舞台俳優なんかはテレビに出たがらない人も多かったらしい。今も、「YouTubeなんて」と思ってる人いそうだし、いつの時代も新しいメディアは小ばかにしたりする人はいるんだろうなと思う。
    声優の仕事はオーディションが基本と書かれてあったけど、中尾隆聖さんレベルでもそうなのだろうか。Wikipediaみると、今でもちょくちょく新しいアニメのそれなりに重要な役をしてることあるようだけど、これもオーディションなのか?
    そういえば、Wikipediaを調べて気づいたけど中尾隆聖さんはWikipediaでは「フクちゃんのフクちゃん役でデビュー」と書かれてあったけど、この本には「フクちゃんのキヨちゃん役でデビュー」と書かれてあった。やっぱり、Wikipediaってちょくちょく間違った情報あるんだし、あまり鵜呑みにするのはよくなさそう。
    声優に仕事を依頼するのは、アニメ制作会社ではなくて音響制作会社というのは、そうだったのかと思った。前に、『SHIROBAKO』というアニメ制作のアニメの中で声優を選ぶ場面があったけど、アニメ制作会社じゃなかったっかなぁ。
    なお、新人は基本的に、収録スタジオに座る椅子は下座(入り口から近い方)と一般的に言われてるそうだけど、中尾さんは好きで下座に座るものだから、新人が困惑するらしい。こういうマナーは難しいよね。
    そういえば、ばいきんまんの「ハイフヘホ~ッ!」はアドリブではないらしい。どこかでアドリブと聞いたようなきがするけど、いったい何を思って脚本は「ハイフヘホ~ッ!」なんて書いたんだ。
    この本で面白かったのは、吹替についての話。日本人がアフレコする前提で作られた日本のアニメと違って、海外の作品ではもともと現地の言葉で話している映像なので、どうしても日本語と口があわないということもあるのだとか。ただ、それでも欧米の作品のように、明らかに日本語を話すような人でない人なら、逆に違和感がないのだけど、韓国ドラマのように、日本人っぽい顔つきだけど元が日本語じゃないところに日本語を乗せるから違和感があることがあるらしい。そういうもんなのか。
    後、洋画でも、何十年前にテレビ放送された時はシーンをカットして放送したため、カットされたシーンしか収録してなかったけど、新しく完全版を放送しようとしたときに、カットしたシーンの吹替がないから、カットされたところだけ何十年ぶりかぶりに収録することもあるのだとか。声もちょっと変わってるから、昔の声で演じることが大変なうえに、亡くなってる人もいるからカットしたところだけ他の人が吹替なくてはいけないということもあるのだとか。どういう作品かよく分からないけど、確かにそういうシーンは違和感ありそう。

  • 「ばいきんまん」やドラゴンボールの「フリーザ」
    の声で知られる著者の仕事論です。

    「声優」という職業さえも確立されていなかった
    時代から、どのように自分の中で折り合いをつけ
    て仕事に向き合ったのか。

    今でも名作として語り継がれる作品に対して、
    それぞれの役にどのように向き合ってきたのか。

    プロフェッショナル魂を学べる一冊です。

  • ライターがいい仕事をする人だなと思った。声優という仕事の要点がきちんと伝わるようにまとめられている。それだけでなく母親が結婚離婚を繰り返した奔放な人で祖父母に可愛がられて育った、若いころパトロンの出資で二丁目で店を経営していたが円満に卒業して役者仲間が集まるようになったら潰れた、なんてエピソードは声優と関係なくても中尾氏の人となりが伝わる重要なエピソードだ。
    「演技」「普通」の捉え方、息を最初に考えるということは朗読・音訳活動者にも役立つ。

    P15 洋画吹き替えやゲームなどでは「抜く」ということはあります。いわゆるそのキャストだけ別取りすることです。声をあてるのが声優ではない場合、どうしてもスケジュールが合わなければ別録りということになります。【中略】「マイクワーク」というのが、声優以外では難しく、かえって一緒にできない理由でもあります。

    P21 私、いつも言っているんです。「オーディションは落ちて当たり前」 とても頑張っている、私もいいなと思う人たちに対してです。それでもオーディションは落ちるんですから。なぜって、実力がある人が上から順番に格付けされていてそのとおりにキャスティングされるのならオーディションの必要なんてないんです。一つの作品は様々な要素が組み合わさって一つの世界観を作ります。そこに必要な人が必要なだけ参加するんです。だからいちいち落ち込むことはないし、必要以上に自信を失うこともありません。【中略】「自分の何が悪かったんですかね」「何も悪くないよ」「じゃあなんでダメだったんですかね」「たまたまだよ」そういうことだと思っています。

    P114 演技においての「普通」とは、実生活の「日常」を指しません。勉強中の若い子はそこで勘違いしてしまうことが結構あって、本当に普段通りにしゃべってしまう人が多くいます。普通にしゃべっているように聞かせるためには技術を身に着けなくてはいけないということがなかなか伝わりづらい。
    違和感のない、作品やキャラクターに合わせた声の出し方、口調は毎回探さなくてはいけません。私は「匂いを探す」という言い方をすることもありますが、演技におけるナチュラルは全部異なります。

    P116 表現に関わる人はわりと「自分は特別」という自意識があって、言ってしまえば性格が曲がっている人たち、はみ出し者…言い過ぎですかね、ともかくそういう人が昔は多かった。今の人たちは一定の型にはまろうとしている節があります。

    P136 実際の俳優の粋を盗む、そのうえでそれを再現できれば、英語から日本語に置き換えてもきちんとしたセリフになります。いつもレッスンでは息を合わせることをやっています。合わせることができれば逆に外すこともできる。

    P138 陥りがちなのは「言葉ありき」「セリフありき」でやってしまうこと。言葉やセリフを細かく見ていくと、息を吸って、吐いて、声帯をふるわせて、音になり、それがつながってはじめて言葉になる。でもそれをはしょって言葉のことばかりかんがえていると、呼吸がおろそかになってしまいます。【中略】最近のアニメの作画には極めて質が高く「絵の演技」が相当にレベルが高く、受け取る情報が多いものもありますが、それはごく一部で、やはり現実の身体とは異なります。それこそ「命のないものに息を吹き込む」ということだと思います。作品の世界観を理解すること、キャラクターの人物像を理解すること、そして、演出をきっちり見ること。そのうえで「息」を作る。

  •  声優を志す人にとって読んで損がない書籍に一冊。キャリアップに何が必要かつかめると思います。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729591

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729591

  • 熱い、雨後の筍類書に比べタイトル通り生き方の本

  • とある番組で紹介されていたので。

  • 中尾さんのトークショーを聞きに行ったので
    読んでみようと思いました。
    声優界のレジェンドでありながら
    謙虚で気さくな人柄が伝わる本でした。
    またバイキンマンやフリーザなど誰もが知ってるキャラクターをやるまでの裏話などとても興味深く面白かったです。
    ご苦労もあったことと思いますが
    本当に演じることが大好きで
    楽しんでおられるんだなと思いました。
    私は声優を目指しているわけではないけれど
    生きていくうえでその生き方や取り組み方には
    学ぶべき所が多々あります。私も人生を楽しみたい!
    個性的で魅力ある中尾さんにはこれからもずっと活躍していただきたいです!

  • 自身の生い立ちをあっさりとした文章でサラッと書いてますがなかなか波乱万丈です

    5歳で「フクちゃん」にて声優としてデビュー
    母親が5〜7回結婚
    中三で一人暮らし
    18歳で新宿二丁目に店を持つ
    弾き語りで稼ぎながらも演技を続け結婚

    ドラマ化して欲しいくらいの内容です

    声優は役者の下、講師は役者をリタイヤした現役では無い人がやる物という思いを抱いていた若い頃の事も描かれています

    バイキンマンの印象が強いので変わり種の声を出される方位のイメージだったのですが物凄く真摯に演技に取り組んでいるのが伝わって来ました

    「何も悪くないよ、たまたまだよ」
    「性格悪いから役者やってるんだよ」
    オーディションに落ちたり性格に難有りの若手への言葉がとても良いです

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著者プロフィール

中尾隆聖(なかお・りゅうせい)
東京都生まれ。3歳で児童劇団に入団。5歳で文化放送のラジオドラマ『フクちゃん』のキヨちゃん役でデビュー。声の出演に『それいけ!アンパンマン』(ばいきんまん役)、『ドラゴンボールZ』(フリーザ役)、NHK『おかあさんといっしょ』の人形劇「にこにこ、ぷん」(ぽろり・カジリアッチⅢ世役)などがある。第25回日本映画批評家大賞“アニメ部門最優秀声優賞”、第11回声優アワード“富山敬賞”を受賞。1992年より関俊彦とともに劇団「ドラマティック・カンパニー」を主宰する。

「2019年 『声優という生き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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